36話 身支度
チュンチュン
「ふわぁ……」
窓から溢れる朝日と小鳥のさえずりで目を覚ます。いつもと違う天井…。そうか私森から出たんだよね。夢じゃなかったて改めて自覚する。
「うーん……とりあえず顔洗お…」
まだ寝起きで頭があんまり働かないなぁ。そういえばクロードさんはもう起きてるのかな…。お腹すいた…。とりあえず着替えてリビングに行こう。顔を洗うために桶を用意して、そういえば朝ごはんどうしよう…。
重たい足取りでリビングに入る。そしたらクロードさんがもうリビングにいた。クロードさんはもう起きてたんだ。もしかして早起きなのかな。それにローブを着てないから角が2つ出てる。私の前で隠してないってことは少しは信頼してくれてるのかな。
「クロードさん。おはようございます」
「あぁ、もう起きたの、か」
「ん?どうしたんですか?」
急にクロードさんが顔を背ける。私何かした?
「ふっ…髪、凄いことになってるぞ。ふふっ…」
「髪?あ!」
髪を触ってみたら鏡を見なくてもわかるほど寝癖がついてる。それにしてもクロードさんもしかして笑った!?声を押し殺してるけど笑ってるのがわかる。いつも無愛想だからなんだか新鮮。
「桶に水溜めてあるから好きに使え」
「すみません、ちょっと髪直してきます…」
クロードさんから桶を受け取って部屋に戻る。うぅ…恥ずかしい…。昔から何故か寝癖が凄いことになっちゃうんだよな〜。とりあえずカバンから鏡と櫛を取り出す。鏡で寝癖の確認を…うわ!相変わらず凄い寝癖だな〜。髪が逆立ちゃってる。
髪を少し濡らして櫛で丁寧にとかす。これを何回か繰り返せば寝癖は直るけど、時間がかかるんだよな。う〜ん前髪がなかなかに厄介だな。丁寧に、丁寧に…。寝癖を直すのに必要なのは根気。時間をかけてじっくりと直していくこと。そういえばお兄ちゃんも寝癖酷かったなぁ。2人でよく笑ってたっけ。
「よし!これで完璧。あとは顔を洗おう。えっとタオル、タオル」
桶に溜まった水で顔を洗う。冷たい水のおかげで目が完全に覚めた。タオルで丁寧に水を拭きとる。あとは髪を結ばなきゃ。前髪の左側を三つ編みにして、小さい頃から使ってる私の目の色と同じ紫色のリボンを結ぶ。小さい頃にプレゼントしてもらってからずっと使ってるお気に入りのリボン。少し古くなっちゃてるけど今でもお気に入り。これで身だしなみは完璧。リビングに戻ろう。寝癖直すのに時間がかかちゃったから余計にお腹すいたなぁ。
「髪、直せたのか」
「はい…見苦しいもの見せてしまって申し訳ないです……」
「いや、別に構わない。あと、朝飯作ったが食べるか」
「朝ごはん!」
「そんなに腹減ってたのか」
「ま、まあ少し…」
ぐぅぅ……
私のお腹の音が部屋に響く。あぁぁ!!恥ずかしい!これじゃあ私が凄いくいしんぼうみたいじゃん!いや、まあ、実際そうだけど……。
「ふっ…朝飯にするか」
「はい…」
また笑われた…。でもクロードさんが少しでも私に心を許してくれてると思うと凄く嬉しい。クロードさんは私と壁を作ってるから、いつか面と向かって笑い合える日がくるといいな。
「準備手伝いますよ」
「いや、大丈夫だ。座ってて構わない」
「全部クロードさんに任せっきりって訳にはいきませんから」
「そしたら皿を出してくれないか」
「分かりました!」
そうだよ。全部クロードさんに任せっきりなんてダメだ。私は戦えないんだからクロードさんを支えられるようにしないと。私にできるのは家事全般くらい。少しはクロードさんの役に立てるようにしないと。
「クロードさんお皿で、す」
「あぁ」
「クロードさん、それ」
クロードさんが用意してくれた朝ごはん。作ってくれたのは嬉しい。だけど焼いた塊肉と、見たことないキノコは朝ごはんにしては重すぎるんじゃないかなぁ〜。いやせっかく作ってくれたんだ。文句を言うのは流石に…。でもこのキノコ本当に食べられる?私、山菜とかキノコには詳しいけどこのキノコは一度も見たことないよ。紫色なんだけど本当に食べられる?
「えっとクロードさん、このキノコって食べられるんですか?」
「ああ、生で食べると舌が痺れるが火を通せば全く問題ない」
「もしかして生で食べたことあるんですか」
「大分昔にな。大丈夫だ。火はしっかり通してある」
昔に生で食べたって…。この紫色のキノコを?もしかしてクロードさんて食生活おかしい、のかな?いやクロードさんは背が高いからこれくらい普通?いや流石にないよね。お父さんも背が高かったけど食べてるものは普通だったし…。
「えっと、私こんなに食べられないのでお肉半分あげますね」
「腹減ってるんじゃないのか」
「流石に朝からこんなに食べられませんよ」
「そうか…」
「あ、いや!?朝だからであってお昼はいっぱい食べられますからね!」
「急にどうしたんだ。早く食べないと冷めるぞ」
「そ、そうですね。いただきます」
クロードさんが落ち込んでる様に見えたからよく分からない言い訳しちゃった…。とりあえずこのキノコから食べてみよう。クロードさんがいうには火を通せば舌は痺れないって言ってるけど…。
「…美味しい」
「そうか」
「紫色なのに普通に美味しい。そういえばこのお肉も魔獣ですか?」
「いや、魔獣の肉は村の奴らに全部渡したからこれは普通の猪の肉だ」
「猪……」
猪なんて久しぶりに食べた…。昔はお父さんが動物を狩ってきてその中に熊とか猪とか凶暴な動物もいたなぁ。でも帰ってきたお父さんには傷1つついてなかったからお父さんは凄く強かったと思う。子供の頃は全然気にしなかったけど今考えるとお父さんも大概変な人だったかも。
「そういえばお前俺と会う前に魔獣は見たことあったか?」
「いえ、ないですよ。あの時襲われた狼の魔獣が初めてです」
昔は魔獣なんてあの森で一度も見たことなかったのに、なんであの時は魔獣があの森にいたんだろう。あの日は家から大分離れたところまで散歩してたのが原因なのかな。家の近くには魔獣はいないし。クロードさんは魔獣が野生化したって言ってたから野生化した魔獣があの森に住みついちゃったのかな。だから昔は魔獣が森にいなかったのかも。
「そうか……」
「なんでですか?」
「いや、魔獣との遭遇経験がほぼないやつがこの先の魔獣の寝床に行って大丈夫かと思ってな」
「だ、大丈夫ですよ。ナイフの扱いは少し心得があるので」
「なら大丈夫そうだな。俺は防御魔法はからっきしだから確実に守れる自信はない。多少は無理をさせることになる」
「扱えると言っても少しだけですからね!もしもの時はクロードさんに頼りっぱなしになちゃいますよ」
「それを承知でお前を連れていくことを選んだ。ほらはやく食え。そろそろ出発するからな」
「はい!」




