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狐が鳴く月夜に嘆くわ伝説  作者: 謎の作家
今宵は満月、伝説となりて
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途切れゆく縁、結ばれる縁。

幕開に続き、第二話です。

捨てられた少女の人生は彼の者によって幕を開ける展開です。


前回とは違い、ついに本題に入ります。


※大天狗(大きな天狗)、大狐(大きな狐)と表記していますが、今後 個体名が決まり次第表記を変えさせていただく場合がございます。

───母親が森から去ってから数時間の時が過ぎた頃、雨がぽつりぽつりと降り始めた。

小さき少女には理解ができるわけもなかった。刻一刻と迫り来る死を。


 体は凍え、泣く声は掠れ、上体を起こすこともままならない。

意識は薄れ、命の灯火はだんだんと消えてゆく────



「少女よ、命の灯火を途切らせてはならぬ───」


意識が朦朧とする中、その声を聞いた気がする。



 意識が回復する、次に感じたのは毛に包まれたような温かみだった。

空は暗く、満月が浮かんでいた。


「あら、起きたのね 人間の子よ」


目の前にいたのは、絹のような白い毛。心の奥まで見通すような青い瞳孔。

それは、優しい眼でこちらを見つめていた大きな狐だった。


次の瞬間、空は大きな影に覆われた。空から吹き飛ばされるほどの風圧を感じた。

大天狗だ。


「少女よ、起きたか。何とか灯火を消さずに済んだようだな、何よりだ」


赤く、相手を逃すことを許すまいとする大きな目、押しつぶされるような重圧を感じれる巨体。

大きな翼、厚歯の高下駄。


幼な子ながらも理解する、体が怯えて動かないと。


「天狗よ、私の娘が怯えているわよ。そんな見た目だから怖がられるのよ」


「なぬ・・?というか、もう母親気取りか、血の繋がりはないであろう。人間の子であるぞ」


「なら、血の繋がりを作るまでね。半狐の幻術を使うわ」


「ふんッ…。お主がそこまで気にいるとは珍しいな。好きにするといい」


大きな狐と大きな天狗が目の前で何かを言い合っている。

半狐の幻術…?聞き馴染みのない言葉が耳に入る。小さな頭では理解ができるわけもなく…。


「ギュルルル…」


言い合いの言葉が飛び交う中、場違いの音が空間に鳴り響く、音の主が自分だと理解するまで数秒の時間がかかった。

少女の顔が次第に、赤く火照り始める。そして、焦りもあった、殴られてしまうと。

火照りも間も無く、顔が怯えて体が震える。殴られてしまうと思い相手を見やる。


「ふふっ、人間の子よ。かわいい顔するのね、何怯えているのよお腹が空いたのね。口に合うかはわからないけど

ご飯にしましょう」


「中々面白い人間よ気に入った。我の弟子として迎え入れよう」


飛んでくるはずの拳が飛んでこなかった、代わりに温かい眼差しを向けられ呆気に取られた。

呆気に取られていると、膝の上に木の皿に盛られた温かい野菜がゴロゴロと入ったスープが差し出された。


嗅いだことのない食欲をそそるいい匂い。思わず涎が垂れるが手が動かない。


「食べていいのよ、そんな涎を垂らして。かわいいわね」


優しい声、恐る恐るスプーンでスープをすくい口に運ぶ。


美味しかった…味わったことがないほど美味しかった、同時に涙が出た。

一口、また一口と運ぶたびにポロポロと涙の雫が落ちた。こんな感情初めてだった。

何より、温かったのだ。この空間が。


「あらあら、嬉しいほどの食べっぷりね。泣くほど美味しかったのかしら?」


「見ていて、気持ちがいいな。我はお前の料理を泣くほどを美味しいとは思ったことはなかったがな…」


「ひどいこと言うわね、料理には自信があるのだけど。人間の子よ、美味しかったかしら?」


小さくコクリと頷く、大きな狐は柔らかくこちらを見て笑みを溢した。

その時少女は思った、ここは安心できる、心を許してもいいのだと。


そんな日々が、一日一日と続いて流れていく───。

最後まで読んでいただきありがとうございました。


感想、いいねをいただけたらとても励みになりますので、

ぜひ、よろしくお願いします。


更新をお楽しみに

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