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36 才女ロゼリッタ


「イルメラ女史の報告、まさしくこれまでの事象を裏付けるものです」

「生半可な方法では“消せぬ”ということだな」

「はい。彼女にはこのまま内偵を続けさせます」


 私の言葉に対し、レイノルド様は眉間にしわを寄せて深く息をついた。


「ふむ、厄介なことだな」

「しかし、方法がないわけではありません。王女殿下のスキルが自動障壁ならば、それを破壊するだけの攻撃をぶつければ良いのです」


 どんなスキルであれ魔力を消費するということは事実。そして魔力を失えばスキルは消失する。


 それならば、継続的に攻撃すればやがて障壁は維持できなくなる。ましてやそれが強力な攻撃であれば、魔力の消費はさらに加速して障壁は失われることになるだろう。


「ブルーノ伯爵、それが貴殿にできるというのか?」

「策がございます」


 レイノルド様の問いかけに対して私は自信を持って頷いた。


「閣下、どうやら王女殿下はSクラスへの昇格試験に挑戦するとのこと」

「ほう、あの禁忌の迷宮に……」


 レイノルド様が”禁忌の迷宮”と呼んだのは、王都郊外にあるハニエム鉱山のことである。


 かつてこの鉱山は王国でも有数の魔鉱石の採掘場として大いに栄えていた。


 しかし、坑道の最深部の空洞に強大な炎の魔物が発見され、国を挙げての討伐隊が送り込まれることとなる。多数の犠牲者を出しながらもなんとか”封印”に成功したのが、今からおよそ60年前の出来事だ。


 ところが、それ以来めっきり魔鉱石の採掘量の減ったハニエム鉱山は閉鎖され、現在は低級魔物の巣となってしまっている。


 それが”禁忌の迷宮”と呼ばれ畏怖されているのは、やはり今も”あの怪物”が封印されているからなのだろう。


「まさか、封印を解く気か?」


 レイノルド様が厳しい表情でこちらを睨みつけるのは、間違いなく王都への被害を懸念してのことだろう。


「ご安心ください。あの炎の魔物が坑道の最深部から決して移動しないことは、当時の研究報告書から明らかになっています」


 すでに廃鉱となっている鉱山であるから、移動しない怪物ならば復活したとして損失は何もない。


 いや、それどころか鉱山が再活性化して、再び魔鉱石の採掘ができるようになる可能性すらある。


「あの怪物の力が記録通りであるならば、間違いなく王女殿下は命を落とすことになるでしょう」


 そう断言できるほどに、書物に丁寧に記された炎の魔物の攻撃は凄まじいものだった。


(人間がまともに戦ってどうこうできるような相手ではない)


 坑道の最深部であの怪物と出会えば、いかに王女殿下のスキルが優れたものでもそれは全く役に立たないだろう。


「……わかった、解封を許可しよう。吉報を待っておるぞ」


 やや逡巡して返答したレイノルド様の許可を得た私は、すぐに子飼いの魔導士を引き連れてハニエム鉱山を目指したのだった。


◇◇◇


「私がSクラス代表として参加いたしますわ」


 私の発言にクラスメイトたちが「ロゼリッタ様が!?」「どうして!?」と驚きの声をあげています。


 担任の先生も「学院の首席のあなたが出る必要はない」と仰りますが、私にはどうしても参加する理由がありました。


 なぜなら、今回のSクラス昇格試験にはイオリ様が参加されるからです。


 お兄様から伝え聞いたイオリ様の英雄譚は、今でも私の心を捕らえて離しません。


(同じSクラスでお近づきになれると思っていましたのに!)


 入学試験の結果、なんとイオリ様はEクラスに配属されてしまいました。


 彼が手を抜いていたのは明らかなはずなのに、ここの教師たちはそれを見抜くことすらできません。


 彼を早急にSクラスに移すよう進言しましたが却下され、私がEクラスに異動することも認められませんでした。


(この絶好の機会を逃すことはできませんわ!)


 Sクラス昇格試験は実戦形式で行われ、それには比較対象としてSクラスからも毎年数名が参加します。今回はSクラスから2名の参加が義務付けられており、私はそれに自ら立候補したのです。


「今年はEクラスから挑戦する馬鹿がいるらしいな」

「身の程をわきまえてほしいわよねぇ」

「おいおい、王女殿下に失礼だぞ。ぎゃはははは!」


 イオリ様とべルティーナ王女殿下がSクラス昇格試験を受験することは周知の事実となっています。


(やがてイオリ様の真の実力が明らかとなり、ここにいる方々は己の浅慮を恥じることになるのでしょう)


 イオリ様の気高さと比較すると、どうしてもクラスメイトたちの品のなさに不快感を覚えてしまいます。

 

「面白そうだから今年は見学に行こうかしら?」

「へへっ、泣きわめく王女殿下を俺が慰めてあげようかな」


 好き勝手に騒ぐクラスメイトたちを、あきれ顔の先生が注意してようやく授業が始まりました。


(これを機に必ずやイオリ様の心をつかんでみせますわ!)


 今日の授業もいつものように何の興味も沸かない内容でしたので、私は昇格試験当日の髪飾りについてゆっくりと思案することにしました。

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