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十八話

 帰ってからゲーム。沙希の配信が終わった後にまたゲーム。そんな日常が続いた。


 沙希は日を重ねる毎に上達している。とてつもなく上手くなるのが早く、目を見張ってしまうほどだ。


 全武器のリコイルも把握しており、エイムも良くなっている。一番に目を引くのは立ち回りが完成していることか。


 どうやって凸るか、どこのポジションを確保するべきか理解しているのだ。


 俺の教えを吸収しているのが分かる。まるで、トレースしている動きになっていて、一緒にやってるとお互いのやりたいことが手に取るように分かってしまう。


 やりやすかった。相棒と呼んでも遜色無いぐらいにゲームの中で、俺と沙希は意思疏通をしていた。


 二人でランクにも挑戦したりして、結果は勝率が七十パーセントという異常な数値を記録している。これは一位を取った割合である。俺のメインアカウントよりも高い。


 低ランク帯はすぐに抜け、中級者や上級者が混じるランク帯でも余裕だった。


 配信外でデュオを回していると、たまたま遭遇したリスナーが俺達のことを発見してコメントしているのも散見し、ツムギは俺のことを弟として扱うようだった。


 不服である。俺のほうが誕生日は早い。


 そんなことがあったりしたが、順調に沙希は上手くなっている。学校の行事である文化祭の準備もやったりと、それなりに忙しい日々を過ごしていった。


 ゲームの大会は文化祭の前日。夜に行うため時間は被らないが、両立させるために忙しくなる。


 沙希は遅い時間まで起きているようで、俺がトイレに起きたときも部屋に明かりがついていた。


 配信をしつつ、俺とゲームをやり終わった後は勉強をしているようだ。意外にも努力家である。


 クソビッチと言っていたことが申し訳なるぐらい沙希は真面目だった。




 朝起きて学校へ行く。


 いつも通りの日常を過ごし、放課後になると文化祭の準備だ。


 俺は裏方の調理班に決まり、何人かの生徒と自己紹介をやってから料理の品を上げていく。


 スマホでレシピを調べ、簡単に手早く出せる品を何品かピックアップしていると沙希が俺のほうへとやってきた。


「ね、優作。この中ならどれがいいと思う?」


 見せてきたのはカタログだ。メイド服の写真が何種類か載っていてモデルの女性がポーズを決めている。


 まさか、この中から買うのか。普通は自分達で衣装を作るのではないだろうか。文化祭なのに手抜きだろ。裁縫出来そうな人が居ないから仕方ないかもしれないが。


「……好きなの選べよ。俺に関係ないだろ」


 同じ調理班となった委員長の視線が地味に痛い。沙希と仲良くしているのを見て、口をポカーンとしている。


「優作だったら、わたしにどれ着てもらいたいのかなって」


「……どれでも一緒だろ。全部似合うんじゃないか」


「どれでもいいとか、それは女の子に言っちゃダメなやつだよ。一番ダメ。ほら、選んでよ」


 なんで俺は理不尽にも駄目出しを喰らっているのだろう。面倒くさすぎる。


「……これとかどうだ」


 差し出してくるカタログを鬱陶しそうに一瞬見て、適当に人差し指を置いてみる。


「そっか、これか。わたしもそう思ってた!」


「あっそう……」


 喜んだ沙希がスカートを翻して去っていく。何なんだよ、あいつは。


「あの、江島さん。冴崎さんと仲が良いんですね。少し意外です」


「え、いや、まあ。そうっすね。一応、はい」


 委員長が俺に話しかけてくるが、コミュ障の俺はまともに会話をすることができない。同じような感じの男だったら強気に出れるのだが、女は別物だ。


 女は苦手という認識が強い。家から出ていった母親のせいもあるだろうが、何を考えているのかさっぱり分からないのだ。


 平気で嘘もつくし、顔にも出さない。少し出掛けてくるねと言ってから、母親と十年も会っていないし。


 俺は委員長へ変な相槌のようなものを返し、会話が終了した。


 まだ何か聞きたいように俺のことを窺っている委員長をスルーしつつ、俺は俺の仕事に集中していく。


 放課後の僅かな時間を使い、文化祭の準備を進めていった。

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