エニグマ
「人間たちは何を求めて争っているか知っているか?」
「ん?知らないけど、なんでそんなことを聞くの?」
笑顔のダガーとその質問から不思議な焦りとなんでこんなことを質問しているのだろうか。彼の目的が達成できないとわかれば最低限の衣食住をせがみ、他の集落や村に出向けばいいのではないか?という疑問を抱く羽毛とモルサであったが淡々とダガーは説明を続けていく。
「人間たちはこの緑色に光る隕石「エニグマ」を求め争いあっているんだ。これを持っていると繁栄することができると言われているし実際に不思議なエンチャント効果を得ることができる。効果はエニグマごとに異なるようだけどね。」
「なんで、そんなことを知っているんだ?それに何で君が持っているんだ?」
絶対にこいつは災難をもたらすやつだと羽毛が悟ったが今更どうしようもない。異世界と現実世界のギャップさえも受け入れきれていないなかでの更なる衝撃展開に羽毛の胃はキリキリとなりだす次第だ。これまで43年間人生を送ってきたがこの数日が一番濃いものになっているな。処刑前のマリーアントワネットはこんな心境だったのだろうかとさえも思っている。だが、自分にはまだ選択の余地もあることを唯一の心の支えに淡々と話を進めていくしかないと思う。
「さすがだな。人間なのにオークを倒す猛者はやはり順応が早い。エリス台地に住まうものとして一般的知識でいうと、これまでエリス台地は何度もアスタリッシュ王国とカルバス帝国の戦争があったというところくらいまでが共通認識でその理由までは知らないよな。俺の集落ではなんで人間がエリス台地でここまで戦争を繰り返すのか疑問に感じ、戦士を拉致して拷問にかけてその理由を問うてみたんだ。その戦士から戦争の理由を聞いた。あまり重要な情報なんかは全くしらないようだったが、戦争の理由と王国や帝国についてなんかは知ることができた。そこで判明したのは、人間たちが戦争をエリス台地で繰り返し行うのはすべてエニグマという隕石が関係しているということだ。一般階級にはそこまで情報は来ていないらしいが、帝国と王国はエニグマを欲し戦争を繰り返しているということとエニグマはこのエリス台地にある。そのエニグマの効果はまだ判明していないということだ。」
「なるほどな、だが、さっきあなたが笑顔だった理由はなに?」
モルサは勇気があるな。俺なんて状況変化が速すぎて全く理解できていないのに話が怖すぎるのが良くないよな。戦争とか遠い国の話だと思っていたのに。と羽毛が思う。
「以前、捉えた戦士はこれまで弱小国家だった国がエニグマを得て間もなく世界で覇権を握るようになった国もあるとも話していた。そんな逸話が残り人間たちが毎年多大な犠牲やコストをかけて狙うエニグマはさぞ、すごいものだとは思わないか?」
「確かに大きな効果があるのは間違いはないと思うけど、それであなたが得意げな表情をさせる意味がわからないわ。」
「うん、モルサの言う通りだな。いくらエニグマがすごいといっても、その効果だって未知数だしそもそも手元にないものの話をしたって何の解決にもならないだろう。」
羽毛の発言のあとさらにニヤつくダガー。その表情をみてモルサを羽毛は互いを見合わせる。
「あ、あるのか!?」