表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/23

異界の料理人Ⅱ


 ----戦略会議から2日後---


 王国戦士長であるハンダは宮殿内の武器庫へつながる廊下を足早に歩いていた。

 本来2週間後に戦争を控えていれば休養を取り英気を養ったり、武器の手入れや稽古に時間を使うべきであろう。

 だが、王国戦士長を含めた、彼の指揮する軍団においてそれは、できない状況に陥っていた。


 大貴族であるガーフィールド・ノウンに戦争前にエリス台地(戦争予定地)を偵察し、モンスターを討伐してこいと指示されたためだ。



 「クソが、こんな時期に偵察や討伐なんて今更何の意味もない。カルバス帝国にバレたら今回の戦争は普段と違うと宣言しているようなものだぞ」




 苛立ちは様相だけではなく言葉にも出てきていた。軍団の長が感情を見せるのは部隊の士気に関わるため、控えているのだが抑えることができなかった。




 戦争前に敵を挑発する行為は自殺行為にも近いのだから。




 だが、ハンダはこの命を拒否することができない。彼が拒否をすると自分のことを評価してくれている王の体裁が保てなくなってしまう。王としても大貴族と関係が悪化するのは内政・外交上好ましくないのだ。

 

 王も懐刀であるハンダを危険に晒すことを黙認するしかない。

 

 もっとうまく立ち回ることができたら、多くのリスクを抱え込む必要はなかった。平民である彼は武芸と忠誠心のみで王国戦士長になった。ハンダ自身も自分の能力はわかっている。そんな狡猾に根回しなんてできるはずはない。だが、わかっていても仲間の命を危険に晒し、王の苦渋の決断をさせてしまった自分とこんな姑息な手段を使う貴族たちへの苛立ちはかつてないほど沸騰した。

 


 カルバス帝国との戦争、その作戦は奇抜で泥臭いもの、王国貴族としては辛酸をなめさせられた気持ちだ。戦争に勝利しても名誉を失うかもしれない。

 誇りを重んじるアスタリッシュ王国の貴族たちは王の決断--ひいては、その決断をさせたハンダ--に憤りを感じていた。名声を失うかもしれないいくさに貴族たちは兵士を貸し出さなければならい、さらに本来であれば王国内外での地位を押し上げてくれるはずだった戦争の価値を無くした(彼らの基準では、だが、)からだ。


 --そんな理由もあり貴族たちは、平民上がりの男に陣頭指揮をされることに憤慨し、自滅ともとれる王国戦士長への命を出したガーフィールド・ノウンを筆頭に王への離反心も芽生え始めていた。








[--アスタリッシュ王国とカルバス帝国の戦争予定地の草原(エリス台地)--]



「んー!っと」



 心地の良い睡眠から目を覚ました羽毛うもうがそこに突っ立ていた。




 周囲には目印となるような建物どころか土地の傾斜もない。

 見渡す限りの草原が広がっており、その中心に自分がいる。風が吹く度に緑の絨毯が波を作りとても美しい。




 そんな感慨に浸りながら自然の雄大さを感じ取る。




 喧騒にまみれた日常生活のストレスからか、"自分がなぜこの状況にいるのか"や"ここはどこなのか"といった感情すらも抱かず、ただ雄大な自然(平原)を眺めていた。




 どれくらい時間がたったのだろう・・・自分でもびっくりするほど時間を忘れ、その瞬間、この景色を感じて楽しんでいた。





 羽毛うもうが我に帰ったのは、「風の吹く音」と「風で草同士がかすれる音」しか聞こえていなかったはずなのに、「別の音」が聞こえてきたからだ。


 


 ・・・その音は背後から聞こえてくる。耳を澄ますと、音は一つではないことに気が付いた。






 「ニンゲン、ニンゲンがいる」





 「ほんとだ、みんなにホウコクしないと」





 --甲高い小さな声で誰かが話をしている。





 声の主は自分の背後にいるようだ。聞こえてくる音量から近さは5mメートル程度だろうか。



 この距離まで誰かが近づいてくるまで気が付かないなんて迂闊だった。だが、これは運がいいと羽毛うもうは感じていた。なぜなら、"なぜこの場所にいるのか"や"ここはどこなのか"といった単純な疑問を解消できると思ったからだ。こちらから声をかけなければ。




 自身の決断を実行すべく声のする方。背後に振り返った。




 --何も見当たらない



 声は確かに聞こえていた。だが、声の聞こえてきていた場所には<声の主>の姿は見当たらない。




 「風の音と草のかすれる音が奇跡的に合わさって鳴っていた音だったのだろう。」




 異変を感じながらも不安を感じないように小さく呟き自らを諭すように一人呟き前を向く。


 




 だが、また、高音のひそひそ声が聞こえてくるような気がする。




  

 「気づかれなかったようだぞ」





 「危なかったね」





 再度盛り返してきた恐怖心を抱きつつ、勢いよく声の方向へ振り返る。







 そこには、






 --緑色の服に身を包む。小さな(人形サイズの)2人の人が透明な羽をはためかせ羽毛うもうの膝小僧あたりを飛んでいる。




 互いに視線が交差する。




 彼らの小さな顔がみるみるこわばっていくのが見て取れた。



 「ヤバイ、見付かった」



 「食べられるちゃう、早く逃げるよ」



 慌てているようだ。



 そそくさと逃げていく。



 彼らのサイズでは、急いで逃げているのだろうか。それとも何かの罠なのか。

 真偽は不明だが、彼らが飛んで逃げる速度はかなり遅い。驚愕で口を開け、啞然と立ち尽くしていた羽毛うもうでさえも、気持ちを切り替え追いかけても話しかけられることができた。


 「食べたりなんかしないよ。それより君たちは何ものなんだ?」__

ブックマークとかコメントとかお待ちしております。


是非ともよろしくお願いいたします。


あるとすごく嬉しいです!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ