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異界の料理人(感謝の印)

 村の広場では羽毛うもうが朝早くから料理をしていたようだ。


 「いい匂い~匂いだけでほっぺたが落っこちちゃいそう・・」


 これまでに嗅いだことのない匂いが村中を包んでいる。鼻孔をくすぐらせる匂いだ。

 ピクシーの村では料理はそれほど盛んではない。調理法として焼く、茹でる、潰す、切るしかないくらいだ。

 そんな環境で生きてきたハナは目を疑った。


 羽毛うもうが料理をしているのは素材の色もしくは焦げた黒色ではなくカラフルなのだ。


 「なにをしているの?匂いだけでこんなにお腹が減るなんて初めての経験よ」


 「ん?起こしちゃったかな。ごめんね。昨日は色々と迷惑をかけちゃったから少しでもお礼をしようと思って、俺にできることと言えば料理を作るくらいだから。泊めてもらった家にあった包丁とマッチを勝手に借りちゃったけど、いいよね?」


 「それは構わないけど。この匂いにその料理の色どうして?見たことも嗅いだこともない!!」


 「ああ、ピクシー村ではあまり調理をしないって聞いて調味料とかないよなって思って料理に使えそうな素材がないか周辺を探索してみたらノビルとかシソとかハーブとか転生する前の世界でもあった植物があったからそれを使っているんだよ。他にも見たことない植物がたくさんあったから後で色々試してみたいと思っているけど。」


 そういうと何故かニヤニヤしている羽毛うもうが気持ち悪いなぁと思うハナであった。結局なんでこんな匂いがするのか料理について全くの知識がないピクシーにはよくわからない話だった。


 にしても、オークがこんなにも香ばしい匂いにきめ細やかな脂、筋肉質な肉だとは・・・ケンショウに教えてもらうまでは全く想像もつかなかったよ。

確かに、見た目豚とかの感じだけど。実際にどんな味がするのか、料理人としても一人の生き物としても気になる(;゜д゜)ゴクリ…


 オークのお肉が香ばしい匂いを漂わせ始めたことによって村のみんなが起きてきた。そして朝から騒がしい声も聞こえてきた。


「ちょっと、ちょっと、ピクシーの村で料理の匂いがするってどういうこと。お腹すいた~~~」


「病み上がりのおいらに沢山食わせておくれ~」


モルサとケンショウだ。何でこう五月蠅いのだろう。やれやれと思いながらも、異世界の人間以外にも自分の料理は通用しそうなことを感じて羽毛うもうはうれしくて笑みがこぼれている。


 「そろそろ完成するぞ!沢山、材料もあるし腹いっぱい食ってやろうぜ!殺生したら残さず食べるってな」


 「わかってるじゃない!やっぱり、羽毛うもうは普通の人間みたいに意味もなく生き物を殺すだけじゃないのね。」


 「モルサの意見は偏っていると思うけど、羽毛うもうは特別いいやつだよな~。」


 褒められなれていない羽毛うもうはケンショウに素直に褒められ恥ずかしくなり、そそくさと料理の説明に移った。


 「今日の献立はオークの香草焼きにオークの油で揚げたオークのから揚げに蒸して燻製にしたハムだ!調味料や食材が少なくってこのくらいしか今は作れなかったけど、お礼を兼ねて精いっぱい作らさせてもらった!存分に食べてくれ!」


 「こちらこそよ。でもお言葉に甘えていっただきまーす!!!」



 村ではそこかしこから”うめっー”とか”こんなの食べたことないほっぺたが落ちちゃいそう”という言葉が聞かれ次第に料理の誉め言葉で溢れていった。

料理人として自分の作った料理が美味しそうに食べられるのを見るのは一番の幸せだ。羽毛うもうはこの村を救うことができて本当に良かったとこの時心から感じた。


 朝からピクシー村はお祭り騒ぎとなり、その喧騒は一日中続いたのであった。

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