117話 その生き様
「もう夜か…ティターニア様のところに行かないと」
夕食を食べ終わって片付けも終わった後私は家の外で魔法の練習をしてた。何度も練習したおかげで最初は手のひらぐらいの枝から腕ぐらいの大きさの枝ぐらいまで引きつけられるようになった。
「リリィ様?そろそろ外も冷えるので中に入られた方がよろしいですよ」
「あ、メイさん。えっと…私ちょっと散歩してくるのでヴァイスのことお願いします」
「そうですか?暗くて足元も危ないので気をつけてください。あ、そうだランタンお持ちしますね。明かりがあった方が安心ですよね。少し待っててください」
「あ、メイさん!」
ティターニア様のところへ行こうとしたところでメイさんに呼び止められた。メイさんはそのまま一度家へ戻ってランタンを持って戻ってきた。わざわざ申し訳ないなぁ…。
「これ魔力を注ぐと光がつく魔道具なんです。暗い夜でも明るく照らしてくれるので安心ですよ。是非使ってください」
「え、こんないいもの使っていいんですか?」
「はい。キリア様にも言ってあるので大丈夫ですよ。戻ってきたら返してもらったらいいので」
「もちろんです!貸してくれてありがとうございます。大切に使いますね」
「気をつけてくださいね。魔物はいませんが魔獣は稀にいますので」
「魔獣いるんですか?」
「魔石はこの森にもあるので。稀に動物が魔石を食べてしまって魔獣になってしまうんです。もし魔獣がいてもすぐに精霊の皆様が対処してくれるので大丈夫だとは思いますが」
この森にも魔獣いるんだ。この森魔力感じにくいからもし急に出てきたら怖いな。一応警戒しておこう。
「そろそろ私行きますね」
「暗いのでお気をつけて。足元気をつけてくださいね」
「ありがとうございます。いってきます」
メイさんにお礼を言って暗い森の中へ入っていく。メイさんに貸してもらったランタンに魔力を流すとランタンに光が灯った。ランタンの光を頼りに森の中を歩いていく。メイさんにランタンをかりられてよかった。結構暗かったからランタンがなかったら結構困ったかも。後でちゃんとメイさんにお礼を言わなくちゃ。
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「やっと着いた。命の樹…」
暗闇の中をランタンの光を頼りに歩いていってようやく命の樹に辿り着いた。命の樹の周りは蛍たちが舞っててランタンがなくても大丈夫そうだ。
「ティターニア様、リリィです」
「おぉリリィか。ようやく来たか。待ちくたびれたぞ」
「ごめんなさいティターニア様。お待たせしました」
ティターニア様の名前を呼ぶと命の樹の中から出てきた。何度見ても慣れる光景じゃないなぁ…。
「冗談だ。そんなに待っていない。道中暗かったろう。怪我はないか」
「はい。大丈夫です。それより話ってなんですか?」
「あぁそうだったな。リリィにとって大事な話だ」
「私にとってですか?」
「リリィの兄、ダリアについてだ」
「お兄ちゃんのこと知ってるんですかティターニア様!!」
「あぁ。全て知っている」
ティターニア様がお兄ちゃんのこと知ってる!やっとだ…やっとお兄ちゃんがどこにいるのか知れる。まさかこんなところで知れるなんて思ってもいなかった。だけどようやくだ。ようやくお兄ちゃんに会えるんだ……!
「教えてください!!お兄ちゃんが今どこにいるか!!」
「だが、本当にいいのか?」
「ど、どういうことですか」
「リリィ、私は全てを知る覚悟があるのかと聞いているのだ」
「全てを知る…覚悟…?」
「答えがリリィの求めるものではないかもしれないということだ。たとえその答えが残酷なものだとしてもリリィはそれを受け入れるはあるか?」
「…………」
残酷なもの……。それでも私はどうしてもお兄ちゃんに会いたい。覚悟なんて森を出た時からできてる!!
「覚悟、できてます!!私お兄ちゃんに会うためにここまで来たんですから!」
「そうか……。なら着いてくるといい。ダリアに会わせてやろう」
「え…会わせる?お兄ちゃんここにいるんですか!?」
「着いてくれば分かる。話はそれからだ」
ティターニア様が歩きだして私はその後を着いていく。ティターニア様の周りに蛍が沢山飛んでるから明かりいらずだ。しかもティターニア様の歩いた場所の草木がどんどん生い茂っていく。蕾だった花もティターニア様が近くを歩いたら花が咲いていく。そんなこと関係なくティターニア様はどんどん先に進んでいって暗い森の方へ進んでいく。私もその後を追って森の中へ入っていく。
「ティターニア様どこに向かってるんですか?」
「行けば分かる」
「向かってるところにお兄ちゃんがいるんですか?」
「そうだな。今は黙って着いてくるがいい」
ティターニア様はどんどん暗い森の奥へ進んでいく。なんだかこの辺りは他の場所と違って雰囲気が違う。この辺りは寒気がする。ただの寒いじゃなくて身体の芯だけが凍えるような不思議な感覚だ。
「そういえばなんでわざわざ夜に私だけ呼び出したんですか?キリアさんたちがいる時に話してくれればよかったなのに」
「キリア・ヴィンセントの前で話すのはリリィにとって都合が悪いからな。だからリリィ1人で夜に来てもらったのだ」
「都合が悪い?なんでですか」
「それも後で話す。全てを一気に話せば混乱するだろうからな」
混乱?私が混乱するぐらいの話をするつもりなの?一体何を話すつもりんだんだろう。
「あぁもう着いたか。リリィ着いたぞ」
「ここは……」
ティターニア様が足をとめた。ここが目的地?なんだか霧が多くて不気味な雰囲気。さっきよりも不思議な寒気が強くなった。思わず身震いしてしまう。今にも幽霊が出て来そうな雰囲気だ。
「ティ、ティターニア様。こ、ここは何処ですか?」
「ここは魂の墓場。なぁに安心しろ。幽霊は出ない」
「そ、そうですか…でもなんでこんなところに連れて来たんですか?」
「それも後で話そう。おい、ハデス!ハデスいるか!」
「なんでしょうかティターニア様」
「うわぁ!!!だ、だれ!?」
ティターニア様が誰かの名前を呼ぶと暗闇から急に人が現れた。燭台を持っていて蝋燭の火が生気のない顔をぼんやりと照らして急に現れたのもあって凄く驚いちゃった。長い前髪に黒いシルクハット。真っ黒なロングコートを肩に掛けて靡かせてる。ハデスってこの人?ティターニア様も魔力が凄いけど、この人も負けず劣らず凄い魔力だ。
「あぁこの人がリリィか。やっと来たんだね」
「そうだ。呼んできてくれないか」
「分かっていますよ」
な、なんだか私が知らないところで話がどんどん進んでいってる。ハデスさん?はまた姿を消してしまった。落ち着いて周りを見てみると辺りにはお墓が沢山ある。不気味な雰囲気もあって本当に幽霊が出てきそう。ティターニア様は出ないって言ってるけど本当に出ないんだよね…。
「あ、あの……」
「あぁそうだな。では全て話すとしよう。もう一度聞くが本当にいいんだな」
「は、はい……」
ティターニア様が真剣そうな顔でもう一度私に問いかけてくる。思わず返事をしちゃったけどなんだか凄く嫌な感じがする。全身の産毛が逆立ってこれ以上聞くなと警告してくる。でもティターニア様に覚悟はできてると言った手前もう後戻りはできない。
「お前の兄ダリアだが10年前この精霊の森へ来た」
「そ、そうなんですか!?でもなんでお兄ちゃんがここに来たんですか!?」
「ある目的を果たしにここへ来たのだ」
「目的?」
「魔王を倒す為聖剣をここへとりに来たのだ」
「は…?ま、魔王を倒す?聖剣?な、なんでお兄ちゃんがそんなことを?魔王を倒すってどういうことですか!!」
「ダリア……ダリア・ペンドラゴンは勇者だったのだ。そして10年前の大戦でダリア・ペンドラゴンは魔王アイリスを封印しサナティクト王国に勝利をもたらしたのだ」
「お兄ちゃんが…勇者……?な、なんで?私たち家族はなんてことない普通の家族!勇者なんて大層な称号なんて関係ありません!それにお兄ちゃんの名前を出しても街の人たちは誰も勇者だなんて言わなかった!」
「それは偽名を使っていたからだな。勇者の時の名はダンテ。ダリアの名で人に聞いても誰も知らないはずだ」
「それにお兄ちゃんが魔王…アイリスさんに勝ったならなんで私の元に帰って来てくれないんですか!!」
「それはだなリリィ・ペンドラゴン。ダリア・ペンドラゴンは10年前の大戦後死んだからだ」