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異界の料理人(エルフの気持ち)



 「彼は羽毛うもうっていうニンゲンだよ。俺たちのこと、俺たちの村のこと命を懸けて救ってくれたんだ。」




 ケンショウが泣きながら叫ぶように答えた。




 「な、そんなバカな人間っていえば自然を壊してモンスター達の住処を奪っていく、モンスターを家畜のようにしか思っていない侵略者じゃないの!!」




 エルフの少女はケンショウの言ったことが理解できなかった。





 「ありえないわよ!、、、だって人間は、すべてを奪っていくじゃない!!」




 「モルサの言うことはわかるわ。特に貴方は絶対に認めたくないと思う。でもこの人が命を懸けて助けてくれたの事実なの。」



 エルフの少女モルサに対し、ハナも羽毛うもうを擁護する。




 「あなたなら、彼を助けられるかもしれない!お願い助けてあげてほしい!」




 「嫌!信じられないわ。それに人間は何をするかわからないもの!」




 「モルサ、俺からも頼むよ。」




 そう、ケンショウも言い放つと他のピクシーたちからも”俺からも頼む”、”あたしからも”と続々と声が集まる。

 彼が倒れているのもピクシーの村が損害を負っているのもエルフの少女モルサが遅れてきたからだろう。

 それが彼女自身もわかっているからこそ、理解はできないものの、ここまでピクシー達に言われて見捨てる訳にもいかなくなった。








 「死んでたら、いくら私でも無理だからね。治療してろくでもないことされて後悔したって知らないわよ」





 「うん、お願いするよ。ニンゲンを助けてやってくれ」





 エルフの少女モルサは徐に羽毛うもうの元へと近づいて行った。




 地面に横たわる彼の横まで行くと息があるか、傷口はどのくらいかを確認し始めた。

 



 ・・・「まだ、息はあるみたい。だけど、傷口がかなり深いわ。普通の治療魔法では治しきれない。かなり賭けになるけど治す方法として彼の生存本能に語り掛けるしかないわ。彼の生命力と運に依存するけれど。彼が強く生を望むなら助かると可能性はゼロじゃない・・・でも、もし彼が生を望まないというなら残念だけど助からないわ。」



 エルフの少女モルサが呪文を唱え始めた。





 ”パーフェクト・ヒール(精霊達の思召し)” 





 そうすると、彼女の周りに光が発生し小さな精霊のようなものが数体現れた。




 光る精霊は地面に横たわる羽毛うもうの周りをぐるぐると周回する。



 光る精霊達は羽毛うもうの体を隈なく巡った。傷の深さや深刻度を調べているのだろうか。




 何周も彼の周りを回ったかと思うと、精霊たちはやがて彼の体に入っていった。





 「あとは、待つだけよ。ここから先は彼自身の戦い」




 「光の精霊たちが彼を診断して彼の生きようとする強い力に共鳴をしたら精霊は彼を治療してくれるわ。」

 「でも、精霊たちは冷徹に”命の値決め”をするわ。良薬にも劇薬にもなるのが精霊たち。」




 この説明を聞いたケンショウやハナ達は羽毛うもうの治療は一種の賭けだと知った。森に住まう精霊たちは清らかなものを愛し、不純をめっぽう嫌う。

 精霊は清らかな存在であるピクシーやエルフにとっては共存しやすい。

 だが、人間は違う。生きていくのに動物を殺し、残し、命を粗末にする。あまつさえ、いたずらで折殺生を行うことすらある。そのため、人間は存在自体が不純ともいわれることがある。もちろん、ピクシーやエルフなどと比べてだが、オークやゴブリンと比較すれば月とすっぽんほどの差はあるのだがー





 つまり、この賭けはかなり分が悪い。






 人間は生きていくだけで不純に近づいていくのだから。精霊に好かれることは99.9%ないと言えるくらいに。




 だが、0.1%でも可能性があるのなら諦めることはできない。彼は、最後まで諦めないで命を懸けて村を救ってくれたのだから。



今回もありがとうございました。


次話は12/15に投稿します。


ブックマークなどもよろしくお願いいたします。

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