26話 救いの言葉
「あのクロードさ…」
「お二人とも宴の準備が整いましたぞ!さあこちらへどうぞ村のみながお待ちしております」
「あ、村長さん」
「そうか。じゃあ行くか。…ありがとう」
「え!」
「励まそうとしたんだろ。俺は大丈夫だ。10年間の間、1人で戦い続けた。今更どうってことはない。10年なんて時間俺にとっては人生の一割にも満たないからな」
そうじゃない。時間なんて関係ないんだ。心が壊れる時は一瞬。それを少しでも私が支えられたら…。
「さあさあ!早くこちらへ!!」
「あ、ちょっと村長さん!?」
「おい押すな」
村長さんに背中を押されて私とクロードさんが広場の中心に連れて行かれる。中心に行くまでに周りに村人さんが私たちのことを見つめて救世主様と呟いてて何だか恥ずかしい…。
「救世主様!!」
「おぉ救世主様…」
中心にたどり着いてみんなが救世主様と歓声をあげてる。目を泳がせて遠くの方を見ていると女の人と目が合う。あれ?もしかしてレナさん?レナさんも私に気づいて手を振ってくれた。私もレナさんに小さく手を振りかえす。
「さあ救世主様何かお言葉をお願いします」
「は?言葉?」
「えぇ。村人全員は救世主様に救われています。その救世主様から何かお言葉を欲しいと感じる人は多いんです」
「と言ってもな…」
私がレナさんに気を取られてるとクロードさんが村長さんに無茶振りされてた。急に言葉って言われても何言えば分からないですよね…。
「あー……そうだな……俺がここに来たのはただの偶然だった。俺がこの村に来てたまたま村を救っただけだ。だが今日この日まで村がなかったら村を救う以前の問題だ。今日まで村があったのはお前達が戦い続けたからだ。この村を救ったのはお前達だ。この戦いに勝ったのはカシワ村の全員だ。命をかけて戦うことは誰にでもできる訳ではない。誇れ、お前達は強い。お前達全員がこの村の救世主だ」
「「「ウオオオオ!!!!!」」」
村の全員が声をあげる。中には泣き出す人もいてそれを慰める人もいる。私達は今日この村に来たけどきっとこの人たちはずっと、最悪何年も戦い続けたんだろう。その戦いが今日クロードさんのおかげで終わったんだ。きっと私たちには計り知れない程のことなんだろう。
「なんとありがたいお言葉ありがとうございます。さあ救世主様達こちらどうぞ」
そう言って飲み物を私たちに渡してくれる。これお酒じゃないよね?私お酒飲んだこと無いから大丈夫かな。
「これで全員にまわったな。それでは救世主様とカシワ村のさらなる繁栄を願って乾杯!!」
「「「乾杯!!!」
村長さんの掛け声でみんな飲み物をかかげて乾杯する。何だかいいな。沢山の人でお祝いするって家だとやったことなかったから。
「今日は宴だ!沢山食べて沢山飲め!遠慮はいらんぞ!!」
それぞれの人がお酒を飲んだり料理を食べてる。わー!料理美味しそう!私も後で食べに行こうかな。
「おい」
「ん?何ですかクロードさん」
「お前酒は飲めるか?」
「いえ。私お酒は飲んだことなくて」
「じゃあこれ飲むのはやめとけ。中々アルコールが強い酒みたいだ」
「え!そうなんですか?でもこれどうしよう」
「俺が飲む。お前はあっちの方でジュースもでももらって来ればいい」
「あ、ありがとうございます。じゃあ私ジュースもらって来ますね」
「あぁ。そうしろ」
そうだ。ついでって言うのはアレだけどレナさんに弟さんのこと聞いてこよう。
「あ、レナさーん!」
「あら?リリィさん。どうされたんですか?」
「飲み物をもらいに来て、それでたまたまレナさんを見かけてつい声かけちゃいました」
「あら。ウフフ!何だかそう言ってもらって嬉しいです。あれ?でもさっき村長さんから飲み物もらってませんでしたか?」
「あはは…それが渡されたのがお酒でして、私お酒飲んだことなくて。それで代わりにジュースをもらいに来たんです」
「まぁ!村長ったら。まったく何も確認しないで女の子にお酒を渡すなんて…」
「あ、全然大丈夫ですよ!」
「リリィさんがそういうならいいんですけど。あ、ジュースですよね。私もらって来ますね」
「あ、いいんですよ。私が…」
「大丈夫ですよ。リリィさんには色々お世話になっちゃてるので」
そういうとレナさんは走って行っちゃった。遠くなっていくレナさんの背中を見送って行く。何だか申し訳ないな。
「あ、リリィちゃん。レナちゃんにはもう会えた?」
「エルカさん!」
「さっき振り。で、どう?レナちゃんに会えた?」
「さっき会ったんですけど飲み物を取りに行っちゃって」
「あちゃー。そうか。でもそれならちょっと待ってれば帰ってくるか」
「そうですね」
ちょうどレナさんが行っちゃったタイミングでエルカさんが声をかけてくれた。エルカさんとレナさんは仲がいいのかな?
「…さっきクロードさんが言ってこと本当?」
「え!?」
「クロードさんが王都の研究者ってこと」
「な、何でそんなこと言うんですか?」
「やっぱりちょっとおかしいと思ってね。だって王都の研究者がこんな辺鄙なところにまで研究のために来る訳ないと思ってね」
「どうしてそう思ったんですか…」
「……。村長はこの村がゴブリン達に襲われ始めた時から王直属に騎士団に頼んだんだ。“このままだとこの村は滅んでしまう!どこの騎士団でも構いません!カシワ村を助けてください”ってわざわざ王都まで行って頭下げて来たんだよ」
「それでどうなったんですか?」
「動いてくれなかったよ。カシワ村は王都から見ればなんの利益もない。ならこの村を助けるメリットもないってことだよ」
「そんな……」
「この世は善行だけじゃ成り立たないってことだよ。たまには切り捨てるって選択を取らないといけない。たとえそれが村1つなくなることだとしても」
「エルカさん…」
助けるにメリットがあるとかないとかそう言う問題なの?そんなのおかしいよ。だってこの村には少なくない人達が暮らしてる。それを見殺しにする様な真似なんて…。でもその話がクロードさんとどう繋がるんだろう?
「あの、それで何でクロードさんがおかしいって話になるんですか」
ここでクロードさんが魔族ってことがバレたら大騒ぎになるかも知れない。エルカさんがもしクロードさんが魔族って気づいても周りに言うような人には見えない。でも念のためクロードさんが魔族だってバレないようにしないと。ここは私がうまく誤魔化さないと。




