46話 マナット
私とヴァイスでクロードさんが戻ってくるまで果物を取ってたけど思ったよりも沢山集まった。りんごとか食べたことのあるキノコとか普通のものもあったけど、見たことない果物があったから好奇心で2つだけ取って来ちゃった。もしかしたらクロードさんが知ってるかも。
とりあえず両手がいっぱいになっちゃったから一回戻らないとな。朝ご飯どうしようかな。私あんまりお腹空いてないし取って来た果物だけでもいいかな。ってあれクロードさん。もう戻って来たんだ。
「クロードさん。戻って来たんですね」
「ウアン!」
「あぁ。それにしてもどうしたんだその果物たち」
「これですか?クロードが戻ってくるまでヴァイスと一緒に集めてたんです。このあたり果物とかキノコが沢山あるんですよ」
「確かにここらへんは自然が豊かだからな」
「そうなんですよ!あ、朝ご飯どうしますか?」
「俺はそんなに腹は減ってないから適当でいい」
「クロードさんもですか。そしたらりんごとか剥きましょうか。あ、これ……」
「なんだ?」
「クロードさんこの果物知ってますか?毒とかあったら…」
クロードさんに果物を見せる。私がいた森にもなかった果物。紫色だしちょっと禍々しい感じ。もし毒とかあったらダメだし、クロードさん知ってるかな?
「ああ、これは…。毒はないから食べてみたらどうだ?」
「ど、毒はないんですね。いただきます…」
毒はないって言われたけど見た目が見た目だからちょっと躊躇しちゃう。ええい!女は度胸!!
「う………」
「どうだ?」
「なんなんですかコレ!?今まで食べた食べ物の中で1番の不味さなんですけど!」
食べた瞬間からくるとてつもない酸味と苦味。そして後からくる謎の辛さ。こんな物がこの世に存在してたなんて……。
「ほら水だ」
「ありがとう、ございます…。うぅ…まだ口に味が残ってる」
「クゥーン……」
「ありがと、ヴァイス…」
ヴァイスが心配してくれて私の周りをぐるぐる回ってる。私を心配してくれるのはヴァイスだけだよ。
「クロードさん、もしかして知ってて私に食べさせましたね!?」
「まあな。酷い味だろ」
「それはもう!なんでこんなもの食べさせたんですか!?」
「まあ落ち着け。この果実はまだ未成熟なんだ。魔力をこうして一気に与えてやれば…ほら色が変わった」
「わ、本当だ!」
クロードさんが私が一口食べた果実を手に取るとみるみる内に色が変わっていく。紫色がピンク色に染まりきってしまった。
「ほら食べてみろ」
「今度は大丈夫なんですよね…?」
「大丈夫だ、ほら」
クロードさんに勧められて少し躊躇しながら一口齧る。
………これは!口にいれた瞬間に広がる甘さ!ほのかに感じる酸味が甘さを更に引き立ててる。さっきまであんなに酷い味だったのにどうして!?
「クロードさん、これ!」
「うまくなっただろ。この果実は魔力を一気に注ぐことで完熟する。前に話した魔獣の食料問題を解決したのがこれだ」
「ああ!コレがそうなんですか!ヴァイスもほら、食べてみな」
ナイフで果実を半分に切ってヴァイスにあげる。ヴァイスは匂いをクンクンと嗅いでから齧り付いた。途端に尻尾を大きく振って嬉しそうに果実をどんどんと食べていく。
「そういえばこの果実、なんていう名前なんですか?」
「これか?マナットだ。果実自体は昔からあったが、名前がついたのはマナットの特性が明らかになってからだから結構歴史は浅いな」
「マナットがあったおかげでアイリスさんは魔獣を統率できたんですね。アイリスさんは魔獣の為にここまでして本当にすごい人だったんですね」
「魔獣の為、か」
「?どうしたんですか?」
「いや、少しな」
クロードさんは顔を背けて肩を震わせてる。笑ってる?今、笑う要素あったかな?
「はぁ…そういえばマナットもう一つあったよな」
「あ、はい!クロードさんも食べますよね」
「そうだな」
「じゃあこれ…」
取っておいたもう一つのマナットをクロードさんに渡そうとすると押し返されてしまった。
「いや魔力はお前が与えてみろ」
「えぇ!?む、無理ですよ!第一魔力がなんなのかよくわかってないですし!」
「なんとなくは教えてやれるからやってみろ。それにお前魔法を使いって言っただろ」
「う、確かに言いましたけど……」
「魔法を教えてやるのは無理だが魔力の放出くらいは教えられる。それに魔力だけでも扱えれば身体強化はできる」
「身体強化?」
「魔力を纏って身体能力を強化できる。跳躍力や腕力とかの強化ができるから魔法を扱うものには基本中の基本。身体強化は魔法の登竜門といわれてる」
「な、なるほど。確かに出来れば大分便利そうですね…。でも私にできるか…」
「だからマナットを使う。これなら目に見えて魔力を扱えてるか分かる。まずは魔力を認識するところからだな」




