3話 黒いローブ
私はただ散歩してただけなのにどうして、こんな事に。
「はぁはぁ……」
「ガゥガゥ!!」
私の後ろには、今にも私を食べそうなオオカミの様な動物ががよだれを垂らしながら走ってくる。走って、走って。泥に汚れる靴も、小枝に引っかかって裂ける肌も。構わずただ逃げるだけ。
「きゃあ!!」
木の根に引っかかって思わず転んでしまう。そうしてる間に、狼が私に追いついてしまう。
「グルルルゥ…」
「いや……」
尻餅をつきながら、後ろに退く。狼も喉を鳴らしながらジリジリと私に近づいてくる。私と狼に距離は徐々に近づいてる。狼の額についてる宝石が光に反射してキラリと光る。
狼のよだれがポタリと地面に落ちる。
「もうダメ…」
目をぎゅっと閉じたけど、構えた衝撃がなかなかこない。聞こえてくるのは、何かが焼けているのかパチパチという音だけ。
目をうっすらと開けると、さっきの魔獣が燃える姿と、黒いローブを着た男の人。状況から考えると男の人が魔獣を倒したとしか考えられないけど。
「あの、あなたが助けてくれたんですか…?」
「………」
無視、されてるのかな?フードを深く被ってるから表情がよく見えない。
「た、助けてくれてありがとうございます。私リリィって言います。あなたは?」
「………」
嫌われてるのかな?何か嫌なことしちゃったかな。
「(うーん、特に思い当たることはないんだけど)」
1人で自問自答してるといつのまにか黒いローブの人がいなくなってた
「ちょ、ちょっと待ってください。せめて名前だけでも!!」
黒いローブの人の背中を走って追いかける。私の呼びかけに気づいているのか、気づいてるけど気づかない振りをしてるのか。どっちでもいいけど速く追いつかないと。
「はぁはぁ…やっと追いついた!」
服を引っ張って黒いローブの人を引き止める。
けど、少し勢いが強かったのかフードが外れてしまった。
「え、」
男の人の頭には2つの角が生えていて、片方は途中で折れていた。