34話 2人の時間
リリィちゃんは明日に備えてエルカちゃんの家に帰って行ってしまった。私もこの辺で帰ろうかな。今日はうちでエルカちゃんが泊まりにくるからその準備もしなきゃ。
「私そろそろ帰りますね」
「おぉ〜そうかぁ〜」
「皆さんもお酒はほどほどにしてくださいね」
「わぁ〜てるよ〜」
「それでは失礼します」
皆さん随分お酒を飲んでいて酔っているみたい。私はあんまりお酒得意じゃないから飲まないけど、あそこまで飲めるのは逆に才能よね。さて挨拶も済ませたしうちに帰りましょうか。
「あら?エルカちゃん。どうしたの?」
「あ、レナちゃん」
うちの前に着くとエルカちゃんが立ってた。もしかしてずっと待ってたのかしら。それならなんだか申し訳ないわ。
「もしかしてずっと待ってた?それなら入っててもよかったのに」
「流石に申し訳ないよ。それにそこまで待ってないからね」
「そう?さ、入って入って」
「それじゃお邪魔します」
うちにエルカちゃんが遊びに来るのいつぶりだったかしら。最近はゴブリン騒動で色々忙しかったから話す機会もなかったからね。それにうちに誰かいるのってやっぱりいいわね。ノアが街に出稼ぎに行ってからこの家に私1人だったから家に話し相手がいるのっていいわね。
「今お茶淹れるわね」
「別にいいよ。そこまでしなくても」
「いいの。私がしたいだけだから」
「それじゃあお構いなく」
キッチンの方でかめに貯めていたお水をやかんに入れてお湯を沸かさないと。お湯を沸かすだけでも一から火をつけなきゃいけないから面倒よね。
シュボッ!
「やっぱりマッチって便利ね。行商人さんから買っておいてよかったわ」
あとはお湯が沸くまで待ってましょう。あとはお茶菓子があればいいのだけれどあいにく無いのよねぇ。
「ごめんねお茶菓子でもあればよかったけど」
「いいよ、別に。私今お腹いっぱいだし」
「そう?食べ物はゴブリンに奪われちゃったから」
「まあね。お腹いっぱいになるまでご飯食べたのなんて久しぶりだったし」
「そうよね。本当にクロードさんたちには感謝してもしきれないわ」
「…ねえクロードさんたちのことどう思ってる?」
「どうって…恩人としか」
「そう……」
「どういうこと??」
「いや、なんでもない」
エルカちゃんの意図がよくわからないわ。クロードさんはこの村の恩人だし、リリィちゃんはお兄さんを探してるいい子。別におかしいところなんてないはずだけど…。でもエルカちゃんは昔から勘がいいところがあったし、もしかしたらエルカちゃんにしか分からないことがあるのかもしれないわね。
「エルカちゃんがそういうならそういうことにするわ」
「そうして。私の勘違いかもしれないから。あと、やかん大丈夫?」
「忘れてたわ!いけない、いけない!」
エルカちゃんと話しててついやかんのこと忘れてたわ!台所に行くとやかんからは湯気が立っていて既にお湯が沸いてた。取り敢えずポットを火から外す。よかった。このまま忘れてたら中の水がなくなるところだったわ。
「さてと、カップとお茶っ葉、あとティーポットを出さなきゃ。折角エルカちゃんが来てくれたから、いいの出しちゃおうかしら」
棚からお気に入りのカップとちょっと高かったお茶っ葉、ティーポットを取り出す。そういえば食器とかお茶っ葉はゴブリンには取られなかったのよね。村にある井戸も潰されてなかったし、本当に食べ物だけをとって行ったのよね。でもこのカップは割れてなくてよかったわ。一番のお気に入りだったからもし割れてたら大分ショックだったわ。
さてティーポットにお茶っ葉を入れてお湯を入れる。蓋をして2、3分蒸らす。そしたら茶漉しを使ってカップに淹れる。カップのお花の絵が綺麗でお気に入りなのよね。カップ2つをトレーに乗せてエルカちゃんもところに運ぶ。
「お待たせエルカちゃん」
「お、いい匂い。やっぱりレナはお茶淹れるのうまいよね」
「これは特別茶葉がいいのよ。ミルクはないからストレートになっちゃうけど大丈夫?」
「全然平気。むしろストレートの方が好きだし」
「ならよかった!」
「さ、冷めないうちに飲も」
「そうね」
カップに手をとって紅茶を一口。やっぱり高かっただけあって美味しいわね。やっぱり香りが違うわ。
「あ〜酒ばっか飲んでたから少し酔いが醒めたかも」
「エルカちゃん酔ってたの?」
「い〜や。酒は結構飲んだけど全然酔ってないよ。でもアルコールは薄まったかもね」
「全く。お酒の飲み過ぎには気をつけなさいよね」
「あはは。肝に銘じておきます」
「全く……」
こうしてエルカちゃんと話すの久しぶりだわ。最近は村のこともあってなかなか話す機会もなかったからね。小さい頃は私とエルカちゃん、ノア、そしてロイドくん。昔はみんなでよく遊んでたわ。今はノアは村を出て出稼ぎに行ってくれて、この村はついさっきまでゴブリンの脅威に晒されていた。そしてロイドくんは……。いやよくないわね。折角久しぶりにエルカちゃんとお話ししてるんだから暗い気分になるには良くないわ。
「私、ノアの部屋少し整理してくるわね」
「そしたら私も手伝うよ」
「いいのよ。エルカちゃんはお客様なんだからゆっくりしてて」
「なんかレナに任せっぱなしで申し訳ないな…」
「私がしたくてしてるだけだから気にしないで」
「それじゃあお言葉に甘えて……」
エルカちゃんはどこか申し訳なさそうにしていたけど、エルカちゃんにはゆっくりしてほしいからね。さてノアの部屋を整理してこないと。




