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06:旧魔王四天王・ソフィア

 ミャルケーさんとの顔合わせが終わって五日が経った。


 次の四天王との顔合わせが決まったので、私達は待ち合わせ場所に向かっているんだけど・・・


 「ねえ、いつまで歩くの?」


 宿を発ったのが三日前。


 そこから三日三晩ほとんど休まず歩き続けている。

 とっくにラウバーン王国を出て、どこの領土でもない未開の地に入っているのに・・・いまだに目的地に到着する気配がない。


 「そろそろのはずだが・・・っと、着いたか」

 「え?」


 ルシニャーが「着いた」という場所。

 周囲は草木も何もない文字通りの枯れた土地。

 人間どころか魔人も住めるような場所じゃなさそうなんだけど・・・。


 「ほんとにここなの?」

 「ああ、奴の気配がする」

 「私も感じます。ここで間違いないでしょう」


 う~ん、私には何も感じない。

 魔人にしかわからない何かがあったりするのかな?


 「会う前に先に言っておくぞ。自分の身は自分で守れよ」

 「申し訳ありませんが、私もアンナ様を守る余裕はないかと・・・」

 「え、そんな危ない人なの?」


 シモンズさんですら余裕がないってヤバくない?


 うわぁ、急に会うの嫌になってきた・・・




 ◇




 その場でしばらく待機していると、周囲の気配が変わった。

 周囲が桃色の霧に包まれていく。


 「来たな」

 「来ましたね」


 なんというか、これは・・・何?

 よくわからないけど、頭がぼんやりするような感じがする。


 っていうか、ルシニャーもシモンズさんもなんで私の後ろに隠れるの?


 「―――懐かしい匂いがすると思ったら」


 どこからか声がする。

 だけど、姿は見えない。


 「すっかり可愛らしい恰好になったわね、魔王様?」

 「我は既に魔王ではない。今の魔王はこやつだ」

 「へぇ・・・」


 姿は見えないのに、じろじろ見られている感じがして気持ちが悪い。


 「確かに、魔王様の魔力は引き継いでる。シモンズの話は本当だったのね」

 「私が魔王様に関するお話で嘘をつくとでも?」

 「アタシは自分で見た物しか信じないのよ。・・・さて」


 周囲の霧が一点に集まって・・・人の形になっていく。


 やがてそれは、金髪の美しい女性の形になって―――――


 「いただきまーす」

 「――――――ッッッ!?ンーーーーー!」


 え?何?ちょっと待って!?

 私キスされてる!?


 「ああ、始まった・・・」

 「アンナ様、お気を強くお持ちください・・・」

 「ンーーー!ン゛ン゛ーーーーー!!」


 なんで二人とも離れていくの!?


 助けてーーーーーーーー!




 ◇




 「という訳でな。ソフィアはキス魔なのだ」

 「ルシファー様に拾われる前は、道行く人々に性別も種族も見境なく襲い掛かっておりましたからねえ・・・」

 「失礼ね!アタシだってちょっとくらいは選んでたわよ!」


 数十分に及ぶキス地獄から解放されて・・・ようやく落ち着いたのか、普通に会話が始まった。

 ・・・これが私のファーストキスって、悲しすぎない?


 「さて、自己紹介かしらね。アタシはソフィア、サキュバスよ。アタシの能力はちょっと特殊でね。本来サキュバスは男性に対する魅了しか出来ないけれど、アタシは性別種族関係なく一定の条件が整えば魅了できるわ」

 「条件ですか?」

 「そう。相手に性欲があるかどうか、ね。無ければアタシの能力は使えないわ」


 まあ、淫魔っていうくらいだし当然か。


 「ソフィア。新しい魔王様には悪戯は仕掛けてはいけませんよ」

 「我はプリンの件をまだ許してはおらんぞ」

 「わ、わかってるわよ!アタシだってこんな所に隔離されて反省したんだから!」


 あー・・・こんな何もない所になんで居るのかと思ったら、懲罰の辺境ってここだったのね。


 「基本的に裏での潜入はミャルケーが、表での情報収集はソフィアが担う事が多いな。ククルと次に会う四天王が戦闘要員だ」

 「今までの三人とは違った形で変わっておりますが、同様に悪い奴ではありませんので・・・」

 「あ~、アイツが最後なのね・・・」


 ねえ、毎回そうだけど会う前から下げるのやめない?


 私、ほんとに会いたくなくなっちゃうよ?




 ◇




 アンナ様とソフィアの顔合わせが終わり。

 次の目的地への移動の準備をしていると、ソフィアに声を掛けられた。


 「シモンズ」

 「ああ、ソフィア。どうかなさいましたか?」

 「どうかなさいましたか、じゃないわよ!アレは何!?」


 やはりミャルケー同様、ソフィアも気付いたようですね。


 「アタシ達はこれからこの世界をぶち壊そうとでもいうの?」

 「そんな事ある筈がないでしょう」

 「あるわよ!彼女、歩く世界崩壊爆弾みたいなモノよ!?」

 「・・・そこまで、酷いですか」


 私は魔力を視るのは得意ではないので、察するのが限界でしたが・・・

 魔法のスペシャリストでもあるソフィアがここまで言うのは、相当なのでしょう。


 「今は辛うじて勇者の魔力が抑え込んでるみたいだけれど・・・一歩間違えば、その瞬間終わりよ?」

 「ならば、私達で支えていくしかないでしょう」

 「アンタ、簡単に言うけどねえ・・・」


 難しいのは百も承知です。


 ですが、ルシファー様の御意思を継がれている以上・・・

 私に出来る事は、アンナ様を全力で支える事のみ。


 「はぁ・・・」

 「ご協力、願えませんか」

 「アタシに選択権ないでしょ?・・・さっきキスした時に、ほんの少しだけどアタシの魔力を流し込んで魔王の魔力を抑制しておいたわ。気休め程度にしかならないでしょうけどね」

 「貴女のキスに意味があったのですか・・・!?」

 「アンタちょいちょい失礼ね!?」


 なんだかんだ言いつつも、ソフィアもルシファー様に心酔した者の一人。

 その御意思を継がれているアンナ様に思う所はあるのでしょう。



 ・・・それにしても、歩く世界崩壊爆弾ですか。


 言い回しはともかく、あまり時間は残されていないようですね。

いつも誤字報告ありがとうございます。


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