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夏の終わりに彼女は消えた  作者: 烏川 ハル


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3/3

夏休みが明けて

   

 夏休みが明けて二学期が始まると、阿部くんの隣は空席になっていました。

「残念なお知らせがあります。おともだちの小笠原さんですが、お父さんの仕事の都合で……」

 と切り出すユキコ先生は、いつものニコニコ顔ではありませんでした。


 小笠原さんは、夏休みの間に遠くへ引っ越してしまい、また転校していったのだそうです。

「ええっ!」

「いなくなっちゃったの?」

「サヨナラも言わずに……」


 教室がざわめく中、阿部くんは、鬼子母神の朝の小笠原さんを思い出していました。

 特に「()()()()()()()()()()()()()()入谷の鬼子母神の辺りに住んでいた」という発言です。

 考えてみれば、一年以上同じ土地にいる者ならば、ああいう言い方にはならないはず。つまり、それほど頻繁に引っ越しを繰り返す家庭環境だったのでしょう。


 ようやく理解すると同時に、もう一つ気づいたことがありました。

 夏休みの間ずっと彼女について気になっていたのは、一種の初恋だったのだろう、と。

 彼女が教えてくれた花言葉が、改めて阿部くんの頭に浮かびます。

「はかない恋……」



 その後。

 二度と彼女と会う機会のないまま、阿部くんは大人になりましたが……。

 今でもアサガオを見かける度に、ふと小笠原さんの笑顔を思い浮かべるのでした。




(「夏の終わりに彼女は消えた」完)

   

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