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魔王復活目録  作者: わか3
精霊の森編
111/120

111話 2人の仲間


 スカートを軽く持ち上げながら綺麗な礼で挨拶をするメイさん。メイって何処かで聞いた気がする。えっと…前にクロードさんが言ってたけ?幻影…訳でもなさそう。じゃあ本物なの?クロードさんの仲間がこんなところにいるなんて。側にいるヴァイスを見るけど警戒してる様子はない。じゃあ本物の人間?


「ゲホッゴホッ…!ガハッ!」

「クロードさん!」

「バウッ!!」


 クロードさんの咳でハッと我にかえる。そうだ、今はそんなこと考えてる暇じゃない。一刻も早くクロードさんを癒しの泉に連れて行かないと!


「えっとメイさん!癒しの泉の場所知ってますか!?」

「えぇ勿論です。状況はなんとなく分かりました。すぐにでもクロード様を癒しの泉にお連れしなくては」

「ゴホッ!すまない…」

「大丈夫です。クロード様はなるべく喋らないでください。身体に障りますので。泉まで案内します。着いてきてください」


 クロードさんをヴァイスの背中に乗せてメイさんが先頭に立って前を歩いていく。さっきまであんなに濃かった霧がひとつもなくて視界がいい。足元は大きな木の根っこが沢山生えていて足元が不安定だ。この島は植物が大きく育っててまるで別の世界に来たみたい。木は私の何倍もあって、家の森で見た雑草も2倍以上の大きさになってる。この森は他の場所と違って魔力が沢山満ちてるから魔力が植物の成長に何か影響してるのかな。


「メイ…お前キリアと一緒にいるのか?ゲホッ…」

「はい。キリア様もこの森にいます。会わせたいのですが先にクロード様の身体を治すのが最初です。角のことも気になりますがまずは身体を万全な状態に戻しましょう」

「癒しの泉だったらクロードさんの身体はよくなりますよね?」

「はい。癒しの泉は不治の病ですら治してしまう泉なんです。たとえクロード様の身体がどんなに悪くても泉の力ならきっとよくなります」

「よかった…ここまで来て泉の力でもクロードさんの身体を治せなかったら完全に無駄足になるところだった」

「きっとよくなりますよ。それと申し訳ありませんでした。先ほども申しましたが私がもっと早く来ていれば皆様に苦しい思いをさせずに済んだのに…」


 メイさんの言葉でなんのことか思い当たる節を考える。この森に来て苦しい思いをしたことといえばあの幻影の霧のことだけどあの霧とメイさんになんの関係があるのかな?


「それってあの霧のことですか?」

「はい。あの霧はこの森にいる霧の精霊様と記憶の精霊様が森に入ってくる侵入者を追い出すためにしているんです」

「霧の精霊と記憶の精霊?」

「精霊はそれぞれ司どるものがあるのです。実体のあるものから概念そのものまであらゆるものを司っているんです。あの霧は記憶の精霊様が皆様の心の弱いところを刺激する記憶を読み取り、霧の精霊様がそれを幻影として見せたのです」

「それがあの幻影の正体だったんですか…それじゃあずっと聞こえてたあの声って…」

「おそらく精霊の皆様でしょう」

「そうだったんだ……」


 あの声の正体が精霊だと知ってちょっとほっとした。幽霊とかだったら怖かったけど精霊だったら怖くはないかも。それにしてもなんで精霊たちはメイさんが来たら幻影を見せるのをやめたんだろう。元々森にいたメイさんの仲間だと思われたから幻影を見せるのをやめてくれたのかな?


「メイ…お前、少し雰囲気変わったか?」

「そう、ですかね?」

「ゴホッ…髪が短くなったがそれだけじゃない気がする…本当に10年経ってるんだよな?」

「……もちろんですよ」

「ゴホッゲホッ…その割にはあまりにも見た目が変わってないように思うが……」

「クロード様。身体に障りますよ。さぁもう少しです。離れないで着いてきてください」


 なんだか話を逸らしたように思ったけど気のせいかな?そのままメイさんに着いていくこと数分。少し開けた場所についた。さっきまでいた場所と違って月光が差し込んできて視界が少し良くなった。


「もう少しです。こちらです」


 歩いた先には他の木よりも何倍も大きい木が生えてる。空に向かって大きく育ってて雲を突き抜けそうなほど大きい。その木の下には泉があって水面が月の光に反射して輝いてる。泉の周りに蝶や動物たちが集まってて雰囲気から今までの場所と違う気がする。なんだかここにいるだけで心が安らかになるような気がする。


「ここが癒しの泉です。さぁクロード様をこちらへ」

「は、はい!」


 ヴァイスを連れてクロードさんと一緒に泉の中に入る。膝下くらいまで水に浸かってるけど、温かくも不快な冷たさもないなんだか不思議な感覚。


「クロードさん降ろしますね」

「あぁ…」


 クロードさんをヴァイスから降ろして泉に浸からせる。クロードさんの身体が自然と水に浮いていく。これでクロードさんの身体が良くなるといいんだけど…。


「クロードさんどうですか?」

「あぁ……大分楽、だ……」

「クロードさん!?」


 クロードさんが泉に浸かった瞬間目を閉じてすぐに眠ってしまった。気持ちよさそうに眠ってるから大丈夫なのかな?


「おそらく回復に専念するための体力を温存するために眠りについたのでしょう。身体が回復したら目を覚ますと思いますよ」

「よかった…。これでクロードさんの身体が良くなればいいけど…」

「えぇきっと良くなりますよ」

「はい…あ、そうだ!そういえばちゃんと自己紹介してなかったですよね」

「突然のことでしたしね」

「私、リリィって言います。この子はヴァイスです」

「ワン!」

「リリィ様にヴァイス様ですね。よろしくお願いします。それで、ずっと気になっていたのですがクロード様とはどういうご関係で…」

「私とクロードさんは一緒に旅をしてるんです。クロードさんはアイリスさんの身体探し、私はお兄ちゃんを探してるんです。そお旅の途中で出会ったのがヴァイスなんです」

「ワン!」

「ヴァイス様はフェンリルですよね。フェンリルを手懐けるなんてすごいですね!」

「あはは…実はヴァイスのお父さんがクロードさんの昔の知り合いらしいんです。それで一緒に着いてきてくれたのかなって」

「クロード様がフェンリルと知り合い?初めて聞きました」

「そうだったんですか?あ、あそれと私のこと呼び捨てで大丈夫ですよ。様付けってむず痒いので」


 クロードさんはメイさんの仲間でクロードさん自身も様付けに関して何も言ってなかったけど、私はメイさんと会ったばっかりだし様をつけられることもしてないから正直呼び捨ての方が嬉しい。


「その…癖になっていまして。なので呼び捨ては少し難しいです。申し訳ないです…」

「い、いえ!!全然大丈夫です!癖なら仕方ないですよね。それと私とメイさんって同じくらいの歳だと思うので呼び捨てで全然いいのになって思って」

「確かにそうですね…リリィ様はおいくつですか?」

「私は18です」

「18でしたか!私もえーっと……18、でいいの、かな?」

「??どういうことですか?」

「い、いえ!なんでもないです!それよりキリア様を紹介いたしますね!」


 なんか変な感じだったけどあんまり気にしない方がいいのかな?クロードさんとメイさんが話してた時も何か隠したいように感じたけどメイさんが言いたくないなら無理に詮索するのも良くないよね。


「それではキリア様のいるところへ…」

「その必要はないよ」

「誰!?」

「キリア様!どうしてここへ!?」

「侵入者がいるって聞いてメイが飛び出したから心配になって来たんだよ。まさかその侵入者がクロードだったなんてね。それも人間とフェンリルを連れて」


 背後から声がして振り返ると右目に眼帯をして口元に金具をつけて見たことない何処かの民族の服を着た男の人が立ってた。メイさんはこの人をキリアって呼んでたからこの人がキリアさん?


「えっと…」

「あぁ突然現れたら驚くか。僕はキリア。まぁクロードから話は聞いてるか」

「あ、はい!クロードさんのローブを作った人って聞いてます!」

「まぁそんなものか。クロードは自分のことあんまり話さないし。まぁそれは僕も一緒か」

「あの……」

「あぁごめんね。1人で話しちゃって。改めまして僕は魔王親衛隊、四芒星の1人、キリア・ヴィンセント。よろしくリリィ」

「はい!お願いします!」


 えっと確か四芒星はクロードさんにジャッカスさん、ローザさん、そしてキリアさん。これで四芒星の全員に会ったってことだよね。でもキリアさんは今まで会った人たちと何か違うような気がする。なんだろう。この違和感。


「まずはクロードをここまで運んでくれてありがとう。礼を言うよ」

「い、いえ…私だけじゃここまでできなかったです。ローザさんたちがいてくれたおかげです」

「ワフン!」

「もちろんヴァイスもね。本当にありがとう」

「ローザに会ったのか?」

「はい。それとジャッカスさんにも」

「そっか…ジャッカスはどうでもいいとしてローザは無事だったのか」

「え、えっと…」


 キリアさんってもしかしてジャッカスさんと仲が良くない?ジャッカスさんの名前を聞いた瞬間に嫌な顔したし。2人の間になにがあったのかは知らないけど……。


「とりあえずここで話すのはあれだし、僕たちの家に行こうか。そこならゆっくり話せるし」

「家ですか?この森に家なんてあるんですか?」

「私たちのために木の精霊様と物作りの精霊様が家を作ってくださったんです」

「家を作ったんですか!?もしかしてメイさんたちは精霊と仲がいいんですか?」

「い、いえ…私はこの森に来るまではなんの関係もなかったんです」

「僕は一応あるにはあるけど精霊に直接会ったことは森に来るまでなかったんだよ」

「え、じゃあなんで……」

「その話は家でゆっくり話そう。長い話になるからね」


 そのまま私とヴァイスはキリアさんたちの家に向かうことになった。キリアさんはメイさんと仲が良さそうで家へ向かっている間2人で話していたけど2人とも笑い合って楽しそうに話してる。やっぱり昔からの仲だから仲もいいのかな。




 ****




「ここが家、ですか。思ったより立派ですね」

「ワフン!」


 キリアさんたちに連れられてついた家は丸太が積み重なってできている所謂ログハウスの家だった。2人で住んでいるにしては大きな家で私が住んでた家と同じ、いやそれよりも大きいかも。


「精霊様が張り切っていたらしく、立派な家を作ってくださったんです」

「それにしてもすごい立派ですね」

「夜は冷えるし家の中に入って。話はそれからだ」


 キリアさんに家の中に招かれて入ると内装はちゃんとしてて家具も立派なものばかりだ。精霊ってこんなものまで作れるんだ。凄いなぁ…。


「私、お茶を淹れて参ります。リリィさんはゆっくり寛いでくださいね」

「あ、はい!」

「まぁそこのソファにでも座って」

「失礼します…」


 近くのソファに座ってヴァイスは私の足元に座る。家の中を視線だけ回して眺める。見た感じ普通の家だ。でも奥の部屋からなんか禍々しい気配を感じる気がする。気配ってよりも魔力かな?この森本当に魔力がたくさん満ちてて至る所から魔力を感じるから本当に魔力探知がしにくい。


「さて、まずは何から話そうかな。何か気になることはある?」

「えっと…じゃ、じゃあさっきの話ですけど2人は精霊に関わりがないのにこの家を作ってもらえたんですか?」

「あぁそっか。じゃあその話をしようか。さっきいった通り僕とメイは精霊に直接関わったことはない。でも僕の仲間に精霊に関わりがある人がいたんだ」

「それって誰ですか?」


 クロードさん?ではなさそうだよね。そんなこと聞いたことないし。ローザさん…でもなさそう。うーん…誰だろう……。


「アイリス様だ」

「アイリスさん?」

「あぁ。僕も初めてこの森に来た時は驚いたけど、アイリス様精霊と深い関わりがあったみたいなんだ。だからこの森の精霊はアイリス様の仲間である僕らに良くしてくれる。なんだか不思議な縁だよね」

「アイリスさんって交友関係広いんですね」

「まぁアイリス様に関してはクロードでも知らないことが多いしね。実際あの人は結構謎が多い人だったから。それにしても意外だったな」

「何がですか?」

「クロードが君に自分の素性を明かしてたなんて。クロードは人間の一部にしか顔が割れてないから隠そうと思えば隠せるのにわざわざ君に正体を明かしてたなんてちょっと意外だ」

「そう、ですかね。でも私もちょっと意外でした」

「ん?」

「キリアさんとメイさんって魔族なんですよね。魔族の人は人間にあまり友好的じゃないってローザさんが言ってました。それに魔王を封印したのって人間なんですよね。だからアイリスさんの親衛隊だったキリアさんは特に人間を恨んでるんじゃないかと思って」


 ローザさんは元々人間が好きって言ってたから私にも偏見なく接してくれたけどキリアさんはどうして会ったばっかりの私に良くしてくれるんだろう。


「そうか、そうだよね!まぁ何も知らなかったらそう思うか」

「えっと……」

「僕はね元人間なんだよ」

「え、え〜!!??」

「メイは……人間、だしね。僕は屍人、所謂アンデットなんだ」

「つまり元人間って……」

「死ぬ前は人間だったってことだよ。だから魔力も人間のものだろ」


 キリアさんに会ってからの違和感ってこれだ。クロードさんやローザさんの魔力は魔族のものだったけどキリアさんは人間の魔力だったから違和感があったんだ。そう考えるとメイさんも人間の魔力だ。まだ魔族と人間の魔力の違いがいまいち分からなかったから勘違いしちゃった。


「キリア様、リリィ様お茶がはいりました」

「ありがとうございます」

「ありがとうメイ。いつもすまない」

「いいんですよ。ヴァイス様にはミルクをどうぞ」

「ワフン!」

「いただきます」


 メイさんに淹れて貰ったお茶を少し冷ましてから口をつける。お茶の香りがふわりと香って程よい渋さが凄く美味しい。メイさんお茶入れるの凄く上手だなぁ。メイさんメイドだって言ってたからお茶淹れるの上手なのかな。


「凄く美味しいです!」

「ありがとうございます。お口にあってよかったです」

「あのメイさんって人間、なんですよね」

「えぇそう、ですね」

「その、聞いてもいいですか?」

「はい。なんでも聞いてください」

「メイさんは人間なのにどうしてアイリスさんのメイドだったんですか?」

「それは…」

「あ、言いづらかったら答えなくて全然いいです!私、デリカシーなかったですよね」

「いえ、色々思い出していたんです。私、孤児だったんです。まだ赤ちゃんの頃にウォルトカリアに捨てられたんです。そこを拾ってくれたのがアイリス様だったんです」


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