14話 再会
「離して!!」
オーガの氷が割れたと思ったら、後ろから急に誰かに捕まった。今は小脇に抱えられながら木と木をぴょんぴょん跳び移ってる。何で私がこんな目に…。
「ちょっと誰なんですか!離して!!」
「喋るな。舌を噛むぞ」
「ム…」
顔を後ろの方に向けられてるから男の人の顔はここから見えないし、私とは喋る気もなさそう。ここで暴れても落とされるかもだし、ここは大人しくはしてた方が良さそう。地面に降りたら暴れて逃げてやる。でもこの人結構足速いよね。私の足で逃げ切れるかな?
「よっ」
「キャア!」
木から飛び降りて足を止めた。どうやらここで走るのは終わりっぽい。逃げるならここしかない!
「離して、離して!!!」
「オイ暴れるな」
嘘でしょ、ビクともしない。これじゃあ逃げるどころじゃない。どうしよう……。
「大人しくしてれば殺しはしない」
「…はい」
どうしよう、このままじゃ何されるか分からないし。でも大人しくしてれば殺されないんだよね。クロードさんどうしてるんだろう。オーガは氷破っちゃったし、きっとクロードさんだから大丈夫だよね。
「よっ。大人しくしてろ」
やっと地面に降ろされた。地面に足がつく安心感を覚えて腰を下ろす。色々なことがありすぎて少し疲れちゃった。そういえば今なら顔見えるかも。
「その角、もしかして…」
「なんだ何か文句でもあんのか」
「いや、そういうことじゃなくて」
見上げて顔を見ると額に一本の角が生えて耳がとんがってた。クロードさんと同じ魔族?いやそうだよね角が生えてる人なんて聞いたことないし。でもクロードさんは耳がとんがってないし違う種族なのかな?
「お前」
「へ?な、なんでしょう…」
「お前アイツとどんな関係だ」
「アイツってクロードさんのことですか?」
「そうだ」
この人クロードさんと知り合い?同じ種族だしいてもおかしくは無いよね。でも何で私を攫って来たんだろう。知り合いなら直接話せばいいし。
「私とクロードさんの関係…」
こう言われるとなんだろう?相棒…では無いし。
「一緒に旅をしてる、仲ですかね?」
「ただの人間が?」
「ヒュッ」
何この感じ…。全身に鳥肌がたって背中に冷や汗が流れる。私を見る目が今にも殺してしまいそうで怖い。あの魔獣に襲われた時よりも命の危険を本能を感じている。
「俺がお前を攫って来たのは、あの野郎が何で人間のお前を連れているかだ。内容によっちゃぁお前もあの野郎も殺す」
「ころ、す…何で」
「人間は俺たち魔族を殺した。殺されたって文句は言えねぇだろ」
「それじゃあ私達人間と変わらないじゃないですか」
「アァ?」
「最初に魔族を殺したのは人間かもしれません。でもそれで魔族の人達が人間を殺したら、人間はまた魔族を殺します。負の連鎖は続いて殺し合いは続きます」
「なら、俺達はどうすりゃあいいんだ。仲間を殺されて見て見ぬ振りすりゃあいいってことか」
「それは、分からないです…でも種族で見るんじゃなくてその人を見てあげてください。それでその人がどうしようもない人だったら、私は何も言いません。他人の事情にあまり首を突っ込むものじゃないので」
多分魔族の人は人間を恨んでる。人間の私を側に置いてるクロードさんが稀なんだ。それでもクロードさんの中に人間を恨んでる心があるのかもしれない。なにか思惑があって私を連れているのかもしれない。でもそれでもいい。私だって悪く言えばクロードさんを利用してお兄ちゃんを見つけようとしてる。
「人間に説教される筋合いはねぇ」
「そうですよね。でも何で私を攫ったんですか?私とクロードさんの関係を知りたかったらわざわざ攫わなくてもいいじゃないですか」
「お前を攫えば本気のアイツと戦れるかも知れねぇ」
「戦う?何で戦うんですか」
「人間に言う必要はねぇ」
「そうですか…」
この人クロードさんと仲が悪いのかな…。私はクロードさんのことよく知らないし、この人がクロードさんとどんな関係なのかも知らない。でもこの人きっと強いよね、筋肉すごいし。
ガサガサッ!
「!来たか。随分速かったな」
「ハァハァ…。やっと追いついたぞ」
「クロードさん!!」
クロードさんが来てくれた!良かった、パッと見た感じ怪我はしてなさそう。それにしても別れてから30分位だよね、速すぎない?あれからオーガを倒して私を追って来てくれたのかな?
「よぉ。久しぶりだなぁクロード」
「何の真似だジャッカス」
「10年振りの再会の一言がそれかよ」
やっぱりこの2人知り合いだったんだ。でもあんまり仲は良くなさそう。2人の間に険悪な雰囲気がながれてる。
「御託はいい。さっさとそいつを離せ」
「そんなに人間を助けたけりゃ俺と戦え」
「お前と戦う理由はない。時間の無駄だ」
「ならこいつは返さねぇ。そもそも何でお前が人間を連れてる。どっちかといやぁお前は人間嫌いな方だったろ」
クロードさん人間嫌いなんだ…。でもそうだよね。自分の仲間を殺した人たちを好きになるのは難しいよね。
「人間にしかできないことがある。俺はこいつを利用しているだけだ」
「利用ねぇ。もしかしなくてもお前、まだアイリスに執着してるのか?」
「なんだと?」
「アイツは死んだ。いつまでアイツに執着してる」
「アイリスは死んでない。封印されただけだ」
「それがなんだ。封印を解く手でもあるのか?ねぇだろ!ならアイツは死んだも同然だ」
「お前、少し黙れ」
クロードさん怒ってる…。きっとアイリスさんが死んだって言われたのが相当頭にきたみたい。今にも2人が喧嘩始めちゃいそう。いや喧嘩ですむかな…。でもこの2人の間に割って入るのも怖いし。
「やっとやる気になってくれたか」
「お前にのせられたのは癪だが、俺は今お前を一発殴りたい気分なんだ」
「いいぜいいぜ!やろうぜ!!」
「生憎だが手加減できないぞ」
「構わねぇ!本気のお前と一発戦いたかったんだ!!」
だめだ本格的に戦いが始まっちゃう。クロードさんも完全に頭に血が上って冷静じゃない。このままじゃ私も巻き込まれるかも知れない。もう2人を止めるのは私じゃ無理だ。急いでここを離れないと。