31話 兄の行方
さて俺が知りたかったことはあらかた聞けただろう。なかなか興味深い話を聞けた。この村に来たかいはあったな。思わぬ収穫だ。
「あの、私も村長さんに聞きたいことがあって」
「ん?何だね」
「私のお兄ちゃん、ダリアって人知りませんか?」
「ふむ、ダリア…。すまないが存じあげませんな。何か特徴などは」
「特徴…髪の色が金色なんです」
「金色の髪、もしやあの子か?」
「何か知ってるんですか!?」
「ああ、確か10年ほど前。村の外から訪れた男の子がいたのですよ。確かその子の髪色は金色だった気が…名前までは覚えてはいませんがな」
「それでその人はどこにいったんですか!」
「そう慌てなさんな。その男の子は妹のために薬を探していると言っていてな。この村には薬はなかったので街の方にいったんじゃ」
「それ、きっとお兄ちゃんだ。お兄ちゃん私の為に森の外に出て行って…」
その後行方不明か。この村に訪れてはいたみたいだが、その後に街の方に行ったのならこの先はわからないな。それにしても兄とは髪色が違うのか。まあ銀髪は魔力が多いものだけがなるし髪色が違ってもおかしくはないか。
「大丈夫ですよ。リリィ様。村と比べて街の方は魔獣も魔物もいませんから。街にいるのならきっと会えますよ」
「すみません…ありがとうございます。村長さん」
「さて話も聞けたし俺たちは失礼する」
「おお、そうですか。そういえばおふた方はこの村にお泊まりになるでしょう。よかったらこの家でお休みになられたらどうですか?」
「気遣いはありがたいがそれに関してはもう解決している」
「それはよかった!今日はお疲れになられたでしょうしゆっくりお休みください」
「ああ、そうする」
「村長さん色々ありがとうございました」
「いえ、お構いなく」
村長が穏やかに笑い、アイツが頭を下げる。俺も同じように頭を下げてからドアに手をかけ外に出る。随分と話こんでいたみたいで日が落ちかけてあたりが暗くなり始めていた。
「あ、クロードさんたち。やっぱりここにいたんですか」
「エルカさん!どうしたんですか?」
「家の片付けが終わったから2人を呼びに来たの。で、2人がどこにいるかみんなに聞いてここに来たって訳。村長との用事はもう済んだの?」
「用事はもう済んだから大丈夫だ」
「ならよかった。家の場所だけ教えちゃうから休みたい時に好きに使っちゃって大丈夫だから」
「レナさんありがとうございます。何だか申し訳ないです」
「さっきも言ったけど、2人には村を救ってくれた恩もあるから。これでも恩を返しきれないくらい」
「エルカさん…」
「さ、あたりも暗くなってきたから私の家に行こうか」
話も終わり、家までついて行く。歩きながらあたりを見回すがやはり建物自体の被害はないみたいだな。あくまで畑や家畜だけしか被害はなかったみたいだな。本当にジャッカスたちは食料だけが目当てだったみたいだな。だとしてもやりすぎな気はするが。
「あのエルカさん。1つ聞きたいことがあって」
「ん?なあに?」
「ダリアって人知りませんか?10年くらい前にこの村に来た金髪の男の子なんですけど」
「10年くらい前、か…うーんごめんねダリアって人は私も知らないな」
答えるまでに間があったな。相当10年前のことは思い出したくはないみたいだ。こいつも10年前に何かあったようだし10年前の出来事は何かしらの大きな出来事を生んだみたいだ。
「そうですか…」
「そのダリアって人はリリィちゃんにとってどんな人なの?」
「その私のお兄ちゃんで。10年くらい前からどこかに行っちゃってから会えてないんです」
「お兄ちゃんか。10年会えてないのは寂しいよね。うん、大丈夫きっと会えるよ。私の方からもみんなに聞いてみるね。誰か知ってるかもしれないし」
「エルカさん…」
「で、ここが私の家ね。少し狭いかもだけど、綺麗にはしといたから好きに使っちゃって大丈夫だから」
「わざわざすまないな」
「いえいえ。村の救世主様ですから。じゃあ私はこれで」
「エルカさん本当にありがとうございます!!」
「ゆっくり休んでね〜」
背中を向けたまま手を振りどこかに歩いて行った。正直俺は魔力も体力も回復したいし、先に休ませてもらおう。
「俺は先に休むが、お前はどうする」
「私はもう少し夜風にあたろうと思います。お兄ちゃんのことも他の人に聞きたいので」
「そうか。じゃあ俺は先に寝ることにする」
「はい。クロードさんおやすみなさい」
「…ああ」
家の中に入り肺に溜まった空気を少し吐き出す。こうやって寝る前に誰かと会話を交わすのも10年ぶりだろう。この10年話をする相手なんていなかったからな。そう考えると今までの人生で誰とも話さなかったのはこの10年が初めてかもしれない。アイリスと出会う前も騒がしいくらい誰かの声がしていたし、誰とも話さないなんてことはなかった。
「汗もかいたしとりあえず体でも拭くか。どこかに桶でもあるだろ」
とりあえずローブを脱いでハンガーにかける。人前だとフードも脱げないし、ずっとフード被ってると意外と窮屈だからな。棚あたりに桶あるだろう。とりあえず近いところから探すか。
台所の下にある棚の中を探すが、それらしきものはないな。だとしたら上の棚か。少し高いがこれくらいなら全然届く。お、あったな。桶の淵に指を引っ掛けて手繰り寄せる。
ガラァン!!
「ん?なんか落ちてきたな」
手繰り寄せた桶と一緒に缶が落ちてきて落下の衝撃で蓋が外れてしまった。缶の中身はどうやら手紙の様だ。そういえば街にいるやつと手紙のやり取りをしている言ってたし多分それだろう。だとしてもこんなところに置いておくか?
落ちてきた缶を拾い上げる。見た感じ落ちてきたことでの傷も凹みも見当たらないしひとまずよかった。とりあえず元に元の場所に戻す為に手紙を缶の中に入れる。手紙を手に取るが少し好奇心が湧いてしまった。誰かの日記や手紙なんかを盗み見したくなるのは誰だってそうだと思う。申し訳なさ半分、好奇心半分で手紙を開く。
『エルカへ
カシワ村を離れてから今年でちょうど1年。僕はこっちでうまくやってるよ。最近周りの人からも褒められて調子がいいんだ!最初はキツかった訓練にも慣れてきて成長を感じてきてるんだ。それに国を守る仕事ってやりがいを感じるからね。今はまだ無理だけどいつかそっちに帰って来れたらいいな。エルカとレナ、ノアにも会いたいしね。また何かあったら手紙を書くね。
ロイドより』
どうやら友人からの手紙のようだな。察するに村から出て行った男が国の兵士になってたまに手紙を送っているみたいだ。いつの手紙かわからないがわざわざ保管しているあたり相当大事にしている様だ。あんまり他人の手紙を勝手に読むのも悪いしちゃんとしまっておこう。
読んでいた手紙を缶にしまい他の手紙もしまっていく。そこそこ手紙の量があるな。相当手紙のやり取りをしてたみたいだ。次々に手紙を手に取って缶の中にしまっていくが1つだけ他の手紙とは違うものが目に付く。他の手紙はシワ1つないがこれだけはシワシワだ。流石にこれ以上読むのは憚れるがどうしても気になってしまった。恐る恐る手紙を開く。




