人間界との諍い
連続投稿始まりました!!!
GW期間に合計3本投稿予定です!!!え、昨日からGWは始まってるって?気のせいじゃないですかね。
てことで、お楽しみください。
─────夜叉は、狐宵成長を認め頭を軽く撫でる。しかし、いつもなら満面の笑顔を浮かべる狐宵だが…。
今回ばかりは違った、頬には熱い涙が伝っていた。どこか懐かしい気持ち、初めてのはずなのに初めてではない感覚…この感覚は…。
「…」
「ぬ…?意識を失っている…?なぜ涙を…ふむ。とりあえず、輝夜のもとへ引き返すとするか。まさか、頭を撫でるだけで泣かれてしまうとは思わなかった…輝夜に何と言われるか…我は輝夜以外のおなごと接するのは慣れていない…ふむ…余計なことを考えるのはよそう」
狐宵は夜叉に身を委ねて意識を失っていた、なぜそうなったのかは夜叉はわからずにいた。その場に留まるわけにもいかず、夜叉は自分の住処である道場に引き返すことにした。狐宵を優しく抱え、森林を目に止まらぬスピードで引き返す。その後を黒狐たちは必死に追いかける。夜叉は道場に戻る間に頭の中で思考を巡らせていた。
「半狐…古の天狗は何と言っていたか…」
過去に古の天狗と話していたことを思い出す。
「なぁ、古の天狗よ。お前んとこの古の狐がいっていたことをふと思い出したのだが、聞いてよいか」
「夜叉が我に聞きごとか、珍しいな。それでなんだ」
「あぁ、半狐についてだな。前にお前のところの古の狐がぼやいてたところを丁度耳にして思っていたのが気になったのだが…「私にも血縁の子ができないかしらね、人間でもいい…それが力を持ちこの戦争を終わらすことができれば、半狐の幻術を使うのも惜しまない」このようにぼやいていたのだが…人間に半狐の幻術を用いることで、何が起こるのか。それでもしそいつが、どのような存在になるのかだな」
「あぁ…そうだな。仮に使われたら、次第に人間の頃の記憶は抹消されるだろう。これは副作用というか…言わば代償だ。辛いだろうが避けれない。そして、二つ目の質問についての答えだが…道を踏み外せば、災厄となる。これもまた厄介な…万が一、そうなってしまった場合は我らが止めねばならぬ。半狐の力は凄まじく、器がその力に耐えきれず、呑まれてしまう可能性もあり、危険なもの。最悪呑まれ暴走して自我を失い命果てるまで暴虐は治らないだろう、だからこそ、半狐の者が生まれた際には、その者が道を踏み外さないために導くする必要があるだろう、しかしそれはあくまで間違った道を選んだ場合だ。善に進めば、この森の門番となるだろう、ましてや、人間界との関係に終止符を打つ鍵となりえるやも…」
過去の古の天狗との回想に思考を巡らせる夜叉、人間界との関係に終止符を打つ鍵。それは、古より前の時代、海神竜リバイアサンが生まれた頃から続いている人間との戦争を意味していた。
一言に人間と表すが、ある者は魔法を操り、ある者は剣を扱う。魔法を放ち、剣を扱えばモンスターは消滅し、その対価として金をもらう。いわば、冒険者のようなものだった。冒険者のほとんどは、昔から続いているモンスターたちの戦争の歴史を知る由もない。己が私服の為に冒険者協会の依頼で討伐目標を探し討伐し生計を立てる。冒険者協会を設営した本人こそ「天空の支配者」、冒険者の最大討伐目標として、「五代災厄」が設定されていた。当然ながら報酬も莫大で、冒険者たちは五代災厄の討伐を目標として日々依頼をこなしている。
日が傾き始めた頃、夜叉一同は道場に到着していた。夜叉は狐宵を抱え輝夜の元へ歩む。それに気づいた輝夜は急いで駆け寄る。
「夜叉様、これはいったい何が起こったのでしょうか?とにかく、布団に寝かせてあげましょう。狐宵さんは私が看病します。夜叉様はお休みになってください」
「あぁ…あれは、我にも思わず生唾を呑む光景だった…エルフの奇襲に出会したのだが、この少女は怖じけることなくエルフを牽制し、追い詰めた…しかし、その時のあの目は我も凍りつくほどの眼差しを感じた。一言で言えば「冷酷」弱者を武力でねじ伏せる、我らの界隈では至極当然のこと「弱肉強食」が我らの世の摂理。しかし、何かがひかかるのだ。あれは、まるで別人のような…」
エルフとの対峙時に目にしたものをそのまま輝夜に伝え、輝夜も思わず生唾を呑む。一通り会話を終え、引き取った狐宵を休ませるべく、夜叉と別れた輝夜は部屋移動する。狐宵の額に手を当てて熱があるかどうかを確かめる。
幸い、熱はないらしく疲労による気絶だ思われ胸を撫で下ろす。布団のひかれた部屋に移動して、そこに狐宵を寝かせた。
心配した焔と雫は狐宵の元へ駆け寄り枕元でくるまり見守るようにした。その光景を見て輝夜は微笑ましく思う。
「あら、貴方たちは狐宵さんのことが大好きなのね」
「ハイ!焔は大好きですよ!」
「ほ、焔、声が大きいですよ。狐宵さんは寝ているのですから!わ、私も大好きですよ…ですから心配なのです」
二人の思いを聞き、輝夜は狐宵は愛されているのだなと思い笑みを浮かべる。二人の頭を撫で満足そうな顔をしている焔たち。戯れもすみ、輝夜はそっとしてあげようと思い席を外しその場を後にした。
日は完全に落ち、夜が完全に更け辺りは鎮まり静寂が訪れる。聞こえてくるのは三人の静かな寝息だった────
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