襲撃者
「なんか俺の話をしている気がしたが、何かあったのか?」
内容については家の陰からこっそりと聞いていたので、すべて理解しているが、ピクシーが望む強者感が分からなかったので、羽毛なりに強い感じの雰囲気を出そうとしてみた。
「羽毛!来てくれたのか!このゴブリンを追い出すのを手伝ってくれ!!」
「なんだ、こいつは?人間?さっき話に出たやつか?強そうには見えないがな」
間違いなく面倒ごとに巻き込まれた羽毛。強者感なんてよくわからない。もう泣きそうだ。そもそも異世界にやってきて数日、これまで料理にしか向き合ってこなかった。強者感なんて出せていたら転生前にモテていたはずだ。急に人は変わることはできない。なんて言い返そう。この場をつなぐ時間が稼げる言葉を、、
「ん、なんだこの相手と自分の力の差もわからない愚かなゴブリンは?」
「羽毛いつもと口調が違くないか?」
おい、やめてくれよ。俺が折角漫画で読んだ知識でめいいっぱい虚勢を張っているというのに、フレンドリーファイアされるなんて聞いてないぞ。
「そんなわけないだろう。いつも通りだ。」
「もういいか?俺とお前の力差だと?・・・そんなに強いのか?」
俺とピクシーの話が終わるまで待っていてくれたのか意外といいやつなのか。羽毛がゴブリンに少し好感度を覚えたが、先ほどまでのやり取りの物騒さは忘れていない。嫌々ではあるが、なんとか穏便に済ませなければならないと生唾を飲み込み気合をいれる。
だが、ピクシーがモルサを呼びに移動してしまったことからさらに気を引き締めなければならない重圧から胃がキリキリなっているのがわかる。強いストレスのせいなのか意外とすらすらと言葉が出てきた。
「ゴブリンとは、人の村を襲って生活するほど落ちた種族なのか?君の話し方からは知性を感じられる。そこまで落ちた種族ではないと思うが、違うのか?」
「俺たちゴブリンに嫌なイメージを持っていないのか。珍しいな。種族としては他人をさげすんで楽しんだり、人のものを奪って生活している。その予想は大外れだな。」
うげっ。やっぱりゴブリンは異世界でもそういう役回りの種族なんだ。と思うが、どこか他人事のように話すこのゴブリンには話に出てくるような卑劣さは感じない。不思議さを感自ざるを得ない。
「そうか、、、君からはそんな雰囲気を感じないが」
幾ばくかの沈黙がうまれる。
「俺たちが普通のゴブリンとは違うなんて言ってくれたやつは他にはいなかった。かなり見どころのあるやつなんだな。お前は。だが、俺たちも生きていくためには食料を得る必要があるんだ。ここで死ぬわけにはいかない。仲間たちの仇も取ってやれていないこんな状況では絶対に。」
「やはり普通のゴブリンとは違うんだな。俺の見る目は確かだったようで安心したよ。それで何かあったのか?もしよければ、聞かせてくれないか?武力以外での解決方法だって見つけられる可能性もあるだろう」
弱いのバレなそうな流れになってくれてよかった~なんて羽毛が安堵感に浸っていると。ゴブリンが説明を始めてくれた。
「俺は、ホブゴブリンといってゴブリン属の中でも稀に産まれてくるゴブリン亜種のような存在なんだ。ゴブリン種の中で俺のようなホブゴブリンはその種をまとめ上げるリーダーになる。俺たちはその群れのリーダーとしてメンバーを支えていかなければならない。俺もそうだった。俺の群れつい最近までエリス台地で集落を作っていた。恵まれたことに群れにはホブゴブリンが3匹いてかなり発展した集落となっていた。それこそ他の種族に迷惑をかけないように教育だってしていたし、自分たちだけで食料調達だってしていた。そうして作り上げた群れが俺の自慢だった。だが、あっけなく俺の宝物は壊されたんだ。」
「宝物が壊されたってどういうことだ?集落がなくなったってこと?」
「ああ、俺の、俺たちの集落は壊された。襲撃されたんだ。武装を固めた人間の軍勢だったよ。俺はあいつらを許すことができない。だから、こんなところでくたばる訳にはいかないんだ!」
「なるほどな、、で、俺たちから食料を奪ったとしてその後どうするんだ?ゴブリンの軍団を作るのか?見ず知らずのゴブリンがよくわからないやつのために命を懸けるとは思えないがな。」
「うぅぅ、、そこはまだ考えていなかった。」