109話 別れと約束
エルフの里に侵入して今はヨットに乗って海の上。舟の後ろにはエルフたちが飛んできて私たちを追いかけてきてる。ローザさんがエルフたちを牽制して近寄らせてないけどエルフたちも魔法や弓矢で対抗してきてる。
「ロ、ローザ様僕も手伝います!」
「それは嬉しいわ。だけどアルバはどんどん風を吹かせて。風を吹かせられるのはこの中で貴方だけなんだから」
「わ、分かりました…。で、ですが危なくなったらすぐに教えてください」
「ふふっ!私がそう簡単にピンチになると思ってるの?」
「い、いえ!滅相もないです!」
「なら、風を吹かせるのに集中しなさい」
アルバさんが風を更に吹かせて舟のスピードがもっと速くなる。ローザさんはエルフたちの攻撃を防いでくれる。
「!!あれ、島が見えてきました!」
「あ、あれが精霊の森です!」
海の向こう側で島が見えてきた。木に囲まれて緑が豊かそうな島だ。あれが精霊の森…!
「アルバ、その調子よ!」
「!!ローザさん危ない!」
ローザさんの死角から海の中から水のサメが襲ってきたのを防御魔法で魔法を防ぐ。水のサメが思った以上に勢いも威力があって身体がもっていかれそうになるのをなんとか堪えて押し返す。
「ありがとうリリィちゃん!」
「大丈夫ですか!?」
「えぇ!なるべく攻撃を全部防ぎたいけど、防ぎきれないかもしれないわ。そしたらリリィちゃんに防御を任せることになるけど…」
「全然大丈夫です!任せてください!」
「ウァン!」
「ヴァイスも任せてって言ってます!」
「…頼もしいわね」
アルバさんが風を吹かせてローザさんがエルフたちに攻撃兼防御。私とヴァイスがローザさんの死角からくる攻撃を防ぐ。このフォーメーションでどんどん精霊の森へ近づいていく。だけど……。
「だ、大分近づいてきましたがこ、これは……」
「絶体絶命って感じかしら」
精霊の森まであともう少しってところでエルフたちに囲まれてしまった。舟のスピードよりもエルフたちの方が速くて追いつかれてしまった。エルフたちは弓矢を構えて魔法をいつでも使えるように魔力を溜めてる。
「雷よ!!」
「炎よ!!」
「っ!毒のベール!」
ローザさんがエルフたちの炎と雷の魔法を毒の膜の様なもので防いでくれた。ローザさんが魔法を防いでくれてる間にアルバさんが毒の膜の間から槍を作ってエルフ目掛けて槍が飛んでいく。エルフが槍を喰らう前に防御魔法で防いでダメージが与えられてない。
「この状況はマズイわね……」
「い、いつこの均衡が崩れるか分かりません!」
「………アルバ少し耳をかして」
「は、はい?………………わ、分かりました。ぼ、僕はローザ様の判断を信じます」
「ありがとアルバ。それとごめんね」
「い、いえ。ぼ、僕はローザ様と運命を共にする覚悟がありますから」
「お前ら何をする気なんだ…」
「クロード……また会いましょうね」
「ローザ!!ゲホッ…!」
「クロードさんどうしっ…!!」
「風の第九呪文:ドラゴンストーム!」
クロードさんがいきなりローザさんを大声で叫んで咳き込んだと思ったら竜巻が急に発生して舟を取り囲んでたエルフたちが竜巻に巻き込まれて飛ばされていく。
「うわぁぁあああ!!!!」
「クソっ!!!」
「凄い…取り囲まれてたのに全員いなくなっちゃった」
「と言ってもまたすぐに戻ってくるわ。だから……」
「ローザさん?何を……?」
ローザさんが海に手を浸して呪文を唱えると海がどんどん凍り始める。凍った海にローザさんとアルバさんが降りて舟には私とヴァイス、クロードさんだけが残った。私はいきなりのことで呆気にとられて動けずにいた。
「私とアルバはここでエルフたちを引き受けるわ。その間にリリィちゃんはヴァイスちゃんたちと一緒にクロードを精霊の森まで送り届けて」
「そ、そんなの駄目ですよ!2人を置いていくなんて!」
「できれば一緒に行きたいけど、エルフたちは私たちを簡単には諦めてはくれないわ。だから私たちはここでエルフたちを引き受けて貴方たちを必ず精霊の森へ送り届けるわ」
「で、でも……」
「ローザは一度決めたら絶対に曲げない。諦めろ」
「流石クロード、よく私のことが分かってるじゃない」
「アルバ、俺のせいで危険な役を背負わせてすまない。ローザのことを頼んだ」
「は、はい。ま、任せてください!」
「ローザさん、アルバさん……」
「さ、もうエルフたちが戻って来たわ。速く行かないとね」
「また…また会えますよね…?
「リリィちゃん。私たち本来の予定だったらクロードを精霊の森に送り届けたらジュナイダー王国に向かうつもりだったの」
「ジュナイダー王国…?」
「だからもし次に会うとしたらジュナイダー王国ね」
「…!!はい!会いに行きますから待っててください!」
「えぇ首を長くして待ってるわ。クロード、次に会うときは元気な姿を見せて頂戴ね」
「あぁ。当たり前だ」
「それじゃあ、また会いましょ!アルバ!!」
「は、はい!み、みなさんどうかお元気で!最高風力、ウィンド!!」
キリアさんが呪文を唱えると物凄い強い風が舟を押して海を物凄いスピードで進んでいく。小さくなっていくローザさんとアルバさんが追いついて来たエルフたちと戦ってる。最後にアルバさんが吹かせてくれた風は物凄い勢いでどんどん精霊の森へ近づいて行ってその勢いのまま島に舟が思いっきりぶつかって身体が舟から放り出される。
「いったぁ……クロードさん大丈夫ですか!?」
「あぁヴァイスが上手く着地してくれた」
「ウァン!!」
「よかった…ヴァイスも怪我はなさそうだね」
身体を起こして服を手で払って土を払い落とす。ローザさんとアルバさんのおかげで精霊の森に辿り着くことができた。目の前には巨木が沢山生えててあまりの大きさに圧倒される。巨木の奥は目を凝らしてもよく見えなくて不気味な気配だ。
「と、とりあえず行ってみましょう」
「何があるか俺にもわからない。用心しろよ」
「は、はい」
周りを警戒しながら島の奥へ入っていく。木で月明かりが遮られて薄暗くて足元が見えずらい。それにいつもの森と違って魔力が辺りに沢山満ちてて落ち着かない。これじゃあ誰かが隠れてても気づけない。だから余計に神経を削られる。
「はぁ…はぁ…」
「ウァフッ!」
「ヴァイス、どうしたのって…これ、霧?」
少し歩いて行くと急に辺りに霧が発生して周りが見えなくなる。この霧、魔力を帯びてる気がする。もしかして誰かからの攻撃?でもただの霧にしか思えないし何が目的なの?
「ヴァイス?ヴァイス、クロードさんどこ行ったんですか!!」
あっという間に周りを霧に囲まれてヴァイスとクロードさんを見失ってしまった。さっきまで一緒にいたはずなのに辺りを見渡しても影すら見えない。どこ行ったの?霧の魔力と辺りに満ちてる魔力のせいでヴァイスの魔力が感知できない。でも無闇に歩き回るのもよくないよね。どうしよう…。あ、そうだ!魔球を上に放てばヴァイスが気づいてくれるかも!
「よし、それじゃあ早速……」
「リリィ」
「誰!?」
後ろから私の名前を呼ばれて咄嗟に振り返る。でもこの声、どこかで聞いたことが…。
「久しぶりだね、リリィ」
「お、お兄ちゃん…。ど、どうしてここに…」