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第1話 そこは森の中でした

処女作です。温かく見守ってください。


注)この作品では登場人物の視点でストーリーを進めるため、ら抜き言葉や話し言葉などを頻用しています。

 扉をくぐると………そこは森の中だった


「……ハ………?」


 どう考えてもあり得ない状況に、俺―――朝田栄治は口をポカンと開けたまま、茫然としてしまった


 ギーギーと聞いたことのない鳥?らしきものの鳴き声が聞こえる。


 ………いやいやいや、おかしいおかしい。は?なにこれ?いや、なんとなく状況が分か………る訳あるかああああ!!! 百歩譲って今森の中にいることは認めよう!ああ、認めようとも!!だが、だがなあ……休日にテレビを見てて、途中でトイレ行って扉開けたら森なんてことあるかああああ!!!!驚きすぎて、尿意がどっかいったじゃねえか!家のトイレは〇こでも〇アじゃねえぞ!


「舐めてんのかクッソがあああああああ!」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




「ハア……ハア……」


 思いっきり叫んだせいで、盛大に息切れを起こしているが、よほど深い森なのか声はまるで響いていない。何とか息を整えて、改めて周囲を見渡してみるが、


「…本当に森だな…」


 右を見ても左を見ても一面の緑。試しに一本の木に近寄って見てみる。幹は腕を回しても囲むことが出来ないほどに太く、その頂点は生い茂る葉で見ることが出来ない。他の木も似たような大きさみたいだな。俺の周り、今、木と草ぐらいしかねえじゃねえか……ん?


 たった今気づいたことに頭から、サーーっという音が聞こえた気がした。その事を認めたくはないが、確認しないわけにもいかず、油の切れた機械のように震えながら振り返る。視線の先には、何も無かった。そう、()()()()のだ。俺は自分が最初に居たであろう場所まで歩くが、そこにあったはずの扉は跡形もなく消えていた。


「………」

 

 もはや何も言う気にならない。本当ならこの理不尽な状態に大声を上げたいけど、そんな気力すらない。今だって、自分の顔から表情が抜け落ちてんのが分かるしな。


「はあああ……」


 大きく息を吐いて心を落ち着かせる。


 まあ、いいや。なんとなく可能性としてはあったしな。展開としてもあるあるだし。にしたってどうしろっつうんだよ。


「……歩くか」


 とりあえず、気の向くままに歩いていくことにして、今向いている方向へと進む。


 本当なら町とかがある方に行くのが良いんだろうが、今どこにいるのか分かんねえし、そもそもどこに町があるのか知らねえし。


「まあ、なるようになるだろ。」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 ただただ歩き続けて二時間ぐらいだろうか、俺はその時森の中を走っていた…………全力で


「うおおおおおおおおお!?」


 決して頭がおかしくなったわけじゃない。しかしだ、見たことも無い化け物が自分を追って来たとなると必死に逃げるのが普通だろう


 走りながら後ろを振り向くと、化け物が追ってくるのが見える。緑色の体に十歳ほどの子どもの大きさの体躯。手にはこん棒を持ち、粗末な布が申し訳程度に局部に巻かれている。体の大きさが違うお陰でそれなりに距離を離しているが、こっちは不慣れな森の中を走っている。何時(いつ)こけて捕まってもおかしくない。


 走りにくいジーンズを穿いて(はいて)なかっただけましか……。今日が休日で良かったな……

スウェット万歳


 


 そもそもなんで俺があんなものに追いかけられているかというと、遡ること十分程前。


 俺はのんびりと森の中を歩いていた。見たことのない植物にキョロキョロと目をやっていると、右斜め前の茂みの方から声のようなものが聞こえた。てっきり人が居るのかと思って迂闊に近づいたのが悪かった。茂みの奥を覗いてみると、奴らがいた。奴らは動物、多分動物だと思うけど何せ最早原形をとどめてなかったからな。まあ、とにかく何かを食っていた。


 当然料理されたものとかじゃなくてそのまま食べてるもんだから、血とか内臓が見えて思わず叫んじまった。そしたらこっちに振り向いて、目が合ったんだよ。しばらくお互いに動かなかったんだが、先に奴らがギャギャって叫びながら俺の方に向けて走って来たから、慌てて俺も逃げ出して今に至るというわけだ


 


 ビュンっと、顔の横を何かが勢いよく通り過ぎていく。何かが飛んでいった方を見てみると、こん棒が大きな木にぶつかり、そのまま幹に食い込んで動きを止めた。


 後ろの奴らの中の一体が投げたみたいだけど、木に食い込むとかどんな威力してんだよ⁉しかも、さっき食ってたのを殺すのに使ったんか、所々赤くなってんのが余計に怖え!


 呑気に回想なんてしていたことで走る速さが遅くなっていたのか、化け物は先程よりも近くまで来ていた。


「クッソ!ここで死んでたまるかあああ!!!」


 俺は考えるのをやめてひたすらに走り続けた。




「ぜえ……ぜえ……」


 森の木々を使って化け物をやっとの思いで振り切った俺は、とてもじゃないがすぐに動ける状態ではなかった。


 つーか、日頃から運動してない俺でも、人間本気になったら、意外と走れるもんだな……

にしても、しんど……吐きそう…うぷっ…




 ようやく落ち着いてきた……吐きそうだったけど、何とか耐えれたか。それにしても、ここはどこだ?適当に走っちまったからな、道に迷ったか……いや、元から迷ってるようなもんか


 乾いた笑いをしながら辺りを見渡すと、


「何だあれ?」


 奇妙なものが目に入った。赤、黄、紫が入り混じったような色合いの直径二メートルぐらいの巨大な花だ。ラフレシアに似ている気もするが、こんなにも大きいのか?ていうか、色ヤバすぎるだろ。


 そのラフレシア?を見ていると、ふと芳しい香りがした。どうやら見ている花から漂っているみたいだ。その香りにつられるように花に近づいていく。花の1メートルほど手前まで行くと、突然足が引っ張られ、気付けば視線の先に地面が見えた。


「Oh…」


 顎を引くようにして花のある方を見てみると、花が多くの蔓を根元からのばしている。普段から腹筋を鍛えているわけじゃないから自分の足を見ることはできないが、一本の蔓が俺の方に向けて伸びているから多分あの花に捕まったんだろうな。感覚的に右足か?


 走っていた疲れからか、ぼんやりとそんな事を思っていると、


「は!?いや、ダメダメ!嘘だろ!?」


 花の中心部が開き、その中に鋭い歯が並んでいるのが見える。こんな植物聞いたことがない!たとえ、食虫植物の一種だとしてもこんなのがいれば必ず知っているはずだ。


 慌てて蔓から抜け出そうと暴れてみるが、まるで意味をなさない。むしろ、暴れる俺を抑えるためか、さらに幾本もの蔓が伸び、俺の手足と胴体を押さえつける。その力は強く、どれだけ力を入れて動かそうとも、ビクともしない。


「冗談じゃねえ!よく知らねえ所で、よく分かんねえもんに突然食われるなんて事あるかあ!」


 叫び声をあげ、抵抗する俺を嘲笑うように蔓は、俺を食らおうと自らの方へと引き寄せる。


「いや、マジでダメだって!俺なんか食ってもうまくねえぞ!ちょっ、誰かいねえか!?誰かいるなら助けてくれ!!!」


 そんな俺の声が届いたのか、左の方から何かが飛んできて、花の化け物に衝突した。


 ギャアアアアアアっと花の化け物が叫ぶ。飛来した何かがぶつかった部分は轟轟と燃え上がり、その身を焼く。身を蝕む痛みに耐えきれなかったようで、俺を捕らえていた蔓はたまらず、俺を放り出した。……上空に向かって


「へ?」


 突然自由になったものの、俺は逆様になっているため頭から地面向けて落下する。


 命の危機から解放されたかと思えば、また死に向ってまっしぐらだよ!


「どああああ!」


 あ、もうこれダメな奴と思って、体を襲う衝撃に備えて目を閉じる。が、俺の体が感じたのは固い地面ではなく、誰かに受け止められる感覚だった。恐る恐る目を開くと、目に入って来たのは銀色の鎧を身に纏った人の顔。浅黒い肌の男のようで、その額には二本の角が生えていた


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― 新着の感想 ―
[良い点] 主人公がどうして森に迷い込むことになり、どうして帰ることができないかの経緯が具体的に書かれており、主人公の行動や心理に説得力がもたらされていて良いと思います! ・人間の身体や視線を基準に…
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