ホブゴブリン
「だろうな。そこまで考えていたらここまで横暴な態度はとらないよな。」
こんな可愛そうな身の上話聞かされたら助けてあげたいって思っちゃうよな。と羽毛が考えていると先ほど、エルフのモルサを呼びに行ったピクシーが戻ってきたようだ。
「ちょ、羽毛大丈夫なの?食べられていない?」
「ああ、俺は大丈夫だ。それより少しホブゴブリンの話も聞いてあげないか?」
「ちょ、何を言っているのよ。ゴブリンが食料を奪って、村自体も占領するって言っているって聞いたわよ!それなのに話を聞くって取り入れられちゃったの?」
「そうだぞ。殺されるかと思ったんだ。押されているときに羽毛が来てくれてモルサを呼びに行ったんだから。羽毛だってこいつが何を言っていたか知っているはずだよ」
ピクシーとエルフがそういうのだって無理もない。自分が逆の立場だったら間違いなく同じことを言っているだろう。だが、この短い間に情が沸いてしまったのだ。すごくちょろいというのは理解しているし、もし嘘だったら村人全員を危険に晒す行為だ。だが、どうにもホブゴブリンが嘘を言っているとは思えなかった。
「何を言っているんだって思うよな。だが、悪い。俺はこのホブゴブリンが100悪いとは思えないんだ。ピクシーやモルサが言ったことは確かに本当のことだし、俺もどんなことを言われたのか聞いている。その発言については絶対に良くないことだが、、良くないこと何だが、、、、」
突如、羽毛の頬を生暖かいものが通り過ぎていく。発言に心がこもりすぎてしまったのだろうか、後ろから困窮し怯えた様子のホブゴブリンの視線が浴びせられているのもあるのだろう。いい大人になった男が発言の最中に涙をぼろぼろとこぼし始めていた。
「え、あれ?なんで涙なんか、、」
「どうしだんだよ。羽毛!!」
ピクシーとモルサが心配するのも当然だろう。訳の分からないことを言っていたと思ったら泣いているのだ。完全に理解不能だ。もしくは裏切りものだと思われても仕方ないことをしている。だが、羽毛の尋常ではない様子にとりあえず、話を聞くべきだと二人は考えた。このまま闘ったり、二人を追い出してもスッキリしないはずだ。それに仮にもこの村を救った英雄(さらにここ数日の食事番をこなしていた勤労者)なのだから。
「わかったわよ。話を聞くわ」
「羽毛がそこまで言うなら、納得はいかないけど俺も話を聞くよ」
「2人ともありがとう」
「じゃあ、ホブゴブリン。自己紹介を含めこれまであったことを説明してくれるか?」
話を聞いていたピクシーとモルサが疑問を抱いた顔をしている。それもそうだろう。今までゴブリンと思っていた存在がゴブリン上位種なのだから。もしかしたら戦略を組みなおさなければいけないのか?それとも羽毛の言う通り話し合いに活路を見いだせる相手なのかと。
その顔を理解したホブゴブリンも即座に説明に入った。