114話 命の樹
「じゃあメイさんは小さい時からキリアさんたちといたんですね」
「そうだね。でもさっき言ったけど12年ぐらい僕は城から離れてたからちゃんと話してたのはここ数年だけど」
メイさんはアイリスさんに拾ってもらったことから今までのことを全部話してくれた。メイさんは少しだけど魔法も使えるらしい。でも魔法よりも体術の方が得意らしい。み、見た目にそぐわずパワフルだ…。体術はジャッカスさんに習ってたらしくて師匠と呼んで慕っているらしい。
「あ、そいえばなんで2人はこの森にいるんですか?ここって珍しい場所なんですよね。わざわざここに来るってことは何か特別な理由があるんですか?」
「それは…」
「えっと……」
2人とも急に口篭ってしまった。もしかして聞きにくいこと聞いちゃったかも。気になったことをすぐに口に出しちゃうのよくないよ私…。
「すみません!言いづらいこと聞いてしまって…」
「まぁいつかは話すよ。クロードが目覚めた時にでもね」
「そう、ですね。いつかはお話ししないといけないですもんね」
「そうですか…それにしてもクロードさんよくなるんでしょうか」
「癒しの泉に治せないものはないから大丈夫さ。だけどいつ目覚めるかは分からないかな。1週間かそれとも1年か…」
「そうですか…」
「クロードの心配してくれてありがとう。きっとすぐに目を覚ますさ」
「ワン!」
「ヴァイス…そうだよね。きっとすぐに目を覚ましてくれますよね!」
「そうだね。おっともう日が昇りそうだね。ここに来るまで疲れたでしょ。少しでも休みな。ここを貸してあげるから」
「い、いいんですか?」
「ベットあるんだけど僕たちは使わないし綺麗なままだから大丈夫さ」
「そしたら私は準備してきますね」
「じゃ、じゃあお言葉に甘えさせてもらいます」
「寝室に案内しますね」
メイさんに案内されて窓の外を見ると太陽が少し見えてきて空が明るくなり始めてる。さっきまでずっと気を張り詰めてたからなんだか安心してきて一気に眠気が襲ってきた。あ、だめだ…欠伸がでる……。
「ふわぁ…あ、すみません」
「大丈夫ですよ。流石に眠いですよね。すぐにベットメイキング終わらせるのでゆっくり休んでください」
「色々とすみません…ここにきてからお世話になりっぱなしですね」
「いえ。私はお世話をするのが仕事ですから気にしないでください。こちらが寝室です。少し待っていてください」
寝室についてベットのそばにあった1人がけ用のソファに腰をかける。ソファの近くにヴァイスも座ってその頭を撫でる。ヴァイスもずっと外にいたからかちょっと毛がゴワゴワしてる気がする。それにちょっと汚れてる。今度洗ってあげてブラッシングしてあげないと。
「ベットメイキング終わりました。お待たせいたしました。ゆっくりおやすみください」
「ありがとうございます。メイさんもおやすみなさい」
「はい。おやすみなさい」
メイさんが寝室を後にする。眠気が最高潮になって意識も朦朧としてきた。なんとか土や色々な汚れがついた服を脱いでベットに倒れこむ。
「おやすみ……ぐぅ…」
****
「アルバ、生きてる…?」
「はい……なんとか…」
「よかった…はぁ…魔力殆どすっからかんよ」
リリィちゃんを精霊の森に送り届けてから朝日が昇るまで追ってきたエルフたちと戦い続けた。なんとか追っ手のエルフたちを全員追い払うことができた。月が沈みかけた頃にはもうエルフたちは諦めて追っ手を送ってこなくなった。今は凍った海の上に寝転んで身体を休めていた。
「ず、ずっとここにいる訳にもいきませんけど魔力ももうないので移動魔法も使えません……」
「えっとちょっと待ってなさい。どっかにあったはず……あったわ!」
「な、なんですかそれ?」
上着の内ポケットに入れておいた試験管を取り出す。試験管の中には黄緑色の液体が入ってる。試験管のコルクを抜くとポンといい音がなる。
「もしもの為にと用意しておいた魔力増幅薬よ。飲んだ後の反動はすごいけど、今はこれを飲むしかないわね。移動魔法を使うほど魔力を回復するまで待っていられないもの。それにこの氷もいつ溶けるか分からないし」
魔力増幅薬は少ない魔力でも一気に魔力を増幅させる薬。効能が凄い代わりに服用した後の後遺症が凄いのよね。もともとの魔力の器を超えて魔力を増幅させるから仕方ないのよね。
「そ、そうかもしれませんが…そ、その反動凄かったはずですよね。だ、大丈夫ですか?」
「大丈夫、ではないわね…。この後のことはキリアに任せるわ」
「うぅ…せ、責任重大ですね…。で、ですが任せてください!」
「頼もしいわね。それじゃよろしく!」
アルバに後のことを全部任せて薬を一気に飲み干す。この世のものとは思えない味が口の中に広がっていくのと同時にカラカラになっていた身体に魔力がまた巡っていく。
「あ〜……苦っ…良薬は口に苦しよね。さ、帰るわよ」
「は、はい!」
アルバの手を握って移動魔法を発動する。ここからトレイダ街の屋敷まで一気に魔法で移動したから補充した分の魔力殆ど使ってしまった。アルバと一緒に肩を組んで足元がフラフラになりながら屋敷の中に入る。屋敷の中に入るとみんなが私たちを出迎えてくれた。まだ日が昇ったばっかりなのにまだこんなに起きてる子がいるなんて。それに殆ど夜型のはずなのに。
「ローザ様キリア様おかえりなさいませ!」
「ご無事ですか!?」
「あぁ!こんなにボロボロで!すぐに手当を!」
「誰か回復魔法を使えるやつ呼んでこい!」
屋敷に着くなりみんなに囲まれる。ボロボロになった私たちを見て回復魔法を使える人を探して大騒ぎ。確かに戦いで魔力を使い過ぎて回復にまわす魔力がなかったから全身切り傷に打撲だらけ。これくらいならゆっくり寝て魔力が回復するのを待てば全然大丈夫なのに。それにうちには回復薬もあるのにね。
「ロ、ローザ様反動はまだ大丈夫ですか?」
「えぇ。反動がくるのは恐らく1時間後くらいね。それまでは大丈夫よ」
「は、反動がきたらすぐに言ってくださいね。す、すぐにサポートするので」
「分かったわ。心配性ね」
「ローザ様!キリア様!回復魔法を使える者を連れて来ました。すぐに回復します!」
駆けつけて来た魔人の子にキリアと一緒に傷を癒してもらう。腕や脚、顔に負った傷がどんどん癒えていく。回復魔法を使える人は多くはないけど貴重なのよね。簡単な傷なら簡単に治せる人は多いけど深い傷を治せる人はもっと貴重なのよね。
「今治せるところは治しました。俺が治せるのはここまでです。後は自然治癒で治していくしかないです…」
「いいのよ。ここまで治してくれればすぐに治るわ」
「力不足で申し訳ないです…」
「私は疲れちゃったか自室に戻るわね。みんなもちゃんと休みなさいね〜」
「ぼ、僕も戻ります。み、みなさんもありがとうございました」
みんなにお礼を言ってから自室に戻ってベットにはいる。前に一回だけ魔力増幅薬を使ったことあるけどあの時は酷かったわ…。頭痛、目眩に発熱。全身は筋肉痛の様な痛み。結構酷いものなのよね。あの時は一日中ずっと寝てたわ…。
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「ふわぁ…よく寝た……」
ベットから起き上がって身体をのばす。昨日は走ったり戦って疲れたからぐっすり眠れた。最近はたまに変な夢も見るからちょっとだけ疲労感が残ってたんだよね。久しぶりのベットだったし残ってた疲れも全部とれた気がする。
「くあぁ……」
「ヴァイスおはよう。よく寝れた?」
「ワン!」
「ヴァイスもよく寝れ手よかった!さて、私は着替え着替えっと。あ、だいぶ汚れちゃってる。それにほつれも。あちゃー…裾破れちゃってる」
裁縫道具持ってないから直そうにも直せないからなぁ…。メイさん持ってないかな?後で聞いてみよう。ずっと着てたし森の枝とかに引っ掛けて破けちゃったからなあ。そろそろ替え時かも。でもここに服を売ってる訳ないし、とりあえず直して着るしかないかな。
「うーん…相変わらずの寝癖…。憂鬱だなぁ……」
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「おはようございます。キリアさん、メイさん」
「おはようございますリリィさん。お食事のご用意ができていますのでご一緒にどうですか?」
「是非!ありがとうございます」
「起きたばっかりなのに元気だね。よく眠れたのかい?」
「はい。それはもうぐっすりです」
「ワン!」
ぐっすり寝過ぎてお昼前になっちゃった。寝たのが日が昇るぐらいだったとはいえ流石に寝過ぎちゃった。キリアさんとメイさんはもう起きててキリアさんは読書をしながらテーブルでコーヒーを飲んでた。この森コーヒー豆あるんだ。植生もよく分からないからもしかしたらコーヒー豆もあるのかな。
「それはよかった。今日は何かする予定はあるかい?」
「いえ特には。強いていうなら散歩ですかね。この森のこともっと知りたいので」
「そうか。実は君に会わせたい人がいるんだ。よかったら僕が森を教える代わりにその人に会ってくれないかな」
「会わせたい人ですか?私は大丈夫ですよ、キリアさんが森を案内してくれるなら心強いです」
「それならよかった。実は君が寝た後にその人が訪ねてきてね。結構びっくりしたよ。その人はここからそこそこ離れてるからこれを食べたら出発しよう。メイ、君も一緒にどう?」
「そうですね。私もご挨拶したいですからご一緒します」
「じゃ、そういうことで」
テーブルの席についてメイさんが用意してくれた食事を頂く。フレンチトーストにサラダにフルーツの盛り合わせ。そしてメイさんが淹れてくれた美味しい紅茶。この茶葉もこの森でとれたのかな。それにメイさんが淹れてくる紅茶は凄く美味しい。ついおかわりしてしまった。フレンチトーストも甘さが程よくて焼き加減も絶妙。サラダもフルーツも瑞々しくて今まで食べた野菜やフルーツの中で1番美味しかった。
「フルーツ凄く甘くて美味しかったです!この森で採れたんですか?」
「そうですよ。この森は魔力が通常の森よりも何倍も濃いので魔力が植物に良い影響を与えるんです。だからこの森で採れる野菜や果物はとても美味しいんです」
「なるほど…それじゃあ普通の森でも魔力を注げば美味しくなるんですかね?」
「いいところに目をつけたね。実は育成段階で通常より多い魔力を注ぎこめば植物に良い影響を与える研究結果があるんだ。その代表例がマナットっていう果物なんだけど」
「あ、知ってます!前に食べたことがあります」
「知ってたんだ。まぁ結構どこにでもある果物だからね。マナットは一気に魔力を注ぎ込まないと酷い味でね。普通の環境下だと未成熟なままなんだ。人の手が入らないと不味い果物っていう面白い果物でね。実は昔僕がマナットの研究をしてこの特性を見つけたんだ。あはは自慢みたいになっちゃったね」
「え、凄いじゃないですか!!」
「私がまだ子供の頃の話ですね。懐かしいです」
「メイさんが子供の頃の話ですか。じゃあ10年ぐらい前のことですか?」
「いや、20年ぐらい前だった気がするけど…メイ、どうだったっけ?」
「私が5歳の頃なので…そうですね。20年以上前の話です」
「え、じゃあメイさんって25歳くらいなんですか?ん?でも前は18歳だって……」
「あ、あ!しょ、食器預かりますね!私洗い物してきます!」
メイさんが私が食べ終わった後の食器を下げて慌てて洗い場の方へ行ってしまった。何か誤魔化してるような気がするけど、あんまり深く聞かない方がいい様な気がする。前も何かを隠してたけどいつかは話すって言ってたからメイさんから話してくれるのを待ってよう。
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「それじゃ準備ができたし行こうか。目的地はここから遠いしだいぶ歩くけど大丈夫?」
「森は歩き慣れてるので大丈夫です!」
「目的地は命の樹ですよね。森の中央ですから確かに遠いですね」
「ここは森の外れの方ですもんね」
「それじゃあ行こうか」
「ワン!」
キリアさんとメイさんと一緒に森の中央の方へ向かう。空気が澄んでて呼吸が気持ちい。私の家の森よりも自然が溢れてて空気も綺麗だ。ヴァイスも嬉しそうにしてる。ヴァイスと出会った時も森だったからヴァイスも森に住んでたのかな。
「ヴァイス、空気が美味しいね」
「ワン!」
「精霊の森は人の手が全く入っていませんから空気が澄んでいるんですよね」
「精霊の森って誰も来ないんですか?一応満月の日には入れるのに」
「普通の人間は入れないよ。入ろうとしたらエルフたちに邪魔されるし。僕たちも森に入る時は苦労したよ」
「キリアさんたちはどうやって森に入れたんですか?私たちは強引に入った感じなので」
「あぁ…ローザだからか……相変わらず脳筋だね。僕たちは透明魔法と魔力を隠すローブで森になんとか入ることができたんだ」
「透明魔法は透明になる魔法なのは分かりますけど、魔力を隠すローブ?クロードさんが着てたやつですか?」
「クロードのは姿を人間に見せるローブで僕のは魔力を隠すローブなんだ。クロードのローブは僕が作ったんだけど、その改良版が僕の魔力を隠すローブなんだ。自分で魔力を隠すのには限界があるし完全には隠しきれない。僕のローブなら着るだけで完全にローブを隠すことができるんだ」
着るだけで魔力を完全に隠せるなんて凄い!私たちがエルフの里に潜り込んだ時は魔力を隠しても完全には隠しきれなかったし、最終的にはエルフにバレちゃったからキリアさんのローブがあったらもっと楽だったんだろうな。
「そういえば前にクロードさんが言ってた気がしますね。クロードさんキリアさんに会いたがってましたよ。キリアさんなら王都に入り込む策を思いついてくれるかもって言ってました」
「なるほどね。まぁなんとなくは分かった。それにしてもクロードはアイリス様の為にあそこまで体を張って…凄いな」
「そうです。その為にクロードさんは自分の身体を犠牲にして……」
「クロードはアイリス様を助ける手掛かりでも見つけたのかい?」
「実は…その……言いづらいんですけど…」
「そんなに言いづらいことなのですか?」
「いいよ。どんなことでも受け止められるから」
私は少しずつこれまでのことを話した。アイリスさんの分かれた身体は改造されサナティクト王国の竜の騎士団の団長たちにそれぞれ移植されていることなどを全部話した。話していく内に2人の顔はどんどん険しい顔になっていった。当たり前だ。私も話を聞いた時は少し吐き気がしてしまった。2人はアイリスさんと長く一緒にいたんだからこうなるのは当然だ。
「なるほど……。僕が今まで知ってる中でトップを争うほどの悪行だ。吐き気を催すほどのね」
「そんな……アイリス様がそんなことになっていたなんて…!」
「その騎士団の研究者はなかなかのマッドだね。僕も昔はそっち方面の研究をしてたけど…その研究者と一度話をしてみたいものだね」
「アイリス様の身体を2つ取り戻していただいたんですよね」
「はい。クロードさんとローザさんが取り戻してくれたんです。右脚と左腕を。その2つは今ローザさんが預かっているので大丈夫だと思います。ローザさんがいる場所は他人には気づかれないと思うので」
「ローザなら安心だね。1回みんなと合流したいな。情報を共有したいし」
「そうですね。私もローザ様とお師匠様に会いたいです」
「僕的にはジャッカスはどうでもいいんだけど…」
「もう駄目ですよ。お師匠様だってキリア様に会いたいと思ってるかもしれないですよ」
「絶対思ってないと思うけど…。まぁいいや。リリィ、ローザとジャッカスがどこにいるか知ってるのかい?」
「ローザさんは確かジュナイダー王国ってところに向かうらしいです。ジャッカスさんは私たちが会ったところを離れていろいろなところをまわりながら武者修行するって言ってたので、私でもどこにいるのか分からないんですよね」
「ジュナイダー王国か。確かにその国なら安心できるね。
ジュナイダー王国…ローザさんに聞いてからどこかで聞いた気がしていてどこかで引っ掛かってる。うーん…どこかで聞いた気がするんだけどどこだったっけ?
「ジュナイダー王国…どこかで聞いた気がするんですよね……」
「ジュナイダー王国は獣人の国なんだ。独自の文化を築いていて、ジュナイダー王国はウォルトカリアとの友好国で昔から仲がいいんだ。だからジュナイダー王国ならローザを匿ってくれると思うから安心できる」
「私も小さい頃アイリス様たちと一緒にジュナイダー王国に遊びに行ったことがありましたね。本当に人の姿に動物の耳や尻尾がついていて幼いながらに感動しましたね」
「あ!思い出した!ヒスイ街のお店で聞いたんです!だからどこかで聞いた気がしたんだ」
ヒスイ街の調味料店で聞いたのを思い出した。あのお店で見た醤油っていう調味料を作った国だったっけ。獣人かぁ。初めてジュナイダー王国のことを聞いた時から獣人に一目見てみたかったんだよね。ここに来るまでにエルフも初めて見たし、私の知らない種族が沢山いて本当に外の世界は面白い。本当に森の外にでて来てよかった。でも本来の目的のお兄ちゃんの行方は一向に分からないのだけは気がかり……。
「そしたら僕たちもジュナイダー王国に向かおう。クロードが目を覚ましたら一緒に行くかい?」
「いいんですか!あ、でもクロードさんに聞かないとですね」
「まぁそのことは後で考えようか」
「そろそろ命の樹に着きますね、お話をしていたらあというまでした」
「そういえば私に会わせたい人って誰なんですか?」
「それは…まぁ会ってから紹介するよ」
「?分かりました。いったいどんな人なんだろうねヴァイス」
「ワフ?」
キリアさんたちと話しながら歩いていたらいつの間にか目的地についた。森の中央だからかキリアさんたちの家が会った場所より辺りの魔力が濃くなってる。辺りの植物も更に大きくなって神秘的な雰囲気になってきた。
「他の樹に比べて特段大きな樹がありますよね。あれが命の樹です」
「あれが…凄いですね…。樹齢何年ぐらいなんだろう」
「神話によるとこの世界が生まれた時から存在してるらしいよ。だから樹齢うん千年ってことだね」
「す、凄い…」
命の樹に向かって歩き続けるとどこからか話し声が聞こえてくる。精霊の話し声かな。耳を澄ますとその話し声に私の名前が出てきてる。なんだろう。私精霊に噂されるようなことしたかな?
「あれがリリィ…」
「銀髪だ…」
「珍しいね…」
「ずっと待ってた…」
待ってた?誰が?精霊が私のことを待ってたの?それに私のことを知ってるの?
「リリィ様?どうされました?」
「な、なんでもないです!ちょっと考え事をしてて」
「そう、ですか。あまり無理はしないでくださいね」
「ワフ?」
「ヴァイスも心配してくれてありがとう。大丈夫だよ」
心配するように私を見つめてくるヴァイスの頭を優しく撫でる。本当に人の感情に機敏な子だな。
「さぁ着いたよ。ここが命の樹だ」
「近くで見ると凄い迫力…」
「私も久しぶりに見ましたが相変わらず凄いです」
「周りに精霊が飛んでる。何気に初めて姿を見ました…」
命の樹にようやく辿り着いた。近くで見ると凄い迫力で圧倒される。樹の高さは他の樹に比べて何十倍も大きくて空を突き抜けそうなほど高くて立派だ。その樹の周りにはいろんな植物が根付いていて色とりどりの花が咲いていてお花畑ができてる。その花畑の周りを沢山の精霊が飛んでる。精霊は私が子供の頃絵本で読んでもらった絵に描かれてた手のひらぐらいの大きさに背中に羽が生えてる。想像通りの精霊の見た目で少し感動してしまう。
「ようやく来たかリリィ」
「遅くなってしまってすみません。お約束通り連れて来ました」
「ご苦労だったなキリア・ヴィンセント」
「いえ。僕たちをこの森においてもらっているので、その御恩です」
「わ!樹の中から女の人が!そ、それに……でっか!!!!」
どこからか女の人の声が聞こえてきたと思ったら命の樹の中から女の人が出てきた。それだけでも驚きなのにその出てきた女の人の身長が私たちよりも遥かに高い!ご、5メートル以上はあるかもしれない。薄い黄緑の髪が足首に着きそうなほどの長さでゆるいウェーブがかかってお花もところどころついてる。あまりの身長の高さでよく見えないけど綺麗な顔立ちをしてる。今まで見た人の中で1番綺麗な人だ。
「失礼。この大きさだと話しずらかったな。ちょっと縮もう」
身長が2メートルぐらいまで縮んでいく。ど、どんな身体構造してるんだろう…。女の人が指を軽く振ると木の枝が玉座の様な形になっていき、その玉座に女の人が深く座る。なんだか凄いオーラを感じる。
「えっと…」
「あぁ自己紹介がまだだったな。私はティターニア。精霊王だ。私はずっと会いたかったぞリリィ」
「私に?」
「あぁ。リリィに話したいことが沢山あるんだ」
私に話したいこと?わざわざキリアさんに連れて来てもらって精霊の王がいったい私になんのようなんだろう…。