48話 初めの一歩
再びヒスイ街に向けて出発した私たち。クロードさんに「魔力の放出に専念しろ。戦いは俺とヴァイスがやる」と言われたので私はマナットを両手に抱え込んで魔力の放出に専念する。
クロードさんにコツみたいなのは教えてもらったけど中々上手くいかない…。でも、な。
「雷の第六呪文:ライトニング」
「ワオォーン!!」
ゴロロロ……ボボボボ………
わぁ地獄絵図だなぁ…。クロードさんが雷を降らせて、ヴァイスが炎を吐いて魔獣たちを撃退してる。これじゃあ集中できるものもできないよ…。
出発して5分も経たずに魔獣たちに襲われてそれをクロードさんたちが撃退、って流れを何回も繰り返してる。この襲撃も何回目なのか…。
「これじゃできるものも出来ないよ…」
「どうしたんだお前」
「ワフ?」
「どうしたもこうしたもないですよ!まさかここまで魔獣たちがくるとは思わないじゃないですか!なんか今日魔獣多くないですか!?」
「確かに昨日はここまでじゃなかったな…」
昨日は4、5匹ぐらい襲ってきた魔獣たちだけど今日だけでもう10匹以上は襲ってきてる。なんで今日はこんなに多いんだよ〜。
「……まさか俺たちの魔力に引き寄せられてるのか?」
「え!?」
「昨日と違うのはヴァイスがいることだ。ヴァイスの魔力は魔物中でも多い方だ。それにお前が魔力を自覚したことで魔力が無意識に漏れ出てるのかもしれない」
「でも、私が持ってるマナットは色が、あれ?変わってる??」
手に持ったマナットを見るとクロードさんが見せてくれたような色に変わってる。クロードさんの言う通り無意識に魔力を放出してたんだ。
「多すぎる魔力は良くないものを引き寄せる。俺は多少は抑えられるが、ヴァイスお前はどうだ」
「クゥーン…」
「無理、か。こればっかりは仕方ない。このまま進むしかないな。俺は魔力に余裕もある」
「ウアン!」
「ヴァイスも大丈夫そうだ」
「すみません、役に立てなくて…」
「連れてきたのは俺だ。謝るな」
「はい、すみませ…分かりました!」
つい癖で謝っちゃう…。
「そうだ、クロードさんだけマナット食べてなかったですよね。これ、あげます」
「…いいのか?」
「はい!私とヴァイスは半分こしたので」
「ワン!」
「じゃあ、貰っとく」
「私が魔力を注いだので美味しくなってるか不安ですけど」
「ん、大丈夫だ。ちゃんと美味い」
「よかったぁ〜」
色が変わっただけだとちょっと不安だったけどちゃんと味も変わっててよかった。それにしてもマナット美味しかったなぁ。街に売ってたりしないかな。
「無意識に魔力の放出ができたんだ。次は意識して魔力を放出できるようにしろ」
「う〜ん…クロードさん何かコツとかありますか?」
「コツか?そうだな…グッ魔力を集めて外に魔力を出す感じだな」
「………クロードさんって感覚派ですか?」
「まあ、そうだな」
う〜んこれじゃあクロードさんにコツを聞いても訳が分からないよぉ…。ヴァイスは…
「ワフ?」
「…ダメだよねぇ」
ハァ…自分でなんとかやるしかない、か。マナットの色が変わったってことは手のひらから魔力が出たってこと。じゃあ手のひらにどうにかして魔力を集めなきゃいけない…。でもそれをどうやって。
「「「グメメメメメェ!!!」」」
「ぎゃあ!また来ましたよ!今度は羊!?しかもあんなに!?」
「グルルルル……」
私が考えごとをしてたら羊の魔獣の群れが私たちの方へ向かってきた!?あの数2人だけで大丈夫!?
「…丁度いいな」
「何がですか!?」
「今から魔力のあの大群にぶつける」
「魔力を?」
「あぁよく見て覚えろ。ヴァイスも少し待ってろ」
「グルルル……」
そう言うとクロードさんは手のひらを羊の魔獣の群れに向かって向ける。
「いいか手のひらに魔力を集める。そしたら一気に、こうだ!」
ドガァァアアアン!!!!
「な、え?はあぁぁあ!!??」
クロードさんの手のひらから球の様な物が出て魔獣の群れにぶつかったと思ったら、大爆発を起こして沢山の魔獣が宙に浮いてる。え、えぇ!?こ、これを私がやれってこと?無理無理!?
「よし、やってみろ」
「む、無理ですよ!あんなの!?」
「あれは少し魔力を多く込めただけだ。少しだけでも魔力を集めるだけでいい」
「でも…」
「見るより慣れろだ。やってみろ」
「でも…」
「ほら魔獣の生き残りがいるぞ」
「あ、ほんとだ」
あの爆発に巻き込まれてもまだ生き残ってる魔獣がまだ一匹いた。でも足取りはフラフラでなんとか生きてるって感じだ。
「なんとか頑張ってみます。えっと、まじは手のひらに魔力を集中させる…」
魔力をどうやって手のひらに集中させるか…。心臓のあたりに魔力の核があるから核から魔力を手のひらに流す。川を流れる水、血管を流れる血液をイメージする。……手のひらが魔力特有の温かさを帯びていく。いい感じだ。
「いいぞ魔力が集まってきてる。そのまま魔力を放出しろ」
「はい!」
溜まった水を一気に流す様に、手のひらに集めた魔力を一気に放出する!!
「キャア!」
ドォン!!
手のひらから出た魔力の勢いで尻餅をつく。成功、したんだ!魔力の球が着弾したところは少し地面が凹んでる。もちろんクロードさんの程の威力はないけど初めて魔力を扱えた実感が心を満たしていく。手のひらがすこしジンジンする。
「よくやったな。まだ未熟なところもあるが一先ずは合格だ」
「やったあ!」
「だが狙いはまだまだだな」
「え?」
よく見ると魔獣はまだ立っていた。どうやら私の魔力は魔獣には当たってなかったみたい。
「ヴァイス、頼めるか」
「ワン!」
クロードさんに頼まれたヴァイスは生き残った羊の魔獣の方へ走って行く。トドメを刺しに行くみたい。
「うぅ…まだまだだなぁ」
「初めてであれだけやれたら上出来だ。お前は才能があるな」
「本当ですか!」
「あぁ。魔力の放出ができてやっと魔術の道の第一歩だ。これなら近い内に魔法も覚えられるな」
「魔法…」
クロードさんやヴァイスの様に炎とかを出せるってことだ。まさか絵本の中だと思ってた魔法が私にも使えるかもなんて。でも魔法を覚えられたら黒さんの役に立てるかも!
「まずは魔力のコントロールだな。それともう少しはやく魔力を扱えるようにしたい。このままだと実戦ではまだまだ使えない」
「ううむ…中々難しそうですね」
「これも慣れと練習だ。ここ魔獣の寝床は魔獣がよく出る。練習には持ってこいだ」
「確かにそうですね。よし!私頑張ります!」
「その調子だ」




