16話 仲間の行方
「ハァー…。お前は昔から変わらないな。ほら傷見せろ、治してやる。水の第五呪文:ルメッドドロップ」
「お、すまんな。やっぱり魔法ってのは便利だな」
水の第五呪文は炎、水、風、地、雷、氷の六大属性魔法の中で唯一の回復魔法だ。大きな傷は治せないがこれくらいの傷なら治せるだろ。
「クロードさん!大丈夫ですか?」
「お前か。そういえば忘れてたな」
そうか。通りで姿が見えないと思ったが、隠れてたのか。こいつのことすっかり忘れて魔法を使ってた。俺も少し冷静じゃなかったな。
「もう!忘れないでくださいよ!2人が急に喧嘩始めちゃったから隠れてたんですよ」
「ガハハハハ!!喧嘩、喧嘩だってよクロードォ」
「フッ…そうだな」
「な、何で2人とも笑ってるんですか!!私怖かったんですからね」
「クロードが連れてるだけあって中々面白いじゃねぇか。お前、名前は何だ」
「そういえば私攫われたから名前も言ってませんでしたね。私、リリィって言います」
「そういえば俺が攫って来たんだったな。俺はジャッカス。クロードとは腐れ縁みたいなもんだ」
「確かに2人の口ぶりからして知り合いだと思ったけど、古い仲だったんですか」
「まぁそうだな」
「そういやぁ俺たちどのくらいの付き合いだったか?」
「俺もそんなに覚えてはないが100年以上前だったのは確かだな」
「そんなもんか。もっと昔からいたと思ったがなぁ」
「ひゃ、100年!!??クロードさんって何歳何ですか!?そもそも100年以上も生きてるんですか!?」
そういえば、人間は100年も生きないのが普通だったな。人間は短命って忘れてた。
「魔族は人間と違って長い時を生きられる。1000年生きるやつもいるな。まぁ魔人であまり年齢は関係ないからな。覚えてるやつの方が少ない」
「1000年…規格外過ぎて言葉も出ない………」
「何だお前そんなことも知らないのか。ガキでも知ってる常識だぞ」
「ううぅ……。すみません…。私外のことあまり教えられてないので分からないことが多いんです」
「外のことすら知らなかったのか」
「私が知ってるのは生きるために必要なことと、両親の命の恩人のことぐらいですね」
こいつの両親は外のことを何も教えてないのか。こいつは森の外に出たこともないと言ってたな。こいつの両親は相当自分の子供を外に出したくなかったのか。実際こいつの兄は行方不明だ。家にも謎の結界魔法が張ってあった。こいつの両親は何を考えてたんだ。
「はーん…世間知らずってことか」
「うぅ…。まぁそういうことです」
「ガハハハハ!そりゃぁ大変だなぁ」
「そんなことよりもジャッカス」
「そんなことより!?」
「キリアとローザの行方は知らないか?特にキリアの行方を知りたいんだが」
「チビと蛇女かぁ?お前が知らねぇなら俺も知らねぇよ。そもそもチビに関しちゃ最後に全員で集まった時にもいなかったじゃねぇか」
「そうか。お前も知らないか…」
「そういやぁあの時メイもいなかったなぁ。2人で駆け落ちでもしたんじゃねぇか。ガハハ!!」
「フッ。あのキリアが駆け落ちするとは思えないがな。まぁそれはいいとして、噂話でも聞いたことないか?」
「俺はお前らと別れてから人里には近づいてねぇからな。噂話の1つも聞かねぇよ」
ジャッカスも何も知らないか。何か知ってればよかったがそう上手くはいかないか。
「あのクロードさんローザさんとキリアさん、メイさんって誰ですか?クロードさんの知り合い?」
「まあ知り合いみたいなものだ。こいつらに会えれば力になってくれると思うが」
「特にキリアさんって人に会いたいみたいですけど」
「キリアは昔から頭が働く。こいつなら王都に入り込む策を思いつくと思ってな」
「成程…。じゃあキリアさんって人を探すのが良さそうですね」
「そうだな。そのためにもまずは街とかで情報を集めたい」
とりあえずの目標はキリアを探すことだな。キリアなら王都に入り込む策があるはずだ。それにアイリスが封印された後、城を脱出した俺はジャッカス、ローザとあったがキリアとメイには会わなかったことが気がかりだ。キリアは屍人だから簡単には死なないはずだが。もしアイツに何かあったら王都に入り込む策が無くなる。無事ならいんだが。
「そもそもお前何でこんな山にいるんだ。10年間ずっとここにいたのか?」
「俺の姿は人間の世界じゃ目立ちすぎるからなぁ。山に篭ってた方が色々便利なんだよ」
「まあその角は目立つからな」
「確かにそうですね。私も一目見た時に人間じゃないってわかりました」
「そういうことだ。俺はクロードと違って姿を隠せるローブは持ってねぇし、変身魔法も使えねぇ。なら騒ぎにならねぇよう山に篭ってたてことだ。俺たちは追われる立場だからなぁ」
俺たちは魔王軍の生き残り。それも俺とジャッカスは四芒星、魔王直属の親衛隊。もし生きてると知られたら国直属の兵隊たちが送り込まれるはずだ。人間の国は人間の庭。俺たち魔族には不利だ。
人間たちに宣戦布告するためにはこっちにもそれなりの準備が必要だ。俺も角を折られ弱体化してる。10年前の角を折られてない全盛期の頃にも俺は人間に負けた。しかも俺の角を折ったのは勇者でもないやつだ。俺は勇者の顔は知らないが、俺の角を折った奴の顔は今でも脳裏に焼きついてる。
「ジャッカスさんは魔法使え無いんですか?それにクロードさんのそのローブもなんなんですか?フードを被ると角が消えますし」
「俺の種族、まぁ遡るとゴブリン系列の種族は魔法を使えねぇ代わりに身体能力が優れてる種族なんだとよ。ま、俺も詳しいことはよくわかんねぇがな」
「自分の種族のことくらい把握しとけ。俺のローブはさっき言ったキリアって奴の発明品だ。フードを被ると見た目を隠す魔法がついてる」
「私も難しいことはよくわからないですけど、そのキリアさんって凄い人なんですね。でも何でクロードさんはそんなもの持ってるんですか?ジャッカスさんは持って無いんですよね」
「あぁ俺は昔に人間の国に行き来することがあったからな。その為にキリアに作ってもらった」
「クロードさん昔にも人間の国に行ってたんですか?なら人間の国ついても知ってるはずじゃ…」
「人間の国って言っても魔族と人間の国の境目のど田舎だ。王都近くの方は全く知らない」
アイリスが人間の国に興味があってその付き添いに俺もついて行った。魔王があまり都市部の方に行くのは流石にまずいからな。行くとしても魔族の国と人間の国の境界線ギリギリの村。村と言ってもいいのかわからないほどの廃れた村だった。だから王都付近の街などについてはあまり詳しくは無い。だからこうして人間を連れてるんだがまさかこいつも街について詳しく無いのは想定外だった。まぁそれ以外でも利用価値はあるがな。