38話 強襲
クロードさんが何か言いかけた時、後ろからレナさんの声が聞こえた。後ろをからレナさんとエルカさんが走って来た。
「ハァ、ハァ……よかったぁ〜。まだそこまで遠くに行ってなくて」
「ハァ………。まさか2人揃って寝坊するとは」
「レナさんとエルカさん一体どうして…」
「ハァー……。そうそう。これをリリィちゃんに渡したくて」
そういうとレナさんは肩から掛けていた鞄から茶色のキャスケット帽子を取り出した。帽子のワンポイントに百合の花が刺繍されてる。とても素敵な帽子。
「これを私に?」
「そう。これを渡したくてここまで走って来ちゃった。あとちゃんとリリィちゃんたちをお見送りしたくて」
レナさんは照れくさそうにしながら微笑んでる。凄く嬉しい…。私のためにここまでしてくれるなんて。たった1日だけだったのにここまでしてくれるなんて。
「でもどうして?」
「前にリリィちゃんの髪色が珍しいから悪い人たちに狙われちゃうかも知れないって言ったじゃない。だからこの帽子で少しは髪を隠せないかなって」
「レナさん……」
「あ!勿論気に入らないなら貰ってくれなくて大丈夫よ。この帽子穴とか汚れはないけど私のお古だ、し」
私は衝動的にレナさんを抱きしめていた。私はお母さんのことは覚えてないけど、お母さんってレナさんみたいな人だったのかな。レナさんは凄く優しくてあったかい人。そんなレナさんが私は大好き。
「本当にありがとう。レナさん」
抱きしめてたレナさんの体をそっと離す。手に持っていた帽子に髪を入れて被る。
「うん。凄く似合ってる」
「本当ですか!よかった」
「じゃ、私はクロードさんにこれを」
そういうとエルカさんはクロードさんに何か紙のようなものを渡した。なんだろう?
「これは…地図か」
「ヒスイ街の地図。弟くんのお店がある場所に印つけといたから。ついたら弟くんによろしく伝えてといて」
「私からもノアによろしく伝えてください。ご飯ちゃんと食べてるとかちゃんと寝てるかとか。あと、あと……」
「レナ」
「あらごめんなさい!私ったらつい…」
レナさん本当にノアさんのこと大事に思ってるんだな。私もレナさんと同じくらいお兄ちゃんのこと大切に思ってるしとっても大事な人。だから私は危険を犯してでもクロードさんについて来たんだ。お兄ちゃん、必ず探し出すからね。
「それじゃあ私たちはこれで…」
「!伏せろ!!」
「え、キャア!!」
クロードさんにいきなり頭を下げられたと思ったら、後ろから強風が吹き込んだ。いきなりのことで一体なにが起こったのか理解ができない。目の前にいるレナさんたちは無事みたい。エルカさんがレナさんを守ってくれたっぽい。
「クロードさん一体どうしたんですか!」
「鳥型の魔獣だ。村から大分離れているし、人間に釣られてここまで来たらしい」
「鳥?あ、本当だ!!」
空を見ると鳥が飛んでいた。一見ただに鳥に見えるけど胸元に魔石がある。クロードさんが教えてくれなければ危ないところだったかも。
「エルカちゃん大丈夫!?」
「う、うん平気。レナは平気?」
「私は大丈夫よ。でもエルカちゃん、腕が……」
「大丈夫だってこれくらい」
よく見るとエルカさんの腕が血で染まってる。エルカさんは大丈夫って言ってるけど、結構血が出てる。結構傷が深いかも知れない…。
「お前はあの2人のところにいろ」
「でもクロードさん…」
「集まっていた方が何かあったとき守りやすい」
「…わかりました」
私はレナさんとエルカさんの方に向かう。まずは怪我をしているエルカさんの応急処置をしなきゃ。
「エルカさん、とりあえず止血しましょう」
「ありがとう、リリィちゃん」
カバンの中からハンカチを取り出して傷を押さえる。ハンカチにジワリと血が滲む。やっぱり傷が深いみたい。致命傷ではないけど、このままだと貧血になっちゃう。
「ねえリリィちゃん。クロードさん大丈夫かしら?」
「大丈夫ですよ。だってクロードさんは強いですから」
クロードさんの方を見るとクロードさんは鳥の魔獣と対峙してる。クロードさんと鳥の魔獣との間には緊張感が走ってる。きっとクロードさんなら大丈夫。だってあのオーガだってやっつけちゃったんだから。




