表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/23

第16話 魔法陣の転写

 随分久しぶりにお風呂を堪能した翌日。

 ベッドでゆっくりと休めたおかげで旅の疲れも取れて目覚めも良かった。

 隣を見ると、ロックはまだ眠っている様だ。


 この世界のお風呂事情は、水の汲み上げが大変だからかあまり浸透していない様だ。

 そもそもお風呂は貴族等のお金持ちが使う物という認識らしい。

 今回ナナル村の宿にお風呂があったのも、川の近くにある村という事で水が豊富にある事と、大衆浴場にする事で村の名物を狙っているという事だった。


 それなら普段はどうしていたのかというと、生活魔法の一つにクリーンという物があり、その魔法で綺麗になるため、普段から風呂は利用していない。

 俺がラムダで過ごしていた時も、いつもロックが夜にクリーンを掛けてくれていたので気になる時に身体を拭く位しかしていなかった。

 だからこの世界にはお風呂が無いのだろうと思っていたのだが、ナナル村に大衆浴場があった事で風呂場作りは俺の中で最優先事項としてインプットされたのだった。



 ロックが起きた後、ユリアさんに声をかけて食堂で簡単な食事を食べると、俺達の部屋に戻って今日の予定を話す。

「今日は冒険者ギルドの方に行こうと思っているが、その前に少し打ち合わせをしておこう。まずユリア。魔法陣を見せて貰える様になったら、基本はルースに仕事を教えるという態度でルースにも魔法陣を見てもらう、という流れでいいか?」

「ええ、問題ないわ。ルース君にも文字が分からないのに色々偉そうに言う事になると思うけど、よろしくね」

「俺は大丈夫だよ。それより、魔法陣の内容が分かった時の合言葉を決めておこう。そうだな……〝魔法陣は難しいですね〟ってどうかな?」

「いいわね。じゃあ〝魔法陣が難しい〟って聞いたら、〝もう見なくていい〟っていう合言葉にしましょう」

「じゃあ、次にルース。この後冒険者ギルドに行く事になるが、ギルドでは基本何も知らないって感じで黙ってろ。お前が知りたい事があれば後で教えるから、ギルドでは何も質問するなよ」

「うん、分かった」

「最後に俺の事だが、魔法陣を見る段階になると離される可能性がある。俺がもし中に居なかった時は、待ち合わせしてるからとか言ってギルドから出ずに待ってろ」

「分かったわ。後は臨機応変にいきましょう」

 こうして簡単に話を纏めると、俺達は冒険者ギルドへと向かった。



 冒険者ギルドの建物は村の中央にあった。

 この村は元々村の中心部に店舗やギルドなど公に利用する場所を寄せて作られている。

 その外周に宿や民家等の住居となる建物を建て、どの家からも公的機関をほぼ同じ程度の距離で利用出来るようにしてある様だ。


 冒険者ギルドに入ると、食堂の様に並んだテーブルと椅子が置いてあり、右側には受付カウンターがある。

 そして左側には、お酒と軽い食事を出せる様にバーカウンターと、奥の部屋には簡易キッチンがある様に見える。

 なんとなく思い描いていた物そのままの冒険者ギルドを初めて見た俺は、ちょっとだけ感動しながらキョロキョロしていた。

 ロックはそのまま受付カウンターの方に歩いて行くと、受付の人に向かって話しかける。


「冒険者ギルドです。ご用件は?」

「ギルドマスターに会いに来た」

「ご予約はされていますか?」

「いや、予約では無いが依頼で来ている。この手紙を渡してくれ」

「分かりました。お預かりします」

 ラムダで貰った手紙を受付の人へ渡すと、そのまま建物の二階へと上がって行った。

 俺達はカウンター近くの空いた席を一つ確保し、座って返答を待つ事にした。


 暫くすると、手紙を持っていった受け付けの人がやって来る。

「お待たせしました。ギルドマスターがお会いになるそうです。案内します」

 そう言って再び二階の方へ向かったので、俺達も席を立ちついて行く。

 二階の奥にある一室に着くと、ノックをして「ギルドマスター、お客様をお連れしました」と声をかける。

 部屋の中から「入れ」と短く返答があり、ドアを開けてくれる受け付けの人に軽く頭を下げて俺達が中に入っていくと、ドアが閉められる。


「ラムダの町からの依頼で来たロックだ。こっちはユリアとルース」

 ロックが軽く紹介してくれたので、二人で頭を下げる。

「ナナル村冒険者ギルドのギルドマスターでマードックじゃ。用件は通信玉の魔法陣が見たい、という事で合っておるかの?」

 冒険者ギルドのギルドマスターはマードックと言う、有名な某魔法学校の校長先生の様な人だった。白髪の長い髪と長い髭、好々爺と言った雰囲気だが芯が強く、かなりの切れ者の様な感じがした。


「はい、それで合っています。拝見させて頂けますか?」

 マードックの問いにユリアさんは答えた。

「そうじゃのう。このままおとなしく魔法陣を見せて、ワシらの村に何か得になる事があるのかな?」

「どういう事ですか?」

「別にそのまま魔法陣を見せても何も損はないが、そのかわり何の得もないじゃろう? この田舎の村に何か得になる事は?」

「すみませんが、見せて貰えなければそのまま帰るのみです。依頼内容はこの村に来て魔法陣を確認するだけでしたので、私達の判断で損得の追加は何も出来ません」

「じゃが、そのまま帰れば依頼の失敗となるじゃろう。利口な選択とは思えんがのう」

「構いません。魔法陣を見せて貰えなくても失敗報酬は取り付けてありますし、そもそも私は冒険者ではありませんので、仕事に響くなんて事は無いのです」

「……ん? 冒険者じゃないじゃと?」

「はい、違います」

「お主ら程の腕であれば辞める必要もあるまいに。また復帰したりせんのか?」

「必要性がありませんから」

 マードックさんとユリアさんが二人で何やら怪しげな交渉をしている中、話の内容が分からない俺は大人しく見守る。


「仕方ないのう。これ以上何かを要求しても出てくる事は無いじゃろうて。ならば、用意してくるとするかの」

 怪しげな交渉はユリアさんに分があった様だ。

 準備をすると言って出て行ったマードックさんは、すぐに通信玉を持って戻ってくる。


「これがここの通信玉じゃ。魔法陣を見るための道具はあるんかな?」

「今あるのは携帯転写機と伝導プレート、それから転写用の紙は準備して来ました」

 テーブルの上に通信玉を置きながら尋ねるマードックさんに答えるユリアさん。


 携帯転写機は転写する為の道具で、魔法陣を精密に読み取る大きな設置式の転写機と違って、魔法陣を簡単に読み取る道具である。

 基本的に魔法陣の修理をする場合、魔法陣を読み込む必要がある。

 その際、アイテムバックの様に持ち運び可能な物ならいいが、大型の物の場合は読み取りのために持ってくる事が出来ない。

 なので、大型の魔道具や錬金道具の魔法陣を見るために携帯の転写機が必要なのだ。

 今回は持ち出す訳にはいかない物の魔法陣を見るため、携帯転写機を持ってきた様だ。


「それだけあれば、魔法陣を見る事が出来そうじゃのう。それで、紙に写して帰るのかね?」

「出来ればそうしたいのですが、流石に許可なく写すことはしませんよ。とりあえず見るだけ用に伝導プレートを用意しています」

「紙に転写しても魔法陣は起動はせんし、そこから作る事も出来んから構わんよ。なんなら転写防止の魔法をワシが直々にかけても構わんしのう」

「ありがとうございます。それではこれから魔法陣を読み取らせて頂きます」

 そう言うとユリアさんは、置いてある通信玉を持ち、魔法陣を読み取る作業を始める。


「じゃあルース君、転写の仕方を教えるわね。まずはこの通信玉に魔法陣がある場所を探して」

「えっと……ああ、ここにありました」

「それじゃあ次に、魔法陣がある所に携帯転写機を持ってきて、転写機に魔力を流しながらこうやって撫でていくの」

 ユリアさんが転写機に魔力を流すと、転写機が淡く光る。そのままハンドスキャンの様にゆっくりと撫でる。

「これで転写機が覚えた内容を、今回は紙の方に写すわ。魔力伝導プレートの場合は、プレートに接続する事で転写できるわよ」

 そう言いながら、紙の方にゆっくり撫でて魔法陣を紙に写し取る。

「紙に写し終わったら、転写機の魔力がなくなって光も消えるわ。そしたら魔法陣を確認して、ちゃんと転写出来ていたら終わりよ」

 なるほど。転写された紙を見てみると、転写はしっかりと出来ている様だった。

「店長、転写は成功している様です。一応確認をお願いします」

 そう言ってユリアさんに渡すと、ユリアさんは暫く紙を見て頷いた。

「大丈夫そうね。後はラムダの町に帰ってから比較確認しましょう。ギルドマスター、快諾感謝致します」

「構わんよ。それじゃあ一応、転写防止の魔法を掛けておくから紙を渡して貰えるかの?」

 そう言われて転写した紙を渡すと、マードックさんは紙に何かの魔法を掛けて返してくれた。


「ありがとうございます。お世話になりました」

 そうして手に入れた通信玉の魔法陣の写し紙を受け取り、俺達は冒険者ギルドを出て行った。



 無事に宿屋に帰り、部屋に戻ると息を吐いた。

「ふー、お疲れさん。決めた事はあまり役に立たなかったが、何とか魔法陣を手に入れる事が出来たな」

「本当、お疲れ様。じゃあこれは今からラムダに帰るまでしっかり保護魔法を掛けとくわ」

 ユリアさんは紙を取り出すと箱の様な物を出し、その箱に紙を入れて蓋をすると魔法を掛けた。

 保護魔法を掛けると特定のワードを言わないと解除できず、秘密漏洩防止の役にたつ。

 この様な時には凄く便利な魔法だ。


 その後一日ゆっくりした後、俺達はナナル村を後にした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 面白いですね つづきが気になります
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ