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異界の料理人

「ケンショウ、羽毛うもうさん!」


 ハナは一生懸命に2人の体を揺らし、声をかけ続けるが返答がない。




 ハナの頬を大粒の涙がこぼれ落ちていく。モルサがハナに近寄り、静かに抱き寄せる。二人で静かに悲しみを分かち合った。




 悲しみにくれていると村のどこからともなく「外に放り出しておくのは可哀想ね」との声が出てきた。

 まったくその通りだと、感じたハナは集会所に2人を移動させることとした。




 エリス台地では夜は霜が出るほど寒くなる。

 そんな場所で動かなくなった彼の体を外に放り出しておくのは罰当たりだろう。間違いなく、彼らは村の英雄なのだ。





 移動先となった集会所は村で一番大きな家(人間サイズでは小さいが)だ。ここなら2人を夜風に当てる心配もない。




 2人を集会所に運んだあとはもう夜も深くなっていた。既にできることはない。残念だがそれぞれが家に帰り明日に仕事を持ち越すこととなった。

 明日以降は、壊れた家の修理や2人の葬儀、防衛策の策定などやることは山積みだ。

 精神をすり減らしたため本来であればすんなりと眠りにつくことができるであろうが、ハナは例外だった。大好きな親友の死。それは彼女にとってどうしようもないことでどうしても避けたいことだった。彼とは一生一緒にいることができると思っていた。将来は子供も作って歳をとっても笑っていられるかもなんて。昨日までは本当にそう考えていた。

 だが、すべて叶わぬ夢になってしまった。




 ハナは産まれてきてから今日ほど泣いたことはないというくらい涙を流した。外では人目もあり、実感もなかった。今でもあまり実感はないが、耐えがたいほどの苦しみ、寂しさを感じる。涙が枯れたと思えるほどに泣き、彼女は眠りに落ちていった。


 


 ---------




 「羽毛うもう、助けに来たよ。」



 声が聞こえる。聞いたことがある声だ。甲高いが芯のある声。

 


 「俺だよ、ケンショウだよ」



 そういえば、そんな名前の奴にあったことがあるような気がする。

 検証といえば、美味しい越前ガニ料理を考えと

かないと、今年の冬場を乗り越えられないな。どうしようかな



 「そんなこと考えないでくれ、おいらはピクシーのケンショウだよ。羽毛うもう死なないでくれ。助けに来たんだよ」



 え、ピクシー?

 そうだ、俺は異世界に転生して、ピクシーにあって村に行ったらオークがいて、戦ってオークにやられて、あれ、俺死んだのか?



 「死にかけているから助けに来たんだ。一緒に村に戻るぞ」




 いやでも、俺。異世界じゃ何も役に立たないし。

 そんなことを伝えるも手を引っ張られ意識が失われていった。



 ------------




 いってぇぇぇぇぇ!!!!




 集会所から大きな声が聞こえてきた。___


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