友の妹
そろそろ前書きに書くことが本当になくなってきた。俺結構ツイッター頻繁に使うほうだけど、ここまで連続だと書くことなくなるな。夢の話でもするか。
あれからエリカが昼休みの集いに参加するようになった。それに対し優子は嬉しそうにしているし、雫は俺との距離がより近くなった。
「おい、お前少しベタベタし過ぎだぞ」
「友の隣は俺のポジションだからな。これも相棒の特権だ!」
「なっ、あなたは男の子でしょう。隣は私のものです!」
左に雫、右にエリカと両手に花の状態だが嬉しくもなんともない。むしろ最近は暑くなってきたところだ。
「お前ら近い!」
俺は肩を寄せてくる二人を躱し立ち上がった。体重を預けていた二人は勢いのままお互いに頭をぶつける。
「痛え……」
「少しは優子を見習え。昼休みくらい大人しくしてろ」
「友に大人しくとか言われるのは癪だな」
「何?」
「落ち着きとは程遠い場所にいるのがお前だろ」
まあ、昼休みは校内を散策しているし、どこにいるのかも決まっていない。基本的にぶらぶらとしているが。
「神出鬼没なんだよ。探しても見つからないくせにひょこっと顔出したりな。神隠しにでも遭ってるんじゃないかって思うくらいだよ」
「神隠し!」
「うぉ!? どうした里美、急に声上げて」
雫の隣でまだ昼飯を食べていた里美が突然大声を出した。里美はご飯を食べる速さはこの中で一番だ。だが既に全員食べ終えている。こいつの弁当は単純にでかいのだ。重箱二つくらいは食べてるんじゃないか? それに弁当箱の横にはコンビニで買ってきたであろうパンが五つほど見える。
「神隠し。この前聞いたよ。東の山の上にある廃墟で行方不明になった子がいるんだって」
「東の山……山羊山か」
俺たち崎萱中学から東に数キロ。そこには山羊山と呼ばれる地域があり、そしてそこは山全体が心霊スポットと呼ばれている。
中でも一番やばいと言われているのが、山の持ち主が住んでいたと言われている館だ。廃墟となって十数年が経っているが、朽ちた様子は全くなく、そこだけ時間が止まっているような姿を保っている。
悪魔が住んでいるとか、吸血鬼が住んでいるとか噂は絶えない。だが、
「そこなら去年、俺と霊子で探索に行ったが何もなかったぞ」
「そうなの?」
「ああ。霊子がここには何もないって言ってた」
そう。何もなかったのだ。そもそも館などなく、デマだったのだ。皆怖がって確認に行かないから真実が分からず、ありもしない噂だけが一人歩きしている。
霊子が不自然だと言っていたのはそれだけじゃない。まるで聖域のように浮遊霊すら姿を見せていないという。
普通であればどんな場所にも霊的な魂の残滓が存在するらしい。だがあそこには、幽霊すらも神隠しにあったかのようにいなくなっている。そういう意味では神隠しというのも間違っていないのかもしれない。
「今度みんなで肝試しに行こうよ。これから夏だし!」
「まあ、暇つぶしにはなるか。何もないとも限らないしな」
里美が夏休みの計画を楽しそうに話し始めた頃、下の階から誰かが駆け上がってくる音が聞こえた。
「薙宮殿、大変です!」
「どうした霊子、そんなに慌てて」
「悪霊が、呪いをかける現場に遭遇しました!」
「何!?」
俺は慌てて立ち上がりすぐに走り出した。霊子に現場まで案内してもらうと、そこは一年生のフロアだった。
「一年生に犠牲者が?」
「はい。たしかにこの目で見ました。悪霊は女子生徒に呪いをかけ、そしてこっちを見て笑ったんです」
「除霊は?」
「間に合いませんでした。相対した時には既に呪いをかけた後。私ではあの強力な呪いを浄化できません」
「それで、その子はどこに?」
「少々お待ちを」
霊子はそう言って一年生の教室を順に覗いていった。中から「なんだこいつ」という視線で見られるが霊子は全く気にしていない。クラスは全部で三つ。霊子は一組の教室から覗いていきそして、
「いました!」
三つ目の教室、三組で止まった。
「どれだ?」
「あの窓際の、前から五番目の女の子です」
「ん?」
霊子の指差す先には一年生の学年カラーである赤のネクタイを巻いた女子。綺麗なセーラー服はまだまだ着慣れていなく、服に着られているような初々しさが残っている。
「奏、ちょっと来てくれ」
「ぅげ……」
奏は俺の姿を見るや苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。学校では赤の他人で通したい我が妹としては、兄が教室にやってくるのは嫌なのだろう。だが今は四の五の言ってられない。
「な、なんですか?」
「お前に話がある。ちょっと来い」
「ちょ、ちょっと!」
俺は奏の手を引いて踊り場までやってくる。
「霊子、こいつか?」
「はい」
「まさかな」
「この黒いオーラ。まさしく呪われています!」
霊子が見たという少女は俺の妹、奏だった。
「何、この人。それに呪われてるってどういうこと?」
奏は奇妙なものでも見るような視線を向けてくる。
「あなたはとても強力な悪霊に呪われています」
「この人誰?」
「俺の知り合いの幽霊子。霊能力者だ」
「霊能力者?」
奏は俺の発言を聞いて馬鹿にしたような笑い顔を浮かべる。別に馬鹿にしているわけではないが、おそらく内心で「またお兄の中二病だよ」と呆れているはずだ。
「またお兄の中二病? それで、中二病仲間を紹介しに来たってわけ?」
ああ、今回は口に出すレベルまで呆れられているか。
「薙宮殿の妹君。これからは日常のどんなときもこれを肌身離さず持っていてください」
「は?」
霊子は俺に渡した物と同じ護符を奏にも与えた。
「悪いな、奏の分まで」
「いえ。あの悪霊を退治できるのはおそらくこの街で私だけ。婆様の名にかけて、私が守らねばいけません」
「そうか」
俺にできることと言えば想像から仮説を立てて可能な限り検証することくらいだ。だが、今回は少し都合がいいかもしれない。俺の仮説が正しければ、
「奏、体に異変はあるか?」
「いや、ないけど」
「そうか。何か変なことやいつもと違うことがあったらすぐ俺に言え。これはもはやお前だけの問題じゃない」
「言ってる意味が分からないんだけど……」
奏が言いかけたところでチャイムが鳴った。
「おっと、俺たちはこれで失礼する。お前も授業に遅れるなよ」
「では、失礼いたします」
俺と霊子は走って教室に戻っていく。次の授業は体育教師の伊東だ。あいつの信条は五分前行動。昼休み終了五分前のチャイムが鳴った以上俺の遅刻は免れない。だからこそ急ぐ必要がある。
「霊子、俺の仮説が正しければこの問題は解決する。お前は悪霊を追ってくれるか?」
「もちろんです。既に悪霊の住処と思われる場所に当たりはつけています」
「流石だな」
俺は霊子と教室の前で別れた。中では既に体育教師の伊東が挨拶を済ませたところだった。
「遅れてすみません」
「どうした薙宮」
「保健室に行ってました」
「たしかに顔が赤いな。大丈夫か?」
「大丈夫です」
走った甲斐があったな。
俺は伊東の目を何とか誤魔化すことに成功し自分の席で一息つく。
「何してたんだ?」
「悪霊を追いかけていた」
「悪霊?」
雫は俺が何を言いたいのか分からないと言った表情で前を向いた。あまり無駄話をしていると伊東に目をつけられるため真面目に振る舞う必要がある。
それから俺はノートを開き今後の予定、そして計画について考えた。
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