42話 ヴァイス
まさかウォルフに会えるとは。最後に会ったのは700年前くらいか。あんな別れになったが子供までいたとはな。…合わせてやりたかったな。
「で、まだお前は粘るのか」
「ワン!」
「クロードさん。どうしてもだめですか?」
「ダメだ」
「クゥーン……」
「ほら!こんなに悲しそうにしてるじゃないですか」
コイツら中々しぶといな。確かにフェンリルが強いことは知ってる。連れて行けば中々の戦力になるだろう。だがそれ以上にフェンリルは目立ち過ぎる。それにウォルフの子供に何かあったら……
「ウォン、ウォアン」
「ウォルフ。なんだお前まで」
「ウアン。ウォルルアンウォン」
まさかコイツまで連れて行けっていうのか。そういえばさっき何か話あってたな。何を話してるかさっぱりだったがまさか俺たちについて行く様に息子に話をしてたのか?
「……ハァー…仕方ない。街に着くまでだ。それまで連れってやる」
「ほんとですか!よかったね!」
「ワン!」
「これから先はさらに魔獣が増える。お前がいれば少しは楽になるだろう」
「そうだ!名前をつけてあげないとですね」
「別にいいだろう。そこまで長くいるつもりは…」
「こういうのは気持ちが大事なんですよ。それに一緒にいるのが短くても名前で呼んであげないと可哀想じゃないですか」
「名前、か」
「私もまだクロードさんに名前呼んでもらったことないし……」
「なんか言ったか」
「いえ別に!クロードさん何かいい案ないですか?」
「特にはないな。お前が好きにつけてやれ」
「う〜ん……名前。白、狼……よし!シロ!君はシロだ!」
「………」
「ワ、ワン……」
コイツ名付けのセンスが壊滅的だ……。このセンスの無さアイリスを想起させる。アイツも若干引いてるじゃないか。
「流石に他の名前にした方がいいんじゃないか…」
「ワン!!」
「他の名前ですか…。いい名前だと思ったんだけどなぁ。そういえばウォルフって何が由来なんですか?」
「ウォルフは確か、昔の言葉で狼って意味だったな」
「へぇ〜博識なんですね」
「名前をつけたのは俺じゃないがな。それがどうした」
「いや何が由来なのかちょっと気になっちゃって。それじゃあ白は昔の言葉でなんていうんですか?」
「白、なんだったか……。そうだ。確かヴァイス、だった気がする」
「ヴァイス!かっこいいですね!じゃあヴァイスって名前はどうですか?」
「ヴァイス、いいんじゃないか」
「君もどう?ヴァイスって名前」
「ワン!!」
「よかった!嬉しそう」
さっきのシロに比べたら何倍もマシだな。アイツも気に入ったらしい。まさかコイツのネーミングセンスがあそこまで壊滅的だったとは。メイドになるからメイと名付けたアイリスと体が白いからシロと名付けようとしたコイツ。ここまで低レベルのやつが2人もいるとは。
「ウォン」
「ウォルフ。お前はこれからどうするんだ」
「ウォアルン。ウォアン」
「…お前はまだ探してるのか……。もし見つけたらよろしく伝えといてくれ」
「ウォン!」
最後に返事をするように鳴いてからウォルフはどこかに走って行った。アイツ結構歳をとってる筈なのにまだあそこまで走れるのか。ウォルフは昔よりも体も倍以上大きくなって魔力も増していた。俺もウォルフと同じように昔よりも背も魔力も増してる。それがもう昔に戻れないと言っている様だ。俺は長く生きて幸せも知った。だがそれ以上にその幸せが崩れ去るのも知ってしまった。
「行っちゃいましたね」
「あぁ」
「……あ!そうだ!私薪を集めるためにここに来たのすっかり忘れてました!」
「そういえばそうだったな」
「クマに襲われてすっかり頭から抜けてました。早く薪拾わないと」
「俺はクマの解体をする。流石にこれを放置すると他の動物が集まってくるからな」
それにしてもでかいクマだな。魔獣じゃないから魔力探知で認識出来なかった。魔獣があるふれてるこの土地で良くここまで育ったものだ。毛皮もなかなかのものだな。これは高く売れそうだ。さて、さっさと解体するか。これだけデカいと中々時間がかかりそうだ。
「クロードさーんそっちはどうですか?」
「こっちはまだ時間がかかる。先に戻ったらどうだ」
「でもクロードさんを1人残すのは…」
「俺よりも自分の心配をしたらどうだ。ヴァイスお前ついてやってくれ。お前がいれば大丈夫だろう」
「ワン!」
「そうだ。お前料理できるか?」
「え、あ、はい。多少は出来ますけど…」
「そしたらこれで何か作って待っててくれ」
空間魔法から食材と調理道具を色々袋に詰めて渡す。食材自体はあまり入ってないし調理道具も鍋ぐらいしかないがまあ大丈夫だろう。
「おっとと…。それじゃあヴァイスは薪を持っててくれる?」
「ワン!」
「ありがと〜!よ〜しよしよし」
「ワフフフ!」
「それじゃあ気をつけろよ」
「はい!じゃあ行こうヴァイス」
ヴァイスは薪を口に咥えてアイツの前を歩きながら戻って行った。さて、俺は早くこれを解体しないとな。毛皮をなるべく傷つけない様に解体しないとな。




