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王国戦士長

--同時刻、エリス台地にて


 「進めー!!王国戦士としての誇りをここに示せ!蹂躙だ。王国の力を誇示するために完膚なきまでに闊歩し見えるものすべてを蹂躙しろ!!」


 アスタリッシュ王国の王国戦士長ハンダは寒空の中、モチベーションの上がりきらない戦士たちに叱咤激励を浴びせていた。もちろん、彼らのやる気が出ないのはわかる。自分自身でさせ王の気持ちを考えなければ放棄してしまうかもしれない任務なのだから。

 王国戦略会議の後、ガーフィールド・ノウンの命を受けすぐに出立した彼らは戦争予定地のエリス台地を進んでいた。ここは、11日後に戦地となる。戦争前に戦地を物色したりそこに住むモンスターを蹂躙するのはさほど意味がないと思われる。

 だが、アスタリッシュ王国では国王派閥と貴族派閥の対立が深刻化しており、この溝をさらに深いものにするわけにはいかず、今回の”無意味な作戦”に王の懐刀である王国戦士長とその軍団は赴いていた。


 見渡す限りの草原の中に騎馬にまたがった戦士が100人ほど王国の紋章を入れた戦士たちは統一した装備を施されている。各々が共通の防具、武器に身を包んでいるが、予備の武器を持っていたり、武器・防具の使用感などからそれぞれが歴戦の戦士であることがうかがい知れる。


 一行の面前に見えるのはゴブリンの集落だ。王国戦士長の掛け声とともに馬に乗ったまま乗り込んでいった。ゴブリンの集落は33体のゴブリンで形成されている。

 暴力を生業にするものたちが数でゴブリンを圧倒していく。ゴブリンは1対1であれば代の男一人でもなんとか倒すことができる強さだ。

 ただ、ゴブリンの醜悪さは力ではないその卑怯な行動によるものだ。ゴブリンは王国戦士団の力によってかなりの数を倒すことができ、ゴブリンの中には命乞いをするものまであらわれるほどだ。


 「タ、助けて、俺たちが何をしたんだ。何もしないから逃がしてくれ」


 ゴブリンは人間の言葉を理解し、話すこともできるものもいる。人間の情に付け込むのだ。


 「戦士長、こいつは助けてやってもいいんじゃないでしょうか?」


 「いや、だめだ。」


 鋭い目つきでゴブリンを一瞥するとハンダは即座に返答した。そして、そいつから目を離すんじゃないぞ。とも。

 ゴブリンの常套手段だ。助けを乞いそして裏切る。こうして、何人もの冒険者や戦士たちが志半ばで倒れていった。自らの部下をそんなことで失いたくはない。


 「そう、ですか」


 「殺れ」


 ハンダから出てきた言葉に戦士は無慈悲な返答に驚きを隠せない。命を絶つための一撃は一向に放たれなかった。


 「俺には、命乞いをしているものの命を奪うような、命を粗末に扱うことはできません」


 「そうか」


--バシュ


 あたりを鮮血が染める。ハンダの一刀によりゴブリンの首が真っ二つになった。


 「なんで?なんであなたほどの人がそんなことをするんですか?神への冒涜ですよ。」


 「神への冒涜?お前のようにあいつらに情を与え、殺された仲間を俺は見た。弱っているあいつらを助け侵され殺された人を俺は見た。なんと言われようとそんな姿はもうみたくないんだ。」


 ハンダの血のにじむような言葉は静かだが、沁みた。それ以上、戦士は何も言えなかった。自分がいかに子供であったのか。どれだけ、戦士長が辛いみじめな思いをしてきていたのかを知り。

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