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十六話

 それから俺と沙希は別の部屋に居ながら、ゲーム内ではずっと隣をキープしていく。


 キーボードを操作しながら俺は取り留めのない話を交え、今夜の定時配信にも聞いてみた。


 ツムギの配信は暫くの間、カエデとリンと一緒にパーティーで回していくそうだ。二人と食事に行った際に色々と話をしたのか、沙希が上機嫌で話してくる。


 先程の気まずい雰囲気がどこに行ったのか定かだが、沙希はさっきの話題に触れようとしてこない。だから、俺は意図を組みつつ、和気藹々とゲームを楽しんでいった。


 時間が経過し、ツムギの定時配信している時間になると一旦終了。


 カエデがリーダーとなるツムギとリンの三人でチーム練習だ。


「わたし、今日なら行けそうな気がする!」


「ああ、楽しんでこい」


「優作も見といてね! あとで駄目なところとか聞くから!」


「りょーかい」


 という言葉を交わし、ゲーム内の部屋から退出した。


 沙希は上達が早い。FPS初心者なせいか、まっさらの状態から俺が教えている。


 ゲームの才能があるとかじゃない。沙希は分からないことがあれば直ぐに聞き、俺の言葉を理解して従っているのだ。


 俺が渡したノートやネットに転がる情報を見て勉強しているのだろう。そうでなければ説明が出来ない動きや話をしている。


 ツムギの配信を見てみれば経験者二人に着いていこうと必死だった。


 前回は即ダウンの戦犯扱いされていたが、今回はカバーもしつつ戦況を切り開いている。


 ――あれ、上手くね?

 ――別の人やってる説ないかこれ

 ――エイム良し、ムスコ良し


 カジュアルモードで十分に通用していて、段々と三人で回すことにも慣れてきたのか落ち着いて話も出来ていた。


 何より、良かったのは勝つための法則をしっかりと判断できていたことだ。


 全部隊中、残り三パーティーとなった中でカエデとリンが突っ込もうとしたのだが、高所のポジションを防衛することを提案したのである。


 安置収縮や距離とキルログを見て、必ず勝つための采配だ。俺でもそうする。


 ツムギは冷静だった。


 リスナーも湧き、神判断と誰もが言っている。


「……上手くなったな」


 まだ拙い部分はあるけど、前回とは段違い。トロールしてしまう場面もあったが、まだ始めたばっかりだし大目に見よう。


 配信を見終わると同時に部屋に沙希が入ってきた。


「どう!? めっちゃ良くなかった!?」


「ああ、良かったよ。落ちて死んだりしてたけど、最後のマッチは完璧だった」


「にひひ、でしょー!? わたし、強くなってるし、大会でも勝てるよね?」


 得意気な沙希は俺の隣へやってきて、ベッドへ座る。僅かに沈んだベッドを座り直し、俺は口を開いたものの答えは出なかった。


「どうだろう……」


 大会には大勢のプロゲーマーとストリーマーも参加する。世界大会にも出場経験があるプロが混じっているのだ。


 vtuberだけで組んでいるチームはツムギ達ぐらいなはずだ。賞金も出るし、チームを組む段階でガチである。


「そんなに無理っぽい……?」


「いや、分からないってのが率直な感想だ。あと一月半でどれぐらい上達するか分からないし、スクリムをしてないからランドマーク争いもしてないだろ」


「……でも、勝てる可能性はあるよね?」


「もちろん。俺がお前を強くするからな」


「ふふ、ありがと。優作のおかげだね。わたし、頑張るから。これからも教えてよ?」


「任せろ」


「このあともやろうよ。カジュアル行かない?」


「おーけー。一時間ぐらいだけな」


「うん。じゃ、またゲームで!」


 既に夜も遅く、明日も学校なのに俺達は再びゲームをやっていく。


 沙希が去っていくのを眺め、俺はゲーミングチェアに座る。招待を送ればすぐにやってきて、ヘッドセットから沙希の声が聴こえてきた。


 どうしてか、この関係が心地良く感じてしまう俺が居る。


 いつからなのだろう。


 沙希の声はツムギの声でなくても、耳障りではなくなっていた。俺の聴覚はいつの間にかアップデートされていたらしい。 

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