エリカ・エンド「後編」
あー、やっとエリカ終わったよ。まだ半分くらい? もう誰か作業変わってくれないかな。コピペしてサブタイつける作業。
「私を殺さないのか?」
「俺は利用できるものはなんでも使う。たとえそれが敵だとしても」
「私はお前を殺そうとしたんだぞ!」
「殺してなどいないし、お前に俺は殺せない。大事なのは結果ではないのか?」
「お前は、私に、私たちの計画についてどこまで知っている?」
まったく知らないです。できれば話してほしいが、どうやって聞き出すか。こちらが知らないというのは悟られないようにした方がいいだろう。
おそらく想像できるシナリオとしては、強力な敵に情報を握られ、その排除に動いたが返り討ち。そして決死の覚悟も虚しく敗北。
「それはどうだろうな。敵に手の内を明かすほど俺は愚かではない。お前が俺の仲間になるというのであれば、教えてやらんこともないが?」
「……私は敗北した。生きている資格などない。だからといって自死を選ぶほど高潔な思考も持っていない」
エリカは自分語りを始めた。概ね俺の予定通り。後はエリカが自分の設定について事細かに説明してくれる
「――私はそうしてこの星に来た」
「ふむ。そうだな」
エリカは幾星霜にも及ぶような長い話をしてくれた。その出自から現在に至るまで。そして自分の所属する星について。とても一度で覚えきれる内容ではなかった。だが、俺たち中二病だけに限らず、好きなものの知識というのは無限に覚えられるのだ。だからエリカは、その設定本当のことのようにスラスラと言うことができるのだ。それはもういっそ、本当の自分と言っていいのではないかと感じるほどに。
「許してくれるのか?」
「言ったはずだ。俺は利用できるものは全て利用する」
長くなると言って雫の席に腰を下ろしたエリカは静かに涙を流す。
「私は星に帰ることはできない。任務を失敗した人間に居場所はない」
「ならば俺と共に歩もう。この星はまだまだ綺麗とは言い難い。俺たちでこの世界を変えるのだ」
「薙宮友……」
「エリカ、俺と友達にならないか?」
俺はそっと手を差し出した。エリカは俺の右手を見て逡巡する。困ったような、だが少し嬉しそうな顔だ。
「こんな私でよければ、いくらでも頼ってくれ。これからは友人として、お前の隣に立とう!」
「ああ。俺とお前の目指すところは同じだ」
エリカは俺の手をがっしりと握り返してきた。エリカの中で俺は、地球規模での事件を扱う超エリート工作員ということになっている。
「最近は雫や里美を見張って調査していたんだ。そして友のことも実は監視していた」
「そ、そうか」
「ああ。校舎裏に行ったことやトイレに立ったのも全てだ!」
「そうか」
え、GPSとか付けられてんの?
「それはどこに?」
「ああ。今取ってやる」
エリカはそう言って俺の頭を両手で押さえつけた。
「なんのつもりだ?」
「なぜこの追跡装置が外されていないか考えたが、そもそも地球にはない技術だった。気づけたとしても外せない」
エリカはは俺の額に自分の額を押し当てる。エリカの長い睫毛は凛とした力のある目がすぐ近くにある。
「これは生体認証で取り外しできる特殊な追跡装置だ。こっちの言葉で言うとGPS」
「それは分かったが、いや、やめておく」
これを言ってはエリカの設定を揺るがすことになってしまう。それに、これが常識なのだとしたらエリカに他意はない。下心もなければ水心もないだろう。
「そうだな。俺以外にはやらない方がいいだろう。もちろん人前でもな」
「分かった」
エリカは納得した様子で頷いた。
「誰か来る」
突然エリカが俺から距離を取った。それと同時に教室に誰かが入ってきた足音がした。
「あれ、エリカと友じゃん。何してんの?」
「里美か」
「里美でーす。私はお邪魔かい?」
「いや」
「それで、何してたのー?」
「家が近所なので、今度一緒に遊ぼうかと思いまして」
エリカは完璧ヒロイン型の口調で里美に返した。里美に対してはこっちなんだな。まあ里美は中二病じゃないからだろうか。こいつがわざわざ言いふらすようなことはしないと思うが。
「なにそれ! 私も混ぜて!」
「いいよ」
「あ、そうだ。連絡先交換しよ!」
里美はそう言って当たり前のようにスマホを取り出す。
「おい、不要物」
「堅いこと言うなよ。それに友も持ってきてるでしょ」
「まあな」
「エリカは持ってるか?」
「これ、ですよね」
エリカは制服のポケットからピンクゴールドのスマホを取り出した。
「最新型じゃん!」
「ああ、この前発売されたってやつか」
「そうなの。この色がどうしても欲しくて」
俺たちはそれぞれの連絡先を交換した。里美とは既に交換済みだが。里美は嬉しそうにスマホを胸に抱く。
「よし、じゃあみんなで一緒に帰ろう!」
「ああ。そういえばお前は何しに来たんだ?」
今更ながらに思い出した。
「あ、宿題取りに来たんだった!」
里美は自分の机からくしゃくしゃになったプリントを取り出した。
「うーん、友に見せてもらうからいいや!」
「おい。何当たり前のように人を頼ろうとしてんだ」
「ダメなの?」
「ダメに決まってんだろ」
「ケチー。じゃあエリカに見せてもらうもん。ね?」
「ええ。私でよければ」
「やっさしい!」
エリカは表の自分を全開に出している。里美も何も疑っていない。これほどまでに瞬時に切り替えができて、なおかつボロも出さないとは。
「よかったな」
俺たちはそれぞれ荷物を持って教室を出る。整頓された机が並んでいるが里美の椅子だけは乱雑に飛び出ている。
「それでさ、思ったんだけど、やっぱりおかしいんだよね」
「何がだ?」
里美は腕を組んでそう言った。
「家が近所なら遊びの話さ、帰りながらすればいいじゃん。なのにわざわざ教室に残ってする?」
「たしかに」
里美に言われて俺も気づいてしまった。エリカの言い訳に矛盾というか違和感を覚える。さっきは対して気にならなかったが、指摘されると気になってしまう。
「エリカ、やっぱり怪しい。隠し事してるでしょ?」
「そ、そんなことは……」
逃げ場のない廊下でエリカは追い詰められる。取調室の刑事のような視線で里美はエリカを捉える。
普段はアホなくせに変なところで勘が鋭い。里美の場合は野生の勘というやつだろう。本能で行動してるような人間だしな。
「エリカ、友のこと好きなんでしょ!」
「そ、それはないです!」
里美の突然の追求にエリカは即否定した。
下心も水心もないけど拒絶されると普通に辛い。いや気にしてない? 別に。ただそうも即答されるとさ、少し傷つくなーってだけで。
「んん? 顔が赤いぞ? さては図星だな!」
なおも尋問を続ける里美と、助けを求めるような視線のエリカを置いて俺は先を行く。
「友はどうなんだよー」
「俺は関係ない。お前も少しはエリカを見習ったらどうだ?」
「私はこの自由人なところがいいんだよー」
自覚はあったのか。自由人であると自覚しているのならもう少し周りに気を遣った方がいいと思うがな。気を遣えないあたりが里美らしいということか。
「私はそれも良いと思う」
「は?」
エリカは俺の数歩後ろで呟いた。これがアニメや漫画なら聞き逃しているところだろう。だが、現実でそこまで鈍感なやつはいない。それはもはや難聴だ。耳鼻科をお勧めするよ。
「俺はそう言う話に興味はない。フィクションの中だけで十分だ」
「友は冷めてるなー」
里美はそう言いながらエリカと腕を組む。
「こんなに可愛い子の何がダメなのさ」
「そもそも恋愛に興味がない。誰とかは関係ない」
「ふぅん。そうなんだ」
里美はそれ以上追求してくるようなことはせず、結局その後はそのままの流れで解散となった。
帰り道の途中、里美と別れ二人きりになった俺たち。エリカは里美の勘の鋭さを褒めていた。俺といる時はエージェントモードというのは変わらないらしい。
まあ俺の日常にエリカが加わるというのであればそれはそれで問題はない。もしかしたらエリカにも異能が発言するかもしれないしな。エリカは異能についてどのように考えるだろうか。今度聞いてみるのもいいかもしれない。
そういえば俺が勝手に考えた設定と丸かぶりのキャラクター設定をしていたな。そう考えると似たような思考をしているのかもしれない。
「エリカ。異能についてお前はどう考える?」
「異能、ですか?」
「ああ。テレパシーや念力と言った人間ではまだ使えない、未知の能力。フィクションの世界では度々見るがそれは人間の想像でえあって科学的根拠を持って解明されたわけじゃない。そういった類のものをお前はどう考える?」
「そうですね……」
エリカは至って真面目な表情で頭を働かせる。こいつにとっての異能とは何なのか。
「科学では証明が出来ていない、しかしそこに存在する力。科学というのはあくまでも根拠づけでしかない、ですかね」
「なるほどな」
概ね俺と同じ考えだ。科学というのは後付けであり宗教である。実際に起こっていることに対して後から理由を付けているという考えだ。
雷が起こったという事実を、神の怒りと捉えるのと科学的に証明するのは近いものを感じる。
人は説明できないものに理由を付けて納得したがる生き物だからな。
「じゃあだ。もしテレパシーや異能が突然発現したとして、お前はどうする?」
「実験して解明したいです。原因が分かれば今後利用できますし、もし本当に異能というものがあるのなら、私は欲しいです」
「そうだよな」
俺は最近の出来事について話そうか迷っていた。異能の解明に関してエリカであれば偏見を持たず真面目に協力してくれるだろう。だが、異能について説明するには優子と雫にも協力してもらう必要があるし、そうすれば相互の秘密をバラしてしまうことになる。
「俺は今この街に起こっている事件を追っている。人類に異能が出現しているということだ。その原因の調査をしている。協力してくれるか?」
「もちろんです!」
エリカは張り切った様子で頷いた。俺は優子や雫のことは伏せて話エリカの協力を取り付けた。
二人は異能の存在を公にはしたくないからな。たとえエリカのように信頼できる人間であっても、易々と話すことはできない。
「そ、それで、さっきの話のことなんだが……」
「それに関して俺がお前の気持ちに応えることはできない」
「ああ。それは分かっている。だけど、友達として、隣に立つことは許してもらえるか?」
「それはお前次第だ。俺は気にしない。去る者も来る者も俺にとっては等しく人である」
「ありがとう。いつか振り向かせてみせると宣言しておこう」
「俺は手強いぞ」
俺の家についたことで俺たちは別れる。エリカは俺が家に入るまで手を振っていた。
「お兄! やっぱりあの人と何かあるでしょ!」
「奏」
「だってずっと手振ってたよ!」
見てたのかよ。お前は暇なのか。いや、そういえばこいつも暇人だったか。部活入ってないし。
「何にもない。俺が恋愛に興味ないのは知ってるだろ」
「そうだよね。あの人可哀想に。なんでお兄のことなんか好きになったんだか」
「それは俺がカッコいいからだろ」
「やっぱり? お兄性格は残念だけど顔はイケメンだからなぁ。無駄に」
「無駄は余計だ」
俺は制服をハンガーにかけーー
「ん?」
そこで護符が一枚ダメになっていることに気がついた。
「命の危険……そんなのあったか?」
俺は放課後からの記憶を遡ってみるが、何も思いつかず、新しい護符を制服に忍ばせそのまま忘れてしまった。
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