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第5話 目指すは王都

今回、いつもより短いです。ごめんなさい

「エイジ様。起きていらっしゃいますか?エイジ様」


 翌朝、女の人っぽい声で目が覚めた俺はうっすらと目を開く。だけれど、自分が使っていたものよりも柔らかな布団に包まれていることもあって、再び寝ようとした。

 ドアがコンコンとノックされるも、抗い難い魅惑の温もりに誘われ返事をしなかった。すると、失礼しますと声がかかった後にドアが開く音が聞こえた気がした。気のせいかと微睡(まどろ)みを楽しんでいると、


「エイジ様。朝でございます。起きてくださいませ」


 突然耳元で囁かれたことに驚き、飛び起きる。きょろきょろと周りを見渡すと、ベッドの横にメイドさんが2人静かに佇んで(たたずんで)いた。目を見開いて固まる俺に


「「おはようございます。エイジ様」」

 

 の言葉ときれいな礼をする。


「お、おはようございます……」


俺が戸惑いつつも挨拶を返すと、2人は再度口を開き


「もうじき朝食の用意ができますので、その前に身支度を」


「あ、はい」


 メイドさんの勢いに流されるままに洗顔と着替えを済ます。流石に服を着替えるのは1人でした

 メイドさんの案内で昨夜夕食をとったダイニングへと向かう。部屋に入ると既に辺境伯様の息子二人は席に着いていた。


「やあ、よく眠れたかい?」


「はい。お陰様で」


 柔らかな笑顔で声を掛けてきたのは長男さん。朝からピシッと服を着て真面目だなあ。逆に次男さんの方はまだ眠いのかぼんやりとした顔をしている。


「おはようございます」


 案内された席に着いて、次男さんに向けて挨拶するも返事無し。どうしたのかと思っていると、長男さんが苦笑しながら


「すまない。こいつは朝が苦手でね。朝食が並び始めるとその匂いで目が覚め始めるから心配ない」


 いや、犬か!寝ぼけてるからって臭いで目が覚めるのはどうなんだ!?


「あらあらイーサンはまた半寝で来たのね」


「おはようございます。お兄様。エイジ様」


「ああ、おはよう。リリアン」


「おはようございます。奥様、お嬢様」


 ダイニングにくすくすと笑いながら入ってきたのは奥様とお嬢様。イーサンは次男さんの名前で、リリアンがお嬢様の名前だ。ちなみに奥様はシャーロット、長男さんはベンジャミンという名前だ

 席に着いた奥様達と話をしているうちに辺境伯様が来られ、朝食が運ばれてくる。夕食よりは簡単なものとはいえ、なんと豪勢な。社会人2年目の朝食なんて食パン1枚とコーヒー1杯で終わる。美味いんだけど、胃が発狂しなければいいけど……


 



 貸してくれていた部屋に戻ってから、王都に向かうのにいろいろ準備がいると思って聞いてみると、辺境伯様が用意して下さったらしい。王都に向かう間の食料なんかは昨日のうちに第2部隊の騎士たちが買いに行っていたみたいで、俺には旅に出るための服を数着と外套、護身用の武器として短剣を渡された。正直、渡されたところで扱える気が一切しない。金属だからそれなりに重いし、両手でなら振るえるレベル


 出発する時間が近づいてきたから、クラークさんに案内されて騎士たちが準備している場所に。そこには馬がずらっと並んでて、全員が荷物を固定したり馬の世話をしている。当然だけど、馬に乗ったことなんかない俺はというと


「じゃあ、ここに乗ってください」


 案内がクラークさんからレックスに変わって、連れてこられたのは一台の荷馬車。主に食料や水なんかが乗せられてるんだけど、その中に交じって座ってろとの事らしい。いや逆に馬に乗りますよ、ほら乗ってくださいとか言われても無理だし。誰かと一緒に乗れって言われても気分が微妙だし。我儘(わがまま)なのは分かってる


 少しでも中のスペースを確保しようと荷物を整理していると


「エイジ!」


誰かに呼ばれたので荷馬車から顔を出す。辺境伯様とそのご家族が来ていた。


「あれ?どうかしました?」


「いや、見送りに来ただけだ。」


わざわざ辺境伯様が?暇なのか?


「いや、暇ではないぞ?」


「あれ?声に出てました?」


「顔に出ていた」


 失礼な発言だったかと不安に思ったけど、大丈夫みたいだな。よかった


「そこそこ長くなるからな。エイジは強くないから少し心配だっただけだ。」


「俺が弱いのは知ってますから大丈夫ですよ」


「まあ、騎士が一緒にいるんだ。カイルもいるし問題はないだろう」


 辺境伯様は笑ってそう言った。俺も大丈夫だと思うけど、カイルってそんなに強かったんだなあ

 カイルやレックスと出発前に話してくると言い、離れていった辺境伯様を見届け、荷物の整理に戻る。しっかし、こんなに必要なのか。大変だな、遠征も





 辺境伯様ご一家に見送られグレンゼを出発し、魔国の王都に向けて進んでいく。森を抜け、草原の上に続く街道をガタゴトガタゴト

 出発した日の夜、俺は尻の痛みに悩まされていた。いやね。時々体勢変えたりしてたし、歩いて森を抜けた時よりも疲れはずっと少ないんだよ。でもな、あんなに揺れると思わなかったよ。クッションついてないから尻に直接衝撃が伝わるし、たまに大きく揺れると普通に尻を打ちつけるから痛みが辛い


 野営の準備が終わったらしく、夕食の支度をするということで手伝う。一応一人暮らしの中で多少の自炊はしていたから簡単なものなら作れる。騎士も食事の準備は野営時の訓練の一環として身に着けるらしく、スムーズに準備が進む。ただ、


「なにこれ……」


 俺が手に持ってるのは、ジャガイモっぽい物。説明を聞いた限りはジャガイモが一番近い。しかしだ。その色が紫だと不安になるのは俺だけじゃないはず

 近くで一緒に準備していた奴に確認したけど、腐っているわけではなく元からこういう色らしい。不安を押し殺し、トントンと野菜たち?を切っていく。鍋に放り込んで干し肉を放り込んで一緒に煮込んでいくと、あら不思議。おいしいスープができた。ただし色合いが若干不安になるが……


 パンとスープで腹を満たしつつ、王都への旅の初日は幕を閉じた。




 あとは、森からグレンゼに向かった時と同じ。似たような景色が続き、時々食料を追加するために町へと寄る。人数が人数なだけに宿に泊まることは無く、必要な物を買ったら町外れで少し休憩してから出発。俺は体力の無さから回復するために街への買い物には一度も行かなかった。

 グレンゼからの旅の中で多少慣れることはできたが、あまり何度も乗りたいとは思えなかった。


「もうすぐ王都に着きますよ」


 これが最後だという昼休憩の最中にレックスが声を掛けてきた。


「あ、そう。良かった」


「王都に着いたら、また忙しくなりますから。今のうちに休んでいてください」


「え、何すんの?」


 げんなりした俺を見ながらレックスは


「着いたら分かりますよ」


と言い残して、戻っていった。


さあ、10日間の旅もこれで終わり。王都に到着だ


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