交わすは命約、錆びた運命は揺らぐ
長い間期間が相手しまいすいません!
一人暮らしが始まったため、投稿が不安定となります、ご了承ください。
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────朝日が登り、日光が三人を照らす。中々起きない狐宵を焔と雫が狐宵の顔を舐め起こす。
「んん…焔…雫…おはようございしゅ…」
「起きましたか!」
「おはようございます」
やっと起きた狐宵に焔は元気に狐宵の周りを飛び回り、雫は狐宵の膝に乗って甘える。そんな二人を狐宵は優しく見守り、暫くしてから雫を膝から下ろし体を起こし立つスカートについた草などを手で払う。
昨日に続き「水面幻歩」を習得すべく、修行に励む。
師匠が見せた、あの時間が止まったかのような水面の上を歩く様を頭の中にしっかりと思い浮かべ浅瀬の方で水の上に足を浮かべる。しかし、浮くことはなく沈んでしまう。何度も何度も挑戦しては失敗の繰り返し、次第に狐宵の顔は曇り初めてきた。心の中でも折れ始めていた。
「狐宵様!焦らずにですよ!」
「時間をかけてもいいのですよ、焦らずにです」
二人からも励ましで、自分が焦っていたことに気づき反省する。
「そうですね、何も焦ることはありませんでした。時間はたくさんありますし…二人ともありがとうございます」
ホッと一息ついた狐宵は、気づかせてくれた二人の頭を撫でる。頭を撫でられた二人は嬉しそうに尻尾を振る。
深呼吸し焦っていた気持ちを落ち着かせ、もう一度水面に足を踏みだす。すると、少しの間水面に浮いた。その感覚に狐宵は喜びを噛み締めた。この感覚を忘れないように何度も挑戦し続け、気づけば数週間の時が過ぎていた。時が流れるつれ、水面の上に浮く時間も微量であるが長くなってきた。
軌道に乗りつつあったある日のこと、今日も修行に励む狐宵はいつものように浅瀬の方で修行を行おうとしていた水面に足を踏み出そうとした瞬間、突風が吹きあふれ狐宵の軽い体が吹き飛び、水深が深い水竜の湖に落ちてしまう。咄嗟のことに対応できず狐宵はもがき沈んでいく…焔、雫も追うことが出来ずただ見るしかなかった。足が地につくことがない湖にただただ沈んでいき次第に日の光が届くことのない暗闇に落ちていく…
「ああ…苦しい、私はここで死ぬんですね…」
死を覚悟した狐宵、曖昧で虚になりつつある過去の記憶…走馬灯が過ることなく意識が薄れ消えていく…。
「半狐の子よ、其方は我が認めた者よ。絶えてはならぬ、我を満足させよ」
意識が薄れ生命が遠のく中、頭の中に響く声があった。その言葉を認識した時、体は地に向かい上がっていき水面から狐宵の体が水面から上がった…狐宵の体をあげた下に何者かの姿が明らかとなる。
それは「海神竜リバイアサン」だった。禍々しい姿に、長い髭、水中を高速で泳ぐための翼膜、全長は10mを裕に超えていた。睨まれるだけで体が怯えて動けないほどのものだった。言葉に相応しい「災厄」が焔、雫の前に立ち塞がる。しかし、その災厄「海神竜リバイアサン」が二人と襲うことはなく、二人の元に狐宵を優しく置き狐宵の目覚めを静かに待っていた。その間リバイアサンは二匹の黒狐に話しかけた。
「伝説と言われし黒狐か、久しく見ていなかったがこんな時代に見れるとはな。この娘もそうだが、ついに動き出したのか…錆びついて動かなかった運命の歯車が」
そう呟くリバイアサンを前に黒狐は狐宵を心配するように寄り添っていた、数時間たったころ狐宵の意識が回復する。
「わた…しは、生きて…いるのですか…」
狐宵の目が覚め、二匹が狐宵に抱きつく。狐宵は優しく抱きしめて目の前の巨大な存在に気がつく。
「半狐の子よ、気が付いたか。我は、海神竜リバイアサン。早速であるが話をするとしよう、それは長き人々との終わりなき戦争の終結だ。其方の手で終わらせて欲しいのだ」
目の前にいる存在に圧倒され言葉が詰まる、しかし怯えてはならぬという気持ちを持ち威厳のある態度でリバイアサンと対峙する。人々の戦争の終結、これはこの前師匠がポツリと溢した言葉で何となく察しがついていた。
「ほう…怯えぬか。ただそれが見栄っ張りだとしても、その態度、流石我の認めた子よ。単刀直入に言おう、我と命約をせぬか。もちろんただとは言わぬ我の命、力を託そう。しかしそれはお前の力量、使い方次第だ」
「命約」それは、命を代償とした約束。己の持つ力を認めた相手に託すことであり自分の願いを相手に叶えさせることなど、さまざまな見返りを条件とされる。自分の生命を代償とするため滅多にしない非常に珍しいものだ。
「リバイアサン…。どうして、そこまで私を?命約、師匠からお聞きしました。自らの命を代償に己の力を認めた者に託すこと。その見返りとして、己の願いを託した者に叶えさせることだと。私に、貴方の願いを叶えることができるのでしょうか」
「それは心配ない…すでに我は其方を認めたのだ。其方には我の願いを叶えることができることができると確信している。この錆びついて動かなかった歴史を動かすために其方の力が必要なのだ。理由はそれだけだ」
簡潔な答えに理解ができないという顔をする狐宵に構わず、リバイアサンは続ける。
「一つ助言してやろう、其方はこの古の森の門番となるのであろう。其方の力や身体が成長した頃、この森の統一を一番に優先すると良いであろう。この森にはさまざまな種族が存在している。まずはそいつらの頭を殲滅し自らの戦力とするがよい」
淡々と続けるリバイアサンに戸惑いつつも真剣に聞く狐宵。まだ自分でもわからない、未知の力を見透かしているであろうリバイアサンを信じることにした。三日月の下、誓ったあの言葉を果たすためにリバイアサンの要求をのむ。
その目にリバイアサンは頷き、目を瞑り頭を狐宵に近づける。
「半狐の子よ、其方に我の願いを託す。頼んだぞ」
「今のままでは無理ですが、私の誓った言葉は嘘にはしたくありません。リバイアサンの願いを必ずや叶えて見せます。私に安心して任せてくださいね」
狐宵は、優しくリバイアサンの頭に片手を添えて目を瞑りリバイアサンに語りかける。夕暮れの下、命約は結ばれた。リバイアサンの姿は光の粒子化とし狐宵に宿る。リバイアサンの姿は消え、そこには水竜の威厳を宿した狐宵が爆誕するのであった────
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