19話 師匠と一番弟子の雑談
「おい大丈夫か?」
「ガァ……」
「クロードの言う通り死んではねぇみたいだな」
俺はクロードらと別れた後オーガの様子を見に来た。俺の一番弟子が何かあったら大変だからなぁ。
「相変わらずタフだなぁ。タフさだけなら俺より上じゃねぇか?」
「グガアァァァ!グガッ!?グゥゥゥ……」
「叫ぶんじゃねぇよ傷が開くだろうが。ほら大人しくしてろ」
クロードにやられた傷は相当深かったみてぇだな。俺に手加減をしたのは分かるがこいつに手加減する必要はねぇから生きてたのは奇跡か、こいつのタフさが勝ったのか。まぁどっちでもいいか。
「お前の傷が治ったらここから移動するぞ」
「グガ?」
「あー?お前がやられた後に俺とお前をやった奴、クロードって言うんだがな。俺とクロードが戦りあってよぉ。それで少しばかり山を荒らしちまった」
「グガガ…」
「おい俺は悪くねぇぞ。戦いてぇという自分の欲に素直に従っただけだ。俺は悪くねぇからな!」
「グゥ…」
こいつ俺がぜってぇに悪いって目で見てやがる。本当に俺は悪くねぇよな??俺とクロードが戦いはこの山にゃぁきつかったみてぇだな。木は何本も折れて野原は今じゃ焼け野原だ。これはいつ嗅ぎつかれてもおかしくはねぇ。人間どもが来る前にここを離れてぇ。
「クロード強かったろ」
「グガァ」
「だろ。俺もアイツには敵わねぇよ。相性ってのもあるがなぁ」
「グガァ!グガグガ!!」
「ヘッありがとよ」
こいつはそんなことねぇて必死に励ましてる。実際俺はクロードに勝てなかった。俺もクロードも手加減はしていたが本気でやり合ったら俺は負けてるだろうな。
「だがよぉ俺にもどうしても勝てねぇ奴がいた」
「ガァ?」
「そいつは魔王アイリス。俺が何千回戦ってもかどうしても勝てなっかった。どんな手を使ってもな」
俺とアイリスが出会ってから俺は何百回、何千回以上戦ったがこの俺が一回も勝てなかった。昔から負けなしだった俺が初めて敗北を知った奴だ。ゴブリンの頃から力を追い求めてきた俺にとって衝撃的な出来事だった。そして俺はアイリスに強さに嫉妬し、そして憧れた。俺はただアイリスの背中を追い続けいつか追い越そうとアイツに何度も勝負を挑んだ。だが俺がアイリスに追いつくことも追い越すことも出来なかった。俺が追いつく前にアイリスは死んだ。
俺はクロードのように希望は持っちゃいねぇ。アイリスの体を取り戻すことなんて出来やしねぇ。俺だって一度負けた相手に逃げるような真似はしねぇ。だが俺は疲れたんだ。追うべき背中を失い、居場所を失った。アイリスの体を取り戻したところでアイリスが本当に生き返るとは限らねぇ。
だが今日クロードに会ってアイツは違うと考えてるらしい。クロードは俺らよりも長くアイリスとつるんでるらしい。クロードがどれくらいの時間アイリスと共にしたのかは知らん。戦りあったときに感じた。アイツは本気だ。マジでアイリスを取り返そうとしてる。俺は察するのが苦手だ。戦りあって
クロードがあの人間、リリィっつたけな。があの人間を連れてるのもアイツの髪色とアイリスの髪色が同じだからか、それとも別の目的なのか。俺もあの人間には気にいってはいる。アイツの気配がどこかアイリスに似てる感じがする。勘違いかもしれねぇけどな。
「グルル?」
「あぁ悪りぃ考え事してた」
「グァ。ガガァグガガガル」
「アイリスの話だぁ?そんなの聞いたいか?」
「グアァ」
「ったく仕方ねぇな。どうせお前の傷が塞がるまでここを動けねえんだ。長くなるぞ」