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第2話 さようなら地球、こんにちは異世界

前回より短くなりましたが、第二話投稿です。多分、一話あたり三千字前後を基本としてやっていきます。

………短いですかね?

「大丈夫ですか?」


「……」


「聞いてます?」


「……」


「おい!!!」


「へあ!?」


「お、生きてますね。なら良し。」


 人間にある筈の無い物が目の前の男にあるのを見て呆気に取られていると、唐突に耳元で大声を出され驚いてしまった。だけど、いくらボケっとしてるからって耳元で大声を出すのはどうなんだ?


 不満な気持ちを込めて目の前の男を睨みつける。男は視線に気付いてこちらを見るが、すぐに目を逸らす。どこか納得できないがとりあえず、未だに抱えられている状態にいい加減恥ずかしくなってきたので、降ろすように声を掛けようとすると、後ろから聞こえた甲高い音に思わず振り返る。


そこには俺を抱えているのと同じ鎧を着た大勢の人が、俺を食おうとしていた花の化け物を攻撃していた。化け物は蔓を地面に横たえ、花弁は黒く燃え尽きている。先ほどの音は化け物の断末魔だったらしい。


「レックス」


「はっ」


俺にはどうしようもなかった化け物を易々と倒す様子に唖然としていると、男が一人こちらに声をかけてきた。やっぱり、その男にも角が生えている。ていうか、俺を抱えてるこいつの名前レックスかよ。


「その人族は無事か?」


「触手が巻き付いていた部分が少々赤くなっていますが、大きな外傷などはありません。」


「そうか、良かった。おい、お前さん。こんなところで何してるんだ。見たとこ、大した装備もしてないが冒険者か?」


 レックスに声を掛けた人は俺の方を向いて問いかけてくるが、冒険者ってなんだ?


「えっと、そのようなものじゃないんですが……」


「ん?なら一般人か?だったら余計ここにいるのは変だろ?ここはモートラムの森だぞ」


「どこですか?そこ」


「……」


 俺の答えに次第に怪訝な顔をし始める男。まあ、よく分かんねえ奴がいるとなるとそんな顔にもなるだろうけど


「ふむ、まさかとは思うけどな。お前さん、ステータスを見せてくれないか?」


 すてーたす?なんだそれ、ステータスの事か?いやいや、あんなのゲームの中だけだろ。何言ってんだ、この人は。


「ステータスなんて見た事ないですけど…」


「じゃあ、『ステータス・オープン』って言ってみてくれねえか?」


訳が分からないままに俺は、


「ステータス・オープン」


といった。すると、俺の目の前に突然パソコンのディスプレイのような画面が現れる。そして、そこにはいくつかの文字が書かれていた。


――――――――――――――――――――――――――――――――


名前 エイジ アサダ

種族 人族

年齢 23歳

性別 男

レベル、スキル、称号についての情報が存在しない為、表示不可能


―――――――――――――――――――――――――――――――


「え?ナニコレ」


 今まで見たことのない現象に目を見開く。ちなみに画面は俺の目の前に出て来てるから、当然俺を抱えているレックスにも見えるわけで、覗き込んできた男と一緒になって俺の頭上で話している。


「……隊長、これは……」


「やっぱりそうか。見覚えのない服装、普通なら知っているだろう知識がない。おまけにステータスに情報が存在しないと表示されると来た。」


「じゃあ、この人族は渡り人ですか。」


「だろうな。まあ、害は無さそうだしとりあえずこのまま保護するぞ。俺たちも帰るところだしな。」


「了解しました。」


 未だに何が何だか分かんないけど、どうやら俺はこの人たちに連れていかれるらしい。………とりあえず、降ろしてもらえないか?




 



 俺、いや俺たちは森の中を進んでいた。ちなみに俺は、何人かの兵士に囲まれる形で歩いている。俺の護衛だってよ。


 彼らは元々、森の中を進んでいたが、人の声が聞こえたってことで、進路を外れて様子を見に来たそうだ。で、その人の声ってのが、俺が花の化け物―あれは、ラフレシアじゃなくて、フェロシスフロスというらしい―に捕まって助けを求めた声だったわけ。思いっきり叫んでよかったわ~


 俺にはさっぱりだった道も、兵士たちにとっては慣れ親しんだ道なのか、迷うことなく進んでいく。いやはや、やっぱり道が分かる人たちについて行くって楽だし、安心するわ(笑)


 俺を助けてくれた兵達はこれから自分たちの国―魔国プラクトムというらしい―の王都に帰るらしく、その時に俺の処遇を魔国の王、つまり魔王を含めたお偉いさんたちが決定するそうだ。


「ま、悪いようにはなんねえよ。魔王陛下は良いお人だからな。」


そう言って俺に笑いかけたのは、さっきレックスに隊長と呼ばれていた男。聞いてみると、魔国騎士団の第二部隊隊長らしい。名前はカイル。ちなみにレックスは副隊長だそうだ。


 分かったかもしれないけど、俺に笑いかけられるってことは、俺を護衛するメンバーに隊長と副隊長がいるってことなんだよ。普通、こういうのってもっと下っ端の人がやるんじゃねえの?俺がヤバい奴だったらどうするんだよ


 え?どう見ても鍛えてない体?仮に実は強くても、フェロシスフロスに勝てないレベルならどうとでも抑えられる?あ、そうですか……


 な、泣いてないからな!?これは、そう!目に汗が入っただけだ!!


改めて見てみると、ずいぶん大柄だな。二メートルぐらいあるんじゃないか?がっしりしてるし。レックスはカイルほどじゃないけど、俺よりは高いな。ちなみに、俺は168センチだから、175ぐらいか?……羨ましいな、おい。


 魔王ってのは悪逆非道なもんだと思ってたが、まあ、世界が違えばそんなもんか。俺を保護してくれるなら、善人な方が有難い。


「なあ、結局俺はどこにいるんだ?」


隣を歩いているカイルに聞くと、


「ああ、そうだな。簡単に言っちまうとお前さんが生きてきた世界とは別の世界だ。」


 ん?聞き間違えか?


「いや、そういうのは小説の中だけで結構です。で?どこなんです?」


「だから、お前さんの住んでたとことは違う世界の、モートラムの森の中だ。」


 どうも聞き間違えじゃなさそうだけど、俺の頭がおかしくなったのか?頭を打った覚えはないんだけど……


 頭を抱えながら左右に頭を振っている俺を見て、カイルは、


「訳分かんねえとは思うが、おそらく本当だ。俺達みたいなのがお前さんの住んでたとこにはいたか?」


「いや、いないけど。なあ、その角って本物なのか?」


「当たり前だろ。」


いや、サラッと言われても知るかよ。ていうか、やっぱ本物かよ、すげえな。


んで、違う世界って、異世界ってやつですか?ラノベに出てくるあれですか?……実在したんだな、知らなかったよ。


「マージか。帰る方法はご存知ですか?」


「何だ?急にえらい丁寧な話し方して」


いや―だって、よくよく考えたら?騎士団のお偉いさんだし?やろうと思えば俺の首チョンパッてできちゃいそうだし?今更かもだけど生存確率高めたいじゃん。


「ま、好きにすりゃいいけど、俺にそんな話方しなくていいぞ。かたっ苦しいのは苦手だしな。」


「そう言ってあげないでください。見たことも無い存在に囲まれてるんです。緊張しても仕方ないですよ。おまけに一番近くにいるのがこんな暑苦しいおっさんですし。」


え?


「おい、そんな言い方はねえだろ!?」


「何言ってるんです。基本脳筋で、勢いだけで生きてるような人でしょう?真面な人からしたら、あんまり関わりたくないんですよ。」


 うわあ……、めっちゃ言うなあ……。


「お前なあ、仮にも上司だぞ?俺は!」


「ええ、本当に。なんであなたのような人が一隊長でいるのか分かりません。」


 レックスって爽やかイケメンって感じなのに、口悪いなあ。ボロクソじゃん。あ、ほら。隊長さん拗ねてる。いや、それよりも…


「あの…、結局俺は帰れるんですか?」


 拗ねている隊長さんに代わって、レックスが俺の質問に答えてくれた。


 曰く、今までにも異世界から迷い込んだ渡り人はいたそうだが、その頻度は決して高いものではなく、レックスが知っている分では、四百年ほど前に一人現れて以来らしい。ちなみにその人は、この世界で人生を終えたそうだ。


「それまでにも渡り人がいたという話は聞いていますが、詳しい話は知りません。ただ、元の世界に帰ったのなら昔話の一つとして広まっていてもおかしくないです。ですが、そんなことは聞いたことがないです。」


 いや、もう聞きたくないから、その先は言わn……


「つまり、ほぼ確実に、あなたはこの世界で一生を終えることになります。」


 言いやがったよ、この野郎……


ああ…、さようなら地球、こんにちは異世界―――


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