御前試合
記念イラストまで残り一話となりました。
不定期投稿中ですが、わざわざ読んでいただきありがとうございます!
第50話に関しては、ほのぼの回に加えて、狐宵とエルフとの日常を描こうかなと思います。
近いうちに投稿できたらと思います!!
───────永命の森、長耳族の国こと「エデン」に長耳族を配下にすべく「幻災 月影狐宵」は永命の森に乗り込み、玉座の間。「リエル・エデン」に向かって「貴方方を配下に加えにやって来ました」と、長耳族の精鋭、ましてや女王の前で怖気ず堂々とそう言い放ったのだ。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
配下にしにきた、そう告げる目の前にいる黒狐の仮面の少女。側から見たらただの少女だがしかし、その少女からは魔気を抑える効果のある妖狐のお面でさえ封じ込めない漏れ出る魔気が放たれていた。その彼女を玉座に座る長耳族の女王「リエル・エデン」は面白い者を見るかのような目で見据えていた。
「よくぞ参ったな、幻災殿。其方のことは概ね聞いておる。それで、妾らを配下にしにやってきたと言ったな。其方は知っておるか?妾らがこれまでの長い歴史の中で、どこの勢力にも属さず、単独で現在まで主人を持たずに来たか」
そう問われた狐宵は、思考を巡らせ真剣に悩む。その様子をまた楽しみながら見ているエデンを少し不気味に思えてしまったのは、心の内に止めておく。何分間たったのち、一つの答えに辿りつき回答することにした。
「この国は独自だけでの技量、知恵などでここまで発展しています。そもそも我ら災厄のような勢力が必要なかったからでしょうか?」
そう結論付けた狐宵に、「エデン女王」は頷いて狐宵の意見を肯定する。しかし、それだけではないようで、答えはまた別にあるようだ。疑問符を浮かべる狐宵にエデン女王は続ける。
「それも正解かもしれぬな、しかし、それは建前よ。真の理由としては妾の興味を引く者がいない、主人として支えるような者がここ何千年と現れなかったからじゃ。だが、今妾の前には妾らが支えるに相応しい者が現れた」
エデン女王、彼女の性格は自由気まま、国の王として立つ者としてそれは如何なものかと思うかもしれないが、彼女の眼は真意を見抜きけして間違いを犯さない。国が設立してから今日に至るまで続いてきたのは事実であり、女王の判断は間違いないとしたいついてきた従者もいるのだ。
その言葉に、狐宵はハッとし、配下を手に入れたと思い喜びを表しそうになる、しかし、その感情を表す前にエデン女王から制止の言葉がかかる。
「しかし、それはあくまで妾の個人的な意見じゃ。妾の従者たちがそれだけでは納得しないであろう。故に、御前試合を申し込まさせていただこう。対戦相手として、妾の側近のもっとも強い三精鋭を戦わせよう。参れ。」
そういい、玉座の前に瞬間的に王の呼びかけに応じ馳せ参じる。「三聖士」(サンセイシ)と呼ばれる。
魔法師のミュウ。常人の魔法師であれば一属性の魔法を扱うのが普通。適正次第では二属性まで操れる者がいる。しかし、この魔法師ミュウは断りを逸脱し、三つの属性「炎」「水」「風」を操ることができるといった、常人離れした魔法師である。
剣聖の闇長耳族であるロイ。闇長耳族であるロイは近接戦闘最強。腰に携えている長剣は振れば闇を纏い斬ったものの再生を防ぐといった、妨害性能を持った刀を操る者。
そして最後、大弓を操る長耳族射手の「ウェイク」、狙った獲物は絶対に逃さない。一度に三つの矢を放つといった、普通では考えれない技量、またその矢に属性を付与できるといった厄介な攻撃も可能といったものだった。
個々の技量も凄まじいが、真の脅威を他にあった。それは三人の統率の取れた戦闘、剣を交わせば弓に狙われるといった、お互いがお互いを支え合い数を最大限に利用し逃げ場を潰し相手を追い詰めるといった戦いだった。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「三聖士、御身の前に」
女王の御前に姿を現し、片膝をつき平伏する。
「お主らに命令じゃ、幻災の相手をするがよい、しかし殺しは厳禁とする。よいな」
「仰せのままに」
命令に従うことが忠実なる配下の使命、それが王からの命令とならばそれをただ実行するまで。その思念を胸に、向き直り侵入者へと視線を向け武器を構える。戦闘態勢に入ったことを確認し、狐宵も応じるように戦闘態勢に入る。
「幻災よ、其方は一人で戦うのか?数の押し切るというのもつまらぬよな、ならば剣聖の…」
「それには応じません。私にはこの娘たちがいるので、行きますよ。焔、雫」
「はい!」
「はい…!!」
その言葉に応じるかのように、姿を幻想に潜ませていた焔と雫が現れる。
「そういえば、この前ひとつ気になった幻術があるんですよね。この際です、試してみましょう…九尾化」
「九尾化」そう唱えられた瞬間、二匹の狐の周りにそれぞれ8つの黒い魂が焔、雫を覆い尻尾に定着する。そして、一本だった尻尾は9つに増え「九尾幻狐」(キュウビゲンコ)となった。
焔たちの姿の変化に感嘆の声を漏らす。
「わー!尻尾が増えました!!なんだが私たちおっきくなりました!それに力がみなぎってきます!!」
「これが私たちの本来の姿なのかもしれませんね」
「ふふ、それは頼もしいですね。やりますよ、焔、雫」
その様子を見て、女王は心の中で思う。この者は常に自分の予想の遥か上を超えていく、この者と日々を過ごせば、数千年の間、色褪せたつまらない日々が色付き毎日が楽しみに思えるのではないかと。
そう思っている女王を他所に、御前試合開始を宣言する声がかかる。
「始め!!」
「俺に合わせろ、ピアシスライン」
一番に動き始めたのは、射手のウェイク。相手を貫通する矢をところ狭しと撃ち、誘導する。
狐宵は矢を避けるために武術瞬動を使い攻撃を避ける、しかしそれはウェイクの手の内だった。
「いい誘導だ。任せろ、ウェイク。俺もあいつと剣を交えてみたいのでな。暗黒深滅斬」
矢で相手の退路を制限して誘導しそこに向かってあたるだけで無数の斬傷を負わすことができる斬撃を飛ばす。
「早々に終わらせよう、いくら災厄とはいえどもこの結界からは逃げれまい。取り囲む風の檻」
取り囲む風の檻外側からの技には弱いが、内側からの攻撃の遮断性が高いという守りの技。本来は自分を守護する技だが、それを相手のところへ展開することで相手を取り囲み、内側からの攻撃からでは逃げれないようにする。
開口一番、三聖士は息のあった動きで猛攻撃にでる。その攻撃は所狭しと撃ち込まれもはや、逃げ場などなかった。全ての攻撃は順調に発動し、狐宵に全て命中、誰もが三聖士の勝利だと思った。
「幻命一之太刀」
攻撃が狐宵に命中し爆発音が起きる、攻撃は確かに命中した。
それと同時に甲高い斬撃の音と共に空間に斬撃が走る。それはまるで時空そのものを斬られたようだった。爆風を起こし狐宵は無傷のまま立っていた。
「その程度ですか?」
数々の大技を嘲笑うかのように、技自体を容易く斬り伏せてみせた。そう技を斬って見せたのだ。その者は太刀を抜いて悠然と立っていた。髪ひとつ乱れず涼しげな顔をしている。その光景にあたりは絶句してしまった。
「嘘…だろ、技は確かに命中して…」
「これが…六大災厄がひとつ…幻災の力」
「俺の結界は内側から破れない…はず」
動揺を隠せない三聖士、それは三聖士に限ったことではない周りにいた他の精鋭部隊、エデン女王までも目の前で起こった光景に驚きを隠せずにいた。
「次は、私たちの番ですね。先ほどの仕返しも含めて早々に終わらせることにしましょう」
普段、温厚な狐宵だが戦闘となればその性格は一変し「冷酷」といった表情となる。最もお面をしているため顔の表情はわからないが、本人から漂ってくる魔気は冷たい殺意が漏れ出て、攻撃にも容赦がなくなるのだ。
「神威月華」
幻術を発動させ、それは誰もが思わず見惚れてしまう月の華広範囲に華が咲き乱れ月のような光を爆散させながら咲いては枯れ爆ぜていく、もはや逃げ場などない死の花畑、三聖士に襲いかかりそうになった時…
「そこまで!!永劫の斬風壁」
女王のあたりが静まるほどの声量と同時に三聖士の前に何十もの防御壁が展開される。次々と破壊され最後の一枚で攻撃が止まった。攻撃が止んだと同時にしばらくの静寂が訪れる。
圧倒的力、圧倒的制圧力。接戦を期待してであろう面々、しかしそれは一瞬で決着がついたのだ。
「其方の力量はよくわかった、御前試合は其方の勝利だ。妾らは其方の配下に加わろう」
女王の言葉と共に、繰り広げられた御前試合は幕を閉じた。
両者は武器をしまい、三聖士含め玉座の間にいた精鋭隊の面々は狐宵に向かって片膝をつき敬服の意を示す。
今宵は満月、空に浮かぶ満月の下、新たな災厄…六大災厄が一つ幻災、月影狐宵の下に長耳族が配下に加わったのだ。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
それではまた50話をお楽しみに!!