20話 鬼の昔話
「チッ…魔人てのはこんなんばっかなのかよ」
「うぅ……」
地面に転がした魔人を足で踏みつける。あっちの方から喧嘩をふっかけてきた癖に大した強さじゃなかったなぁ。つまんねぇ。
「魔人でこれじゃあつまんねぇな。せっかく人型になって街に降りて来られるようになったてのによぉ」
俺は最近進化して人型になった。前の姿じゃぁ街におりりゃたちまち騒ぎになるからな。人型になりゃぁ街におりても騒ぎにならねぇ。だから街に住んでる魔人とさんざん戦合ったのによぉ。どいつもこいつも雑魚ばっかで退屈だ。これなら山に篭って魔物どもと戦りあった方がマシだな。
「君が噂の鬼人か!」
「アァ?」
突然俺の目の前に現れた女が話かけてきた。こいつ何処から現れた?こいつの頭の上にも2本の角が生えてる。俺の足元にいる同じ魔人か。
「ま、魔王様…」
「大丈夫?今助けてあげるね!」
「魔王?お前強ぇのか」
「まあね!この国1番の強さだよ」
「へぇ丁度いい。雑魚ばっか相手してて退屈だったんだ。俺の相手してくれよ」
「うーん…私も最近クロードに書類仕事ばっかりしてて暴れ足りなかったんだ。いいよ相手してあげる。でもまずはその足退けてくれる?」
「足だぁ?」
俺の足元にいるこいつのことか。
「別にいいだろこいつのことなんて。ささっと戦ろうぜ」
「ダメだよ。私が暴れちゃったら君もその子も無事じゃ済まないから。だから関係ないその子だけは逃してあげなきゃ」
「へぇ。大した自信じゃねぇか。オラさっさとどっか行きやがれ」
「ゲホッ…申し訳ありません魔王様」
「いいよいいよ。速く逃げな」
「随分と余裕だなぁ。お前が魔王ってことはお前を倒したら俺が魔王ってことになるのか?」
「んーまぁそういうことになるけど、君じゃ私は倒せないと思うよ?」
「アァ!?」
舐めやがってこの女。俺が女に負ける訳ねぇだろ。見た感じ普通の奴だしよぉ。
「死んでから後悔すんじゃねぇよ!!!」
右足を踏み切り右腕を振り上げ女に殴りかかる。が、女がいきなり消えた。
「いきなり過ぎない?にしても速いね。なかなかやるじゃん」
「テメェ…おちょくってんのか?」
消えたと思った女は殴りかかった右腕に立っていた。速いとか言うなら大人しく殴られとけよ。揶揄われてるとしか思えねぇ。
「退きやがれ!」
「おっと。まぁ君が中々やるのは分かったよ。じゃあ今度は私の番かな?おりゃ!」
「な!?ガハッッ!!!」
ふざけた様な掛け声からは考えられない様な威力の拳がとんできた。気づいた時には地に背中をつけていた。嘘だろ。街の建物の壁何枚もぶち破りやがった。あの細い腕からどんな力をだしてやがんだ。まさか魔法ってやつか?
「くそ、痛てぇ…」
「ほらほら、まだまだいくよ〜!!」
「ちょ、ヤベェ!」
ドゴォォン!!!
「モロに食らったらマジで死ぬな」
女の拳が地面にぶつかり放射線状にひびがはいってる。しかも中心隕石でも落ちたのかってほどへこんでやがる。
「うーん…やっぱ座ってばっかだったし鈍っちゃてるなぁ」
「チッ…やらっれぱなしは柄じゃねぇ。こっちも攻めるか」
女のパワーは規格外だが耐久の方は未知数だ。一発攻撃を喰らわせれば勝ち目はあるかもしれねぇ。さっきは大振りの一発だったが連撃で相手に攻撃をさせる暇を与えねぇ。とにかく手数で攻める。
「オラオラオラオラァ!!」
「ほっほっほ。うーんやるね!へへっ楽しいなぁ」
「クソッ全部避けやがる!」
拳を何度も繰り出し攻撃を当てようとするが拳を全部避けやがる。それにこいつまだ全力じゃねぇって感じだ。クソッ俺は結構必死だってのによぉ。
「ガァァ!!」
「おっと危ない。急に脚を使ってくるなんて」
「な、離せ!」
「いくよーー!うーん……」
「な、嘘だろ!」
「えい!!」
連撃の中に不意打ちで脚を繰り出したら脚を鷲掴みされた。それだけかと思ったらそのまま振り回して思いっきり投げてきやがった。空中に放り出され地面に衝突する前に一回転して着地する。
「アァァ!!!クソッムカつく!一発も当たんねぇ!!」
「おい、なんだお前。騒がしいな」
「オメェこそ何もんだよ」
着地した場所にいた男に急に声をかけられた。この男にも2本の角が生えてるから魔人なんだろう。にしてもこいつ、雰囲気からして中々強ぇな。
「見ず知らずの奴に名乗る筋合いはない。それに飛んできた奴には尚更な」
「チッまぁそんな事はどうでもいい。それよりもあの女だ」
「なんなんだこいつ…まぁ俺も今はアイリスを探さないと。アイツいつの間にか抜け出しやがって」
「あ、いたいた!よかった飛ばし過ぎて見失うところだったよ。ってゲッ!?クロード!?」
「やっと見つけたぞアイリス。いつの間にか抜け出しやがって」
「なんだぁお前ら。知り合いなのかよ。てかこの女、魔王って奴なんだろ。お前何もんだよ」
「こっちはクロード。私の右腕だよ!いやーいつも助けて貰ってばっかで」
「助けてるのは書類仕事だけだろ。てか俺のこと勝手に教えるな」
「あははは……」
この女が魔王でその相棒となると、この男も中々強ぇのか。こいつも2本の角が生えてるから魔人か。そういやぁ女の規格外のあの力、結局魔法なのか?
「おい女」
「何?」
「お前仮にも魔王のアイリスにその態度は不敬だぞ」
「いいのいいの。そういう柄じゃないっていつも言ってるでしょ」
「お前のあの異常な力、魔法って奴なのか?」
「ん?いや別に魔法は使ってないよ。私強化系の魔法覚えてないし」
「な!?じゃああの力はなんの小細工もしてねぇてのかよ」
「うん」
あの異常な力が魔法って奴じゃねぇのかよ。じゃああの女素の力で俺より上ってことかよ。
「そろそろ帰るぞ。まだ書類は溜まってるし、お前が破壊した街の建物の処理もしなくちゃいけなくなったからな」
「そうだったまたあの書類地獄に逆戻り…。お願いクロード、手伝って!!この通り!」
「お前が逃げ出さなかったら手伝っても良かったがな」
「あーん!クロードの悪魔!鬼!」
「鬼はあっちだろ」
「あ?」
男の方が俺を指さしてくる。鬼って俺のことか。いまいち俺が人型だって実感わかねぇな。
「あ、そっか君鬼人だったね。いやー久しぶりに見たよ鬼人」
「鬼人?俺は鬼人っていうのか」
「お前自分がなんの種族かも知らないのか。まぁ魔物が自分の種族何か気にしないか。そんなことより早く城に戻るぞ。山ほどある書類全部片付けるまで俺が見張ってやる 」
「そんなぁ〜…てか何でクロードいつも私の場所分かるの!」
「さあな。身の回りに気をつけることだ」
「何で分かるんだろう…魔力探知?いや遠すぎると流石に探知できないはず…じゃあ協力者?」
「ほら帰るぞ」
「あ〜ん引き摺らなくても帰るってばぁ」
「おい待て女!!」
「何?」
このままじゃ男に女連れていかれちまう。このまま終わりだなんて納得いかねぇ。
「このまま逃げるなんて俺が許さねぇ」
「んー……じゃあいつでも城に来ていいよ。暇なら相手になってあげる。1番大きな城に大体いるから」
「おい。何勝手なこと言ってるんだ」
「いいじゃん。この子結構強いしワンチャン仲間に出来るんじゃない?」
「お前なぁ」
「その言葉忘れるなよ!俺はお前に勝つまで何度でも挑むからな!!」
「ほら面白い子じゃん」
「ハァ……ほら行くぞ」
「わざわざ引き摺らなくてもいいじゃん!!」
何なんだアイツら…。あの女あんなに強ぇのに尻に敷かれてやがる。あの男、女よりも強ぇのか?まぁ俺も今日は山に帰るか。女に殴られた後がまだ痛む。山にこもって修行のし直しだな。魔獣と魔物を100体ずつ倒してくるか。




