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エッセイ

ホンダ・トゥデイに乗って

 仕事車が故障したので修理に出した。


「あそこに置いてるトゥデイに乗って帰ってー」


 そう言われて首をひねった。


 トゥデイ? それって原付スクーターじゃないの?




 見るととても古そうな、白い軽自動車が置いてあった。


 とても背が低い。とても軽そうである。


 乗り込む時に「よっこいしょ」と声が出た。


 着座位置も路面スレスレかってぐらいに低い。


 


 マニュアルミッションだった。


 このぐらいの頃の軽自動車はマニュアルミッションじゃないとまともに走らないという印象がある。


 エンジンをかける。おお、綺麗な音がしてる。


 シフトレバーをローに入れる。サクッとはいった。




 走り出すなり楽しくなった。


 視点が低いので、最近の高いクルマとは別世界を走ってる気分。


 ミッションの入りもノンストレス。たった4速だけどキビキビ走る。


 楽しい。これ、楽しい。


 クルマを運転してるって感じがとってもする。




 装備はなんにもついてない。


 エアバッグすらついてない。


 でもエアコンの効きは爽やかで、ハンドルも素直。さすがは車屋さんの代車、よく整備されてる感じ。


 楽しくて、長い橋の上で思わず80km/hまで上げてしまった。ちっとも怖くない。快適。




 めっちゃ速いママチャリに乗ってる感覚。


 スポーツバイクからママチャリに乗り換えるといろんなものが見える。路地の裏に隠れてる誰かの三輪車とか。視点が低くて、ゆったり気分だから。


 あんな感じ。


 でも速い。


 アスファルトが近いところにあって、ビュンビュン後ろに飛んで行く。


 天気もよくて、ずっと運転していたかった。




 調べたら1995年式だった。約30年前のクルマなのに、こんなに元気。


 オイルも綺麗なのが行き渡ってる感じで、体に馴染んでる。


 最近のクルマは確かに良くなったけど、こんな楽しさは感じたことがない。


 軽くて、低くて、自分の思い通りに走るなんて、感じたことがない。


 大抵、クルマに乗せられている感じ。クルマの重い体を気遣って、無理のないように走らせてあげないといけない。いらない装備だらけでゴテゴテしているのだ。







 今日、トゥデイくんを返しに行った。


 すごく気に入ったけど、自分のものにしたら不満が出るんだろうな。


 窮屈だし、ドアミラーちっちゃすぎて見えないし、それ以外にも色々不満が出るんだろうな。


 もうすぐに寿命が来ちゃうかもしれないし。




 ありがとう、トゥデイくん。


 あなたは気分を明るくしてくれるクルマ。


 私の手足のように動いてくれた。


 また、会いたいけど……時代がそれを許さないね。



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― 新着の感想 ―
[良い点]  ( ̄▽ ̄)//いいですね。トゥデイ  久しぶりに古い友人と出会った気分になりました。 [一言]  MTのトゥデイか・・・分かっとる車屋さんですね。
[良い点] 走る事を楽しむ時に余計な機能は蛇足。ということですね。 十数年前に街中を走ってる『スバル360(へこみ有り)』を見た時、あまりの小ささに 「!……マジかぁ」(驚愕) と思いましたが、…
[良い点] 古い車もあっさり乗りこなすとは流石プロですね(笑) エッセイでありながら「主人公が不思議な生き物に出会った」という感じの短編小説を読んだような読後感です。
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