03:旧魔王四天王・ククル
翌朝、シモンズさんが私の部屋へとやってきた。
どうやら四天王との顔合わせの予定を立ててきてくれたようだ。
昨日の夜中に向かったはずなんだけど・・・仕事が早くて凄い。
「魔王様、まずは魔王四天王の"ククル"にお会いしていただこうと思います」
「あ~・・・あの人・・・」
魔王四天王、ククル。彼女は私も知っている。
何度も何度も戦ってきたけど、一度も勝ててない。負けてもないけど。
可愛らしい名前だけど、彼女はアンデッド。
しかも、元が数百年前の聖女という事もあって、浄化魔法が通用しない。
煮ても焼いても切っても潰しても死なないという不死身の魔族だ。
「魔王様とは幾度となく剣を交えた相手だとは思いますが、ククルは良くも悪くも細かい事を気にしない性格なので問題はないかと思われます」
「それならいいけど・・・」
私、彼女の首を何百回と切り飛ばしてるんだけど大丈夫かな・・・?
「我もイラっとしたら木っ端微塵にしていたしな。問題なかろうよ」
いや、ルシニャーさん!?それは問題じゃない!?
◇
お昼までのんびりと過ごした後、待ち合わせ場所へと向かう。
待ち合わせ場所は、ラウバーン王国の端、アズール聖国との国境付近にある墓場。
ここにククルさんの墓があるそうで、居心地がよくて寝床にしているらしい。
・・・墓場で寝るって、私には考えられないな。
「アンナ様、こちらでしばしお待ちを」
「うん」
墓場の入り口に着いた後、シモンズさんがククルさんを呼びに行く。
ちなみに、人目がある場所で魔王様とかアナスタシア様とか呼ばれる訳にはいかないので、外ではアンナと呼んでもらう事にしている。
バレたら面倒になるのはわかりきってるしね・・・対策するに越した事はない。
「アンナ様、お連れしました」
「う゛~・・・日差しが気持ち悪い゛ぃ゛~・・・」
しばらくして、シモンズさんがククルさんを・・・肩に抱えて”持って”きた。
え、どういう状況ですか・・・?
「ククルはアンデッドだからな。昼間はまともに動けんのだ」
困惑していると、ルシニャーが補足してくれた。
なるほど、元が聖女の身体でもアンデッドになると昼間はダメなのね。
「ほら、ククル。アンナ様にご挨拶を」
「やっほ~・・・ククルだよ~・・・見ての通り、昼間は役立たずだけど・・・夜になったら頑張るからよろしくね~・・・」
「うん、よろしく」
ククルさんの身体は、色こそ白いものの・・・人間と大差ないように見える。
私は大罪人として指名手配されてるし、ルシニャーはルシニャーだし、シモンズさんは人間にしては背が高すぎるから怪しまれてしまう。
その点、アンデッドとはいえ元が人間なククルさんなら、日中は無理でも夜なら情報収集とか色々やってもらえそうかな。
何より、私に恨みとかなさそうでよかった。
もう首を飛ばしたりは(多分)しないから、安心してね。
◇
その後、シモンズさんがククルさんを元に戻して宿に戻ってきた。
基本的にククルさんは戦闘要員なので、いつもは墓場で待機らしい。
「さて、残り三人との顔合わせだが・・・」
「面倒、でございますね・・・」
明日以降の話をするという事で、ルシニャーとシモンズさんと話し合いをしようとしてるんだけど・・・面倒ってどういう事なの・・・?
「面倒?」
「うむ。ククルはアレで割と常識人だが、残りの三人は、な・・・」
「実力こそ四天王の名に恥じないのですが、その・・・単刀直入に申しまして、バカと痴女と筋肉狂でして・・・」
バカは私も知ってる気がするけど、痴女と筋肉狂って何!?
「恐らくですが、後者二人はアンナ様も御存じない筈。何せ、アンナ様が勇者として活動されていた間は懲罰で辺境に飛ばされておりましたから」
四天王なのに懲罰受けてるの・・・?
なんか会うの怖いんだけど。
「そうだったな・・・我の楽しみにしていたケーキを勝手に食いおったからな・・・」
「あの時のルシファー様の怒りは恐ろしかったですね・・・城の形が変わりましたし・・・」
いや、理由可愛いかよ。
ケーキの恨みだけで城の形変えないでルシファー様。
「私、会うの嫌になってきた」
「ご心配なく。救いようのない程の変わり者ですが、根はしっかりとした連中ですので」
「いや、根がしっかりしててもね!?」
っていうかしっかりしてたら痴女と筋肉狂なんて呼ばれてないでしょ!?
「我が居れば暴走はしなかろうよ。ケーキの件を許してはおらんしな」
「魔界で一番有名なお店の期間限定、数量限定の特製ケーキでしたからね・・・私も食べられなかったので、まだ許せてはおりませぬ」
一人と一匹から黒いオーラが見える、見えてるよ・・・。
これ、私が顔合わせする前に二人は生きてるのかな・・・?
◇
「さて、顔合わせの件はそこまでにしておいて。シモンズ」
「はい。アンナ様、こちらを」
シモンズさんから、青い宝石のついた指輪を渡された。
「これは?」
「我が人里でスイーツ巡りをする時に使っていた『変化の指輪』だ。それを付けていれば、見た目だけではあるが姿を変化させる事ができる。手配されたままでは動きにくかろうとおもってな、シモンズに言って城から持ち出させた」
「大変でしたよ、今魔王城は新魔王軍が抑えてますからね」
え、それは便利。
私の見た目は勇者独特の黒髪に黒い瞳なので嫌でも目立ってしまう。
それが隠せるのなら凄く助かる。
「ありがとう、シモンズさん」
「いや、我にも感謝しろ」
いやだって、ルシニャーは何もしてないし。
「次の四天王との顔合わせ場所が、どうしても人目に付くからな。その対策だ」
「かなり驚かれるかと思いますが・・・覚悟しておいてください、アンナ様」
え、一体どこに行くの?
聞いても教えてくれなかったので、この日は気になって中々眠れなかった。
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