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02:旧魔王軍参謀・シモンズ

 私の処刑が行われるはずだった日から三日が経った。


 あの後すぐに処刑場を脱走し、国を抜け出した。

 現在は、隣国であるラウバーン王国に身を潜めている。


 オルスタ王国と比較的良好な関係を築いているラウバーン王国でも、私は大罪人として指名手配されている。


 そんな危険な国に、なぜ滞在しているのかというと―――


 「行ってきたぞ」

 「ありがとう、ルシニャー」

 「・・・その呼び方はやめろ」


 ”前魔王”ルシファーの側近だった魔族を呼び集めるためだ。



 魔王ルシファーの最期の願い。


 それは、魔族とか人間とかそんなのを気にしなくていい、全ての種族が皆笑って暮らせる世の中を作る事。


 そのためには・・・逆らう気も起こらない、圧倒的な力を付けないといけない。



 私も頑張るけど、私一人の力では目標達成は到底不可能だ。

 勇者の力と魔王の力を同時に得た今、戦闘力では私に敵う相手はいないと思う・・・けど、今の私には絶望的に知識が足りない。


 なので―――


 "最期の願い"とか、いかにも今から死にます的な雰囲気を醸し出していたルシファーの魂をそこらへんにいた黒猫に無理矢理押し込んで生かした。


 私の唯一の友人だからね。死ななくてよかったよ。ホント。

 これから酷使すると思うけどよろしくね?



 で、その黒猫ルシファー・・・ルシニャーに、まずは何をすればいいか相談したら。


 「まずは仲間を集める事だな」


 との事だったので、側近を呼び集めてもらう事にしたのだ。




 ◇




 「いらっしゃいませ」


 その日の夜。

 私はルシニャーに従って、とある酒場へとやってきた。


 ちらほらと飲んでいる客が、私を凝視してくる。

 そりゃそうよね、明らかにお酒飲める歳じゃないもんね、私。


 『そこにいる店主に、さっき教えた暗号を伝えろ』

 『わかった』


 外で待機しているルシニャーから念話で指示を貰う。

 ついてきてほしかったけど、流石に猫が酒場に入るのは衛生的にね。


 「ご注文を」

 「水をください。ワイングラスで」

 「氷は如何いたしましょう?」

 「3つお願いします」

 「畏まりました。こちらでお待ちください」


 何とか間違っていなかったようで、奥の席に案内してもらえた。


 ・・・暗号の意味が全くわからないんだけど、後で教えてもらえるのかな。



 本当にグラスで氷が3つ入った水を持ってきてくれたので、それを飲みながら待っていると―――


 「相席、よろしいですかな?」


 背の高い老人が声を掛けてきた。

 周りの人は全く気付いてないようだけど、勇者の私にはすぐにわかった。


 この人、魔人だ。しかもかなり強い。

 魔力の質だけならルシニャー・・・じゃない、ルシファーにも匹敵するんじゃ?


 「はい、どうぞ」

 「ありがとうございます」


 どう返していいのかわからないので、とりあえず返事をして座ってもらう。


 「・・・周囲に防音魔法を施しました。これより話す事は周囲に漏れる事はありません」


 話す事がなくて困っていると、老紳士がぽつぽつと語りだした。


 「先代魔王のルシファー様よりお話は伺っております。まずは、新たな魔王様の誕生を心よりお祝いすると共に・・・旧魔王軍全軍の魔王様への忠誠を、旧魔王軍を代表して私"シモンズ”がこの場で誓わせていただきます」

 「あ、ありがとうございます?」


 私、結構魔王軍と戦ってきたけど・・・

 シモンズなんて魔人、いたっけな?

 ここまで強そうなら忘れる事ないと思うんだけど。


 『基本的にこやつは裏方だったからな。知らずとも無理はない』


 必死に思い出そうとしていると、ルシニャーが補足してくれた。


 なるほど、それなら私が知らなくてもおかしくはないか。


 「聞くと、アナスタシア様は先代魔王様の御意志を継いでくださるとの事。微力ながらこのシモンズ、魔王様の悲願達成に向けて尽力させていただきたく」


 そういって、丁寧に頭を下げてくるシモンズさん。


 子供の私に頭を下げるなんて、礼儀正しい人だなあ。

 ・・・なんて思ったけど、今の私は魔王か。そりゃ頭下げるか。

 今まではこき使われる側だったから、どうにも慣れない。


 『脳筋揃いの魔王軍の中で唯一”智”を以って我を支えてくれた優秀な参謀だ。頼りになるぞ』


 結構前線でバリバリやれそうな強さだと思うんだけど、頭も使えるのか。

 確かにそれは頼りになりそう。


 「わかりました。これからよろしくお願いします」

 「ハッ!いつでもどこでも、何なりとお申し付けくださいませ」



 こうして、一人目―――魔人のシモンズが仲間?配下?になった。




 ◇




 シモンズとの軽い挨拶を終えた後、酒場の隣にある宿へとやってきた。


 ここは魔族が経営する宿で、魔王の私やルシニャーが泊まっても問題ないらしい。


 「さて、今後だが」


 部屋で寝る準備をしていると、ルシニャーが声を掛けてきた。

 ちなみにシモンズさんは他の仲間へ報告に行っているのでこの場にはいない。


 「我への忠誠心が高かった連中はシモンズに任せればいいとして、"新魔王軍"と呼ばれる連中への対応をしなくてはならん」

 

 新魔王軍?


 そういえばシモンズさんも"旧魔王軍"と言っていたけど、新旧あるの?


 「我の死後に発足した、魔族至上主義の厄介な連中だ。元々我の考えに賛同していなかった奴らで構成されるバカの集まりだよ」


 人間にも色々な考えを持つ人がいるように、魔族も多種多様らしい。


 「一応連絡はとったが・・・新しい魔王に従うつもりはないと言われたよ」


 じゃあ、どうするの?


 「簡単な話だ。圧倒的な"武"で押さえつけてやればいい。我がやっていたように」


 うわぁ。


 あんまり無理矢理とか好きじゃないんだけど・・・


 「奴らは頭がよろしくないからな。長いものに巻かれる連中だ、気にせず叩きのめしてやればいい」


 そんなものなのかな・・・。


 っていうか、私の頭の中を読んで話すのやめてくれない?


 「楽でいいだろ」


 たしかにそうだけど。


 「とにかく、我の忠実な部下であった魔王四天王との顔合わせが済み次第行動に移るぞ。戦闘にもなる、覚悟しておけ」


 うーん、仕方ないか。



 今後の方針も固まったし、今日は寝よう。

 勇者時代には堪能できなかったふかふかベッドだし、いい夢見れるかな。



出来るだけ毎日更新で頑張ります。



モチベーションに繋がりますので、よろしければ評価をお願いします。


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― 新着の感想 ―
[良い点] ・ルシファーという名前について オリジナリティがないと感じましたが二話で改めました。 ニャーをつけることでオリジナリティが増して、可愛さが追加されたので良いと思います。 実は本名がパワ…
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