32話 手紙
『エルカさんへ
最初に謝らせて下さい。いつも貴方に手紙を送っているロイドですが亡くなってしまいました。僕はそのことを伝える為に貴方に手紙を送りました。ロイドの遺骨は村に送ります。
知っているかも知れませんがロイドは魔王城に乗り込む戦いに参加しました。その戦いでロイドは亡くなりました。僕はロイドの戦友であり親友でした。僕とロイドは共に背中を預けられる存在で、死線を一緒に乗り越えてきました。なのに僕はロイドを助けられませんでした。
贖罪のつもりではありません。貴方に僕を許してもらうつもりもありません。ロイドはいつも貴方のことを話してくれました。ロイドのことをひとまず先に貴方に伝えるべきだと思いました。本当にごめんなさい。』
なるほど。アイツがやけに10年前に反応していると思ったがこれが原因だったのか。ロイドとかいう男はあの戦いで死んだのか。この手紙はそれを知らせる手紙だったか。だが手紙の送り主は誰だか分からないな。この手紙の最後の行は黒塗りにされている。おそらく名前を書いていたのだろうが送り主が塗り潰したのか、それともアイツが塗り潰したのか。まあどちらでもいい。他人の過去を詮索するのはあまり気分のいいものでもないしこの手紙はちゃんとしまっておこう。
全部の手紙を缶にしまい元の場所にしまう。こんなところに手紙を仕舞い込んでいたのは、手紙の送り主が死んだことを思い出したくなかったのだろうか。棚の扉を閉じて本来の目的の桶を手に取る。桶の中に魔法で水を張り水の中に手を入れる。炎の魔法を少しだけ放出する。一気に放出すると沸騰して俺が火傷する。温度が40度くらいになり丁度いい温度になった。空間魔法でしまっていたタオルを取り出して桶の中に沈める。その間に服を上だけ脱いでソファの上に置いておく。
ソファに腰をかけて硬く絞ったタオルで上半身を拭く。改めて見ると古傷が多いな。回復魔法を使っても古傷までは治せないし、この傷は自然治癒で塞がったものだし仕方ないな。そもそも水魔法以外で回復魔法使える魔族は極端に少ないからな。水魔法も回復できる程度がしれてるからな。古傷を見るたびに嫌なことを思い出す。この傷は10年前の、この傷は…いや思い出すのはやめよう。虚しいだけだ。
こんなもんか。空間魔法で新しい服を取り出し袖を通す。さて着てた服でも洗うか。
「水の第一呪文:スプラッシュ」
水魔法で水の泡を作りその中に着ていた服を入れる。第一呪文くらいなら無口頭呪文でもできるが操作を優先するなら口頭呪文の方がやりやすい。水の泡を動かし中の服を掻き回す。ある程度回したら水を弾けさせないよう水の泡を小さくしていき手のひらサイズまで縮ませる。水を桶の中に入れ、服を風魔法で乾かす。
風で踊っている服を見ながらソファに深く腰を掛ける。1人で静かにしていると自然と考えごとをしてしまう。これからのこと。ついてきたアイツが何者なのか。色々と頭をよぎる。明日から向かうヒスイ街に何か有力な情報でもあればいいのだが。アイリスとは昔から一緒だった。初めて会ってからこれだけ長く離れたことなんてなかったと思う。俺が離れようとしてもアイリスはしつこくくっついてきたからな。
「…ハァ…またアイリスのことを思い出してる。アイリスお前何処にいるんだよ。………案外近くにいたりしてな。ハハッ」
自分でもありえないと思い苦笑がでる。早くアイリスの体を取り戻す。いつまでもアイリスを1人になんてさせられない。
考えごとをしていたらいつの間にか服が乾いていた。乾いた服を空間魔法の中に仕舞う。服を仕舞ったついでに毛布も取り出しておく。明日からは長旅になるし何日間は野宿だ。今のうちに休めるだけ休んでおこう。魔力を回復する為にもだ。別の部屋にベットがあるみたいだが俺はソファでいいだろう。俺よりアイツの方がちゃんと休んだ方がいい。靴を脱いでソファに横になり毛布を被る。あとは目を閉じれば自然に寝るだろう。




