37話 旅立ち
朝飯を食べ終わり、後片付けも終わった。部屋も軽く掃除しておいた。家を貸してくれたんだ。これくらいはしておかないとな。礼儀ってもんだ。アイツは旅の準備をしている。俺の荷物は全部空間魔法に収納しているから準備の必要もない。考え事をしていたら後ろからドアの開く音がした。丁度アイツの準備が終わったらしい。
「クロードさん準備終わりました」
「ああ、なら出発するか」
「そうですね。でもここを出発する前に村の人たちに挨拶しておきたいです。村の人たちにはお世話のなったので」
「まあ、それもそうか」
確かにここの村には随分と世話になった。ここの村長からも興味深い話も聞けたしな。ここの村に来たのは正解だった。村長くらいには挨拶しておこう。
「それじゃあ行きましょう、クロードさん」
「ああ」
「あれ、みなさん!どうして…」
家から出ると外には早朝なのにも関わらず村の奴らが集まっていた。一体どうしたんだ。
「クロード様たちを見送ろうと皆集まったんじゃ」
「村長さん!」
「これから魔獣の寝床に行くのだろう。魔獣の寝床は非常に危険じゃ。だがお二人ならきっと大丈夫でしょう。お二人の旅の安全を村の者一同祈っております」
「ありがとうございます村長さん」
「1日だが世話になったな。前も言ったが、俺たちのことは村の外の奴には他言無用で頼む。俺たちにも色々あるからな」
「ええ、ええ。勿論です。お二人の頼み事、その様なことであれば必ずお守りしますとも」
この村長は本当に人がいいな。いや、この村の人間全員か。昔、俺も人間と接することがあった。アイリスと人間の村を見に行った時、それより前から俺は人間を見てきた。俺が見てきた人間の中には善人がいた。だが反対に悪意が強い醜悪な人間もいた。俺自身アイリスに出会う前は人間に強い悪意を持っていた。
そんな俺を変えたのがアイリスだった。俺を連れ無理やり人間の村に連れて行かれ影から人間を見てきた。その村の人間にも悪意を持ってる奴もいた。だがそれよりも善意側の人間がとても眩しく見えた。それまでの俺が見てきた人間は悪意を持ってる奴ばっかりだった。そんな奴とは真逆の人間が俺には信じられなかった。それからアイリスは俺を連れて人間の村を影から見ていた。アイリスは俺に人間は醜悪な者だけじゃなく善意を持った明るい人間もいることを教えてくれた。アイリスの人間を信じる心は一体どこからきてたんだろう。
「さて、そろそろ出発するか。できるだけ進んでおきたいからな」
「そうですね。ヒスイ街までは長くなりますからね」
村の出口に向かう。村の外は長い一本道が続いて終わりが見えない。この辺りは魔獣に荒らされてはいない。村付近は魔獣もいないみたいだが、村から離れたところに魔獣の魔力が多く感じられる。聞いていた通り魔獣が多くいるらしい。前と違って魔力は格段に減っている。魔力に気をつけながら進まなければいけないな。途中で完全に魔力がなくなったら笑い事じゃない。
「それじゃあ世話になった」
「お世話になりました」
「こちらこそこの村を救っていただきありがとうございました。どうか道中お気をつけて」
村長が深々と頭を下げる。俺たちも頭を下げ村から出る。後ろを振り返れば村の人間が手を振っている。隣にいるアイツは満面の笑顔で村の人間に手を振っている。
「そういえばレナさんとエルカさん見当たりませんでしたね。クロードさんは2人見ませんでしたか?」
「いや、見てないな」
「そうですか…一体どうしたんでしょう…」
何かあった訳じゃないだろう。村の中には怪しい奴も魔獣の魔力も感じなかったからな。
「あの、クロードさん」
「なんだ」
「クロードさんってなんで私を連れてきてくれたんですか?」
「それは人間のお前の方が情報を聞き出しやすいからで……」
「正直言って私そこまでクロードさんの役に立てるとは思えないんです。勿論私だってクロードさんの役に立ちたいです。それでも私はクロードさんやジャッカスさんの様に戦える訳でも、街や国について詳しい訳じゃないです。まだ会って短いですけどクロードさんって結構合理的だと思って。そんなクロードさんがなんで私を連れてきてくれたのかなって」
急になんでこんなことを言い出したのか。これ以上先に進めばきっともう引き返せなくなる。まだ村からあまり離れてない。もしいつもの日常に戻りたいなら今ならまだ戻れる。だがここで俺が何か言ってもコイツは戻る気はないんだろう。俺が何故自分を連れてきたのかただ疑問なんだろう。
ただの人間なら連れて行くことなんてなかった。最初コイツが兄を探したいと言った時、俺とコイツは同じだと分かった。コイツを俺と同じ様に後悔はさせたくないと思ってコイツを連れて来た。ただそれだけのことで戦えもしない、ましてや人間を連れて来た。それにコイツからは何かを感じる。膨大な魔力の中に懐かしさを感じる。まあコイツを連れてデメリットは多分ないだろう。守れるだけは守るが、いざとなったら見捨てることも考えないといけない。
「それは、俺とお前が………」
「クロードさーん!リリィちゃーん!!」
言葉を遮るように後ろから知った声が聞こえる。後ろを振り返れば村を出た時にいなかったあの2人がこっちに走って来ている。村から大分離れたところなのに一体何の用だ。




