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異界の料理人Ⅰ

第一章の始まりです。


羽毛が異世界に転生した頃の王国視点のお話。

                   【第一章 ~異界の料理人~】

 


 --アスタリッシュ王国では、敵対的関係にあるカルバス帝国と長年に渡り領地問題で戦争を続けてきていた。


 領地問題が発生するまでは、両国共に人間のみで構成される単一国家であり人間は亜人種ゴブリンやオーガなどはもちろん人間種(エルフや半魚人など)の中でも弱い種族であるため助け合う同盟国だった。

 その頃は人の往来も豊富で--軍事的手札ともいえる魔法--の共同開発なんかも盛んに行われていたほどだ。




 しかし、




-----ある隕石の出現で状況は一変した-----




 始めは10年ほど前に落下した緑色に光る大きな隕石からだった。



 落下地点の近隣に住む村人が隕石を発見し、周辺国家へ調査依頼を出した。すぐさま調査隊が結成され、隕石調査に向かった。

 しかし、調査隊が現地に到着し調査を開始した頃には隕石は方々の方角へ飛び去って行った。


 そしてその場には小さくなった隕石のみが残っていた。



 調査隊が残された隕石を城に持ち帰ると不思議な現象が城の内部で起きた。




 隕石の周囲にいると「睡眠や食事を取らなくても活動できる」現象が起きたのだ。




 飛び散った隕石を保有した国や村は様々なアブノーマルな特殊効果を享受するようになり、瞬く間に隕石を取り合う争いが亜人、人間問わず行われるようになっていった。




 

 その隕石は、友好関係をも壊し、争いを起こさせる禁断のアイテムとされ、[エニグマ]と呼ばれるようになった。





 そのころからアスタリッシュ王国とカルバス帝国の戦争が始まった。



 アスタリッシュ王国とカルバス帝国の争いも想像の通り、[エニグマ]が両国の中間地でそれぞれの領土外にて発見されたことによって引き起こされたのだ--








[--アスタリッシュ王国 アスタリッシュ城 王国会議室--]





 「具体的に進んでいるのか」



 一向に進まない戦略会議に苛立ちを覚えた人物が口火を切った。玉座の中心から王国会議室中に響き渡るほどの大きな声だった。

 それまでは、有力貴族達が自らの優れた(あくまで彼らの基準では)戦略を採用してくれとするアピール合戦を繰り返していた。王の渾身の一言で会議室には静寂が訪れた。



 アスタリッシュ王国 国王のグスタボは長きに渡る[エニグマ]をめぐる戦争に終止符を打とうと考えていた。

そのため、国内で幅を利かせる貴族たちに戦略を練らせ作戦会議を開いていた。王の進捗確認の問いに対する返答は聞こえてこない。兵力の提供や作戦の陣頭指揮を執り王への貸しを作りたい貴族ばかりなのだ。予想はしていたが、自国の貴族の質の低さにグスタボが悲壮感を抱かずにはいられない。



 グスタボが貴族からの回答を諦め、自らの腹心である王国戦士長に意見を求める。王国戦士長のハンダは優秀であり武術にも長けているが、平民あがりのため重宝すると貴族に疎まれるため最後に意見を聞くことにしている。そのため、いつも無駄に会議を長引かせている。



 「ハンダはどのように攻め入るのが好手であると考える?」



 王の問い掛けにも他の貴族のように動じることなくハンダは話を始める。



 「カルバス帝国も人間種の単一国家であるため、人間の弱点を突く作戦に出るべきかと愚考します。」



 「ふむ、考えを話すのを許そう」



 「感謝いたします。その作戦というのは亜人の死体や血肉を鎧に付着させ戦に出るというものです。」



 「な、亜人の血肉をだと。誇り高い我が戦士団につけたまま戦わせるというのか!」



 王の動揺と同じように周囲の貴族からも動揺が感じ取れる。一部の貴族からは、やはり平民での戦士長殿は私たちとは頭の出来が違う。だとか野蛮とはまさにこのことだ。とか恥を知れといった言葉も聞こえてくる。





 貴族として誇りや見栄を一番に生きてきた彼らからすると全く理解できないことだろう。だが、長らく均衡を続けているこの戦争に終止符を打つには奇抜な作戦しか功を奏することがないとハンダは知っている。この作戦を伝えることで貴族からどのような評価をくだされるのかを知りながらも、グスタボ王は聞き入れてくれると信じて自身の評価よりも国の今後を憂い提言をした。





 王はその意図、その真意をくみ取り返答を返す。



 「ハンダよ、お前の憂いでいることはよくわかる。だが、戦争に勝利した場合悪評が付いて回るのではないか?」



 「失礼ですが、グスタボ王。この国の民は、長引く戦争で疲弊しています。下らぬ評判より戦争に終止符を打ち、民の命を考えるべきと私は思います。」



 ハンダが王にそう伝えると、貴族からの猛反発が襲ってきた。「王への態度がなっていない、民より評判が重要だろう」だとか、「カルバス帝国のスパイなのか」とか、ここぞとばかりにハンダを叩く。


 批判の嵐の中でもハンダの瞳は真っ直ぐにグスタボ王を捉える。自らの決断を信じて疑わない強い男の姿がそこにはあった。




 「わかった。王の責任としてこの作戦を実行する。14日後の朝5時より戦争を仕掛けるぞ」





--王の決断の声が作戦会議室を包み、会議が始まって2度目の静粛が訪れた。 



今回もありがとうございました。


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