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錬金魔法使いとハイペリオンの木

「貴方、聖水を知っている?」

「はい、知っています。」

「私の下に来れば、アスカも作れるようになるわよ。」

「えっ、聖水が作れるようになるのですか?」

「そうよ、そしてこちらが、もっと大事な事よ。アスカは錬金魔法使いだわ。」

「えっ、本当ですか!!」

「それを確かめる為でもあるのよ。もしアスカが貴方の家が300年待ち望んだ者だったら、あなた嬉しいでしょう。」



 こうしてアスカはアーノルドの説得もあって、アトルとティアナの許しをもらってサンターナの家にお泊りする事になった。

 サンターナは外へ出るとアスカを抱えて風魔法Lv7ウインド、フライで空に浮いて東に向かって飛んで行った。

 それは、あっと言う間の出来事で、アーノルド達は全員、空を見ていただけだった。

 サンターナの家はロベリタ湖の東側の畔にあった。


「ただいま。」

「お帰りなさい、おかあさま。」

「おかえり。」

「お帰りなさい。」

「サンターナ、その娘、誰?」

「アリス、この娘はアスカ、ローム。たぶん錬金魔法使いだわよ。」

「えっ、錬金魔法使いなの!!」

「それを今から、確認するのよ。」

「アスカ、これ何か分かる?」


 サンターナは先ほど買ったレース、プラントをアリスの前に置いた。


「レース、プラントです、サンターナ様。」

「ふふふっ、アスカ、サンターナで良いわよ。」

「はい、サンターナ。」

「アスカはこれを見た事があるの?」

「いえ、初めて見ました。」

「では何故知っているの?」

「それを見たら、頭に名前が浮かんで来ました。」

「他に何か浮かんで来た?」

「はい、レース、プラントはミドルポーションの材料です。」

「ミドルポーションの全ての材料は分かる?」


「はい、ミドルポーション=ヒールポーション+マナポーション+スタミナポーション+レース、プラント+ルナ草+きれいな水+魔力70Mpです。」


「じゃあ、少し待っててね。」


 サンターナはヒールポーション+マナポーション+スタミナポーション+ルナ草+きれいな水を用意した。

 それを魔法蒸留器に入れた。

 最後にレース、プラントをすりつぶして魔法蒸留器に入れた。


「アスカ、この魔法蒸留器にMp70を流してくれる。」

「はい、分かりました。」


 アスカは心のメモリに従ってMp70を流した。

 錬金魔法Mp70、神の光の一部が漏れ出した。

 サンターナは危険を感じて距離を取った。

 光りが収まると、そこには赤色のポーションが出来ていた。


「本当にミドルポーションだわ。まだ後1回ぐらいは行けるわね。」


 アスカは今レベルは8でMPはそれでも150もある。

 巫女なのだ。


「今から私が言う呪文を唱えてみなさい。」

「はい、サンターナ様。」


「ユグドラシルよ、聖の力をこの水へ与え給え。ホーリーウォーター。」


 アスカは詠唱した。


「ユグドラシルよ、聖の力をこの水へ与え給え。ホーリーウォーター。」


「後はこのローム王国の人々の幸せを願ってこの水にキスをするのよ。」


 アスカは水にキスをした。

 水が白く光り出した。

 光が収まると、うす青色の魔力の小さなきらめきがその水から見えた。


 アスカは魔力を使い果たして意識を無くした。

 サンターナがベッドに運んで眠らせた。

 翌日、アスカは朝日の眩しさで目を覚ました。


「あら、お目覚めね。」

「おはようございます、サンターナ。」

「おはよう、アスカ。食堂へ行くわよ。朝食よ。」


 そこには見た事もない料理が並んでいた。

 そして食堂の奥には、機械の手足が料理の後片付けをしていた。

 ここの料理は王宮の料理より美味しかった。


「アスカ、わたくしはサオリ、ゴールドよ、よろしくね。」


 サオリは豹の耳と豹の尻尾を持った美少女だ。

 アスカはサーチを放った。

 サオリ、ゴールド307歳。

 レベル3750。

 アスカは目を見開いた。

 年齢が307才、そしてレベルが3,750、サオリは10歳ぐらいの女の子だ。



「僕はアキラ、ゴールドです。仲良くしてください。」


 アスカはアキラにもサーチを放った。

 年齢307歳、レベル3,750だ。

 一緒なの!!


 アスカは年齢もレベルも考える事を止めた。


「あなたがアスカね。私はアリスよ、よろしくね。」

「よろしくお願いいたします。」

「私もアリスで良いわよ。」

「アスカ、今日は全員でダンジョンへ行くわよ。」



 アスカはサンターナのフライで和音のダンジョンにやって来た。

 そしてサンターナはアスカを入れて5人のパーティーを組んでダンジョン1階の小部屋に入った。


 そして和音の剣の効果で91階層へやって来た。


「アスカ、ここの魔物は私達を見つけると逃げるので、アスカが前に出て戦いなさい。戦い方は聖水を風魔法で浮かせ、そして飛ばして魔物に当てるだけよ。」


「はい、やってみます。」


 アスカは聖水を取り出して、風魔法で水玉にして飛ばしてみた。

 何故か思い通りに飛ばせる事が出来た。

 スケルトンとスケルトンソルジャーを全て倒し92階層に下りた。

 レベルが一気に上がってLv178になりMPは900になった。


 スケルトンアーチャー、スケルトンマジシャンも楽々倒した。

 MPが多くなり、サーチと空間把握が常時発動可能となったからだ。

 こうなると殆どのアンデッドはアスカの敵では無かった。

 グール、

 ジャッカルゾンビ、

 ゴースト、

 ミイラ、

 ヘルコング、

 ドラゴンスケルトンを次々に撃破した。


 サンターナはドラゴンスケルトンから魔石を採った。

 98階層のシャドーバタフライも霧のように小さな粒の聖水を操って倒した。


 100階層にはウインドドラゴンがいた。

 体長は30m、空に浮かんだドラゴンがこちらを見ていた。

 しかし何処からか、光の矢が飛んで来てウインドドラゴンを撃ち落した。

 アリスはウインドドラゴンを異空間収納袋に入れた。


 そして右の隅に立っているハイペリオンの木からハイペリオンの葉を100枚ぐらい頂いた。


 100階層のダンジョンドアを空けると50m四方の草原の真中に小屋が建っていた。


「和音様、いますか?」

「アリス、また来たの?」

「今日は新人を連れて来たのよ。」

「ほっ、何だか美味しそうな娘じゃない!!」

「アスカ、目を閉じなさい。」

「はい、サンターナ様。」



 アスカは唇に柔らかなモノを感じた。

 何故か良い匂いもした。


「何かゴールドの香りがするわね。

 ごちそうさま。

 その宝箱に剣と指輪が入っているわ。」


「アスカ、その指輪をして剣を取って呪文を唱えて。

 和音、ドミソ、ダンジョン1階、ワープよ。」


「はい、サンターナ様。」


 アスカは詠唱した。


「和音、ドミソ、ダンジョン1階、ワープ。」


「アスカ、その指輪は月の指輪よ。

 効果は虫除け、特技、隠密と透明化、そして守護の聖なるサークルね。

 あなた以外では、使えないわよ。」


「凄い指輪ですね。」

「そう言ってくれれば和音様も喜こぶでしょうね。」

「アリス、もう少し足らないと思わない。」

「そうね、1日10本は作りたいわね。」

「今アスカのレベルは245でMPは1200だわ。これだとエリクサーだと10本ぐらいだわね。」

「龍のダンジョンに行ってみる?」

「龍のダンジョン?」

「ちょっとフライで行くには遠いわよ。」

「これを使うわ。」

「えっ、それ貴女がとっても大事にしているワープの指輪じゃないの!!」

「いいのよ、たまには使ってあげないとね。では、ワープ。」



 アリス達は龍のダンジョンの1階の入り口の前に飛んだ。

 1階に入ってワイバーンにアリスが光の矢を打ち込んで落した。


「アスカ、この剣でワイバーンの首を()ねてね。」

「アキラ、久しぶりに来たわね。」

「そうだね、サオリと一緒にワイバーンの首を刎ねた時は、気分が悪くなったよ。」

「そう言えば、あなた蹲っていたわね。」


 アスカはためらいなくワイバーンの首を刎ねて行った。


「凄いね、アスカ!!」

「アキラが弱いだけよ。」

「誰だって、サオリには敵わないよ。」

「あらそう、少し照れるわね。」

「だって、サオリ、本気になると闇夜を使うじゃないか!!」




 アスカのレベルが1,000になって龍のダンジョンを後にした。

 MPは6,000になっていた。

 こうしてアスカは1ヶ月間、サンターナ達と過ごした。

 アスカにとっては、食事も美味しく色々な話も聞かせてもらって、あっと言う間の事だった。


 この間、アスカはいろんなポーションを作った。

 サンターナ達が今まで溜め込んでいた材料がなくなるまでポーションを作って行った。

 その横でサンターナ達4人もポーション作りに励んだ。

 サンターナ達のポーション作りのレベルポイントがかなり上がった。

 またエリクサー10本を作った事はアスカにとって、とっても凄い自信に繋がった。




 この時、ベラドンナでは皆アスカの事を心配していた。

 2~3日、長くて1週間ぐらいで帰って来ると思っていたのだ。

 しかし、1ヶ月後、アスカが帰って来るとアトルとティアナはもちろんだが、アーノルドは涙を流して崩れ落ちた。


 300年の使命?、呪い?ともつかない家訓から解放されたのだ。

 アーノルドは家訓に示されていた通り、宝箱のポーションを全て1本づつアスカに飲ませて行った。

 アスカは勇者のレシピにあるポーションを覚えて行った。



 ここからローム王家とベラドンナ家ではアスカが新たに書き出したポーションのレシピの材料を探す事に全力をあげて行った。

 ハイポーションやエリクサーが手に入るのだ。

 ロームの各領主もこの情報を手に入れると材料探しを王家に申しでた。

 王家では、快く申し出を受けて行った。


 こうしてロームでは新たな産業が興り、国全体が成長しだした。

 お金が回りだしたのだ。

 そして、ハイポーションやエリクサーは今まで開拓出来なかった魔の森の中層まで行けるようになった。


 森ではオーガが倒せるようになり、湖では4首ヒドラまで倒せたのだ。

 ロームの空前の経済成長は持てる者と持たざる者を生み出し、町では盗賊、村では夜盗、山賊、海際では海賊の横行を生んだ。


 それでも全体的には国は成長して豊かになって行った。




 アスカは10才なった。

 この頃になるとポーションは売れに売れた。

 ハイポーションを1本と他のポーションを持って海外まで売りに行くようになったのだ。

 他国でもハイポーションは誰でも欲しがった。

 ついでに他のポーションも売れたのだ。


 ベラドンナには錬金工房が軒を連ねるように建ち並んだ。

 王家やベラドンナ家ではMp70以上のポーションの製作、販売を行っていた。

 ハイホーションを中心に冷気耐性上昇ポーション、弓術上昇ポーション、美肌ポーション、リンス、トリートメントポーション、精力増強ポーション、魔力解除のポーション、雨降らしポーション、クリーンポーションなどが人気だった。



 しかし問題が直ぐ起きた。

 材料が無くなったのだ。

 それで冒険者や商人に材料の調達を依頼した。

 高位冒険者はダンジョンの攻略を目指して材料を確保しようとした。

 今最高の冒険者到達点は40階層だが、レース、プラントの買取価格は金貨7枚、現代価格で210万円だ。

 今まではミドルポーションを誰も作れなかったので、最初だけ210万円で後はぐっと買取価格は下がって、5個以上の買取は行っていなかった。


 しかし今はアスカが作れるようになったので、いつでも、いくつでも210万で買取を行っていた。

 それでトップ冒険者チームは1週間に210万円を稼いでいるのだ。

 これに他の冒険者は刺激を受けた。

 自分達も続けとやる気を出した。

 経済とは人々のやる気だと分る現象だった。



 そして自国でお金が回りだすと、国全体が豊かになって行った。

 小さい国から大きな国になって行ったのだ。


 そんな時だった。

 ロベリン村出身の冒険者、アイザク、エイジンガー32歳、レベル35がアメニア王都にポーションの材料を探して旅をしている時だった。


 アイザクはダンジョンアタッカーだったが、アーノルドの信頼厚く、ポーション探しの依頼を受けてナトニアからアメニアを探していた。

 手当ては月々金貨5枚分がデジタルロムで支払われた。


 アイザクはデジタルロムをアメニア金貨に換えようと王都アイオーレに来たのだった。

 ここからアメニアの北の方を回る予定だったのだ。

 しかしアイザクは最初気付かなかったが、アイオーレの岩の柱の頂上に高い高い木が生えているのが遠くから見えたのだ。

 岩の近くに来ると、あまりに大きな岩で頂上は見えなかった。

 アイザクは本来が冒険者だ。

 その岩の柱を登ってみようと思った。

 1,000mのほぼ垂直な岩山を2日かけて登った。


 途中、岩の切れ目や木々が生えていて上れたのだ。

 2日目の昼頃、頂上についてその高い木を見上げた。

 アイザクはアーノルドから探す目的の材料の特徴や葉っぱならその木の特徴を書いた図鑑を持っていた。

 アスカが頭に浮かんだ形や特徴を書いた物を複製した図鑑だ。

 あれはもしかしてハイペリオンの木ではないのか!!

 驚きと共に喜んで、その木の下までやって来た。




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