17話 進化の過程
「まあとにかく俺はアイツらのことは知らねぇよ。まぁアイツらは俺らと違ってぱっと見は人間の姿だからな。人間の世界でも生きてはいけるだろ」
「確かにそうだな…。だとすれば、大勢の人間が集まる街で人間に紛れてるか、小さな村とかで隠れて暮らしてるかのどっちかか」
「あぁ?まあ難しいことはよくわからねぇがお前がそう言うならそうなんじゃねぇか?」
キリアとローザは人間の姿にちかい。いや姿自体は人間の姿そのものだな。魔力は魔族そのものだから特別なことでもしない限り勘付かれる可能性はある。後残ってるのはメイだが、アイツは魔族でもない本当にただの人間だからな。それにアイツは魔族軍の兵士でもないただのメイドだ。アイツの顔は人間の兵士にも知られてないだろう。それなら普通に人間の国でも暮らしていけるはずだ。
「でもそれだけじゃ何の情報もないようなものですね」
「まあそれもそうだ。だが村長がアイリスについて知ってるみたいだからな。まずは村長の話を聞いてからこの先のことを考えよう」
「そういえば村長さんから話を聞くためゴブリンを退治しにこの山に来たんでしたよね」
「ゴブリン退治ぃ?お前らそれが目的だったのか」
「あぁ。そういえば少し気になることがあるんだが」
「あ?何だ?」
「俺たちはお前に会う前にオーガに遭遇した。だが何でこんな山にオーガがいる。お前がなんか関係してるのか?」
「ここにオーガいて何の問題があんのかよ。てかお前あのオーガ殺したのか?」
こいつ何がおかしいのか分かってないのか。
「いや殺してはない。まぁ瀕死ぐらいには追い込んだが。いやそんなことよりもだ。オーガはお前の進化前、こんな山にいていい存在じゃないぞ」
「私もよく分からないんですが、この山にオーガがいることの何が問題なんですか?」
「問題ってよりもおかしいんだ」
「おかしい??」
「さっき魔物は進化すると言ったな」
「そうですね。でさっきのオーガがジャッカスさんの進化前なんですよね」
「そうだ。ゴブリンの進化の過程はゴブリン、ホブゴブリン、オーガそして鬼人だ。鬼人になると魔物から亜人に変わる」
「亜人になると何か変わるんですか?」
「亜人は魔物に比べて知能がある。鬼人は元々のフィジカルに知能を持つことで亜人の中でも強い種族だ」
「フッ…まあ当然だな」
ボソッ…「アイリスには勝ったことない癖に」
「ア?なんか言ったか?」
「いや何でもない?話を戻すとゴブリンからホブゴブリンに進化する個体は多くはない。それなのにこの山にオーガがいるのがおかしい。魔物が進化するにはそれなりの条件がある」
「条件?何ですかそれ?」
「俺も知らねぇな」
お前は知ってろよ。てかやっぱりこいつ何も知らなかったのか。
「魔物が進化するのには生き物を殺した時に出てくる魔力を吸って成長する力を蓄える。進化すると姿形も変わる。そのために魔力が必要なんだそうだ」
「俺にはよく分かんねぇなぁ」
「まあお前はそれでもいい」
「ということはあのオーガもたくさん生き物を殺して進化したってことですよね。それが何か関係あるんですか?」
「オーガは上位種。そこまで進化するのに大量の魔力が必要になる。だがこの山にはそこまで大量の生き物や魔力が多い魔物もいる気配がない。それなのに何故オーガがいるんだ」
「確かにこの山で動物とか見かけてませんね」
「あー…難しいことは分かんねぇけどよ。それ本当の話なのか?」
「この定義は大昔から確立されてる。間違ってるなんて話は聞いたことないが」
「その話が本当ならよく分かんねぇな。あのオーガはゴブリンの頃から俺の弟子だ。アイツの面倒はずっと俺は見てきた。そんなに魔物とかは殺してはねぇ筈だが」
「どういうことだ…」
「アイツは俺がずっと特訓つけてた。アイツが積んだのは経験ぐれぇだ」
「それだとアイツが進化するのに必要な魔力が集まらないだろ」
魔物が進化するのに魔力が必要ないなんて話聞いたことないが…。
「クロードさん魔物が進化する定義は大昔に分かったんですよね」
「そうだが、それがどうした」
「大昔に分かったならもしかして今調べ直すと真実が違ったってことがあるかも知れませんよ」
「…確かに大昔に分かったことを今更調べ直す奴なんていないだろうし、もしかしたら今までの定義が違ったなんてことがあるかも知れないのか」
魔物が進化するのに魔力が必要ないとしたら進化の条件は一体なんなんだ?あのオーガはジャッカスと特訓ばかりして魔物を殺してはいない。だとするとジャッカスと特訓すること自体が進化の鍵になるのか?