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異能探偵『薙宮』  作者: 山羊山音子
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転校生

転校生は美少女です。

 宇宙の可能性は無限大。何光年という遠い世界には人間のような存在がいるだろう。いや。人の数よりも多いこの星々に、人間のような知的生命体がいないはずがない。

「銀河を制するための宇宙軍をここに設立する!」

「どうした急に」

 放課後の教室に居残るのはいつものこと。俺を含めた、里美、雫、優子の四人。今日は部活が休みのため久しぶりに里美と雫がいる。

「友がまた馬鹿みたいなこと言ってる!」

「馬鹿はお前だ。今UFOというのは世界的に有名になっている。アメリカが未確認飛行体の存在を認めたのだぞ? 先進国では宇宙軍の設立が着実に進んでいる。日本もいつまでもアメリカに守られている場合ではないのだ!」

 実際、火星移住計画も現実味を帯びた話になりつつある。

「俺たちが本気を出せば宇宙にも手が届くはずだ」

 そう。この異能集団にできないことはない。これから異能者が増えてくれば夢の秘密結社の設立も叶うというわけだ。まだ雫の能力を知っているのは俺だけで、優子の能力を知っているのは俺と里美だが、いずれ話す時が来るだろう。

「霊子に悪霊について調べてもらっている間、俺は俺でやることがある。お前たちもこれからの放課後は自由にしてもらって構わない」

「友に言われなくても自由にしてるよ!」

 里美の場合は制御が効かないから手元に置いておきたくないというのが正直なところだ。

「とにかくーー」

「お、お前らちょうどいいところに」

 と、廊下の方から声がかけられた。

「私トイレ!」

「俺ちょっと先輩の所行ってくる!」

 里美と雫は扉の方を見て逃げるように去っていった。俺は声のした方の扉に背を向けているためそこに誰がいるかは見えていない。だが誰なのかは把握している。

「今忙しいので失礼します」

「ちょっと待て薙宮」

「何ですか、先生」

 俺は視線を合わせないように帰ろうとしたが呼び止められてしまった。目線を向ければ教室前方の扉に高橋幸治が立っていた。

 二年の学年主任の先生で担当は音楽。生徒指導も兼任している堅物だ。この学校に赴任してから七年目というベテラン教師で、年齢は五十六。子供が一人おり既に成人済み。年齢とは反対にフランクな性格とおじさま特有の色香で生徒たちからは人気がある。昭和の頑固親父のような思考は持ち合わせておらず、生徒一人一人をよく見て柔軟に対応することもできる頭を持っている。はっきり言ってできる男だ。少し冗談が通じない時があるが、それはご愛嬌。

「来週から転校生が来るんだが、突然校舎を見て回りたいと言っていてな。だが手が空いている人間がいないんだ。先生たちもいないし、学校に残っている生徒はほぼいない」

「それで、たまたま見つけた俺たちに声をかけたと」

「そうだ。俺もこの後用事があって手が離せないんだ。頼む」

 幸治は真剣な表情で俺を見ている。幸治は決して目を離さない。結局俺が折れるしかないのだ。

「あの、私も一緒にいっていいですか?」

「もちろんだ。このクラスタに転校してくるから是非仲良くしてくれ!」

 幸治は優子の提案を快く承諾した。

 優子がここまで積極的になったことや人見知りをしなくなったことを、誰よりも喜んでいるのは実は幸治だったりする。

 本人の口からは聞かないがそれが伝わってくるからこの先生は憎めない。

「ハーフの女の子だが、日本語は通じるから安心してくれ。一階の応接室で待ってもらってるから。俺は音楽室にいるから何かあったら聞きに来い」

「了解しましたー」

 幸治はそう言って東の階段へ向かっていく。俺たちがいるのは南校舎二階のため、西階段から一階に降り北校舎の職員玄関横の応接室に行く。

 この学校はカタカナの「ロ」を横長にしたような形をしていて、上空から見ると音楽室だけが少しはみ出したような作りになっている。

 応接室の横に校長室、職員室と続き放送室、保健室、トイレ、東階段。そしてその奥に音楽室がある。

 俺と優子は応接室の前で一度立ち止まった。

「行くぞ」

 少し緊張している優子に一声かけてからドアをノックする。

「はい」

 すると、中から鈴のような……という比喩はどうも想像しにくいと俺は思うのだが、それ以外に形容する言葉が見つからないため、綺麗な声とだけ言っておこう。――が返ってきた。

「失礼します」

 扉を開け中に入ると視線の正面。二人がけのソファの上座に座る少女が俺たちをじっと見つめていた。

「初めまして。俺は薙宮友だ」

「私はエリカ・ルイザ・ウォルターと言います。気軽にエリカと呼んでください」

 エリカ・ルイザ・ウォルター。たしかに外国人のような名前をしている。それに、全体的に白い。

 銀髪というのは初めて見たが、これは地毛なのだろうか。綺麗なプラチナブロンドの長髪はエリカが動くたびに滑らかに揺れ動く。目の色も髪に近く、そして日焼けを知らないかのような肌。病的で弱々しくすら感じる血色に少し心配になる。

「藤山優子です。よろしくお願いします」

 エリカに見惚れていた優子も慌てて挨拶をした。女子でも見惚れるほどの美少女ハーフ転校生。アニメや漫画だけの世界だと思っていたが、実際に目にすると物語の人間たちの異常性が分かる。

 これは人間じゃない。違う領域に暮らす別種の生き物だ。神の使いと言われれば簡単に信じてしまえるほどの力がある。

「校舎案内を任されたので、何か聞きたいことがあったら俺か藤山に聞いてくれ」

「分かりました。よろしくお願いします」

 恭しく頭を下げるエリカの仕草はとても洗練されている。本当に何者なのだろうか。

「え、エリカさんとっても可愛いですね」

「エリカでいいですよ。来週からはクラスメイトなんですから」

 俺は二人に案内するように前を歩き、エリカの相手は優子に丸投げをした。今の優子であれば大抵のことには対処できるだろうし、女同士の方がエリカも楽だろう。それに俺も。

 時折優子が俺にも話を振ってくるが、エリカが俺に直接何か聞いてくることはない。

 学校を半周する頃には、二人はすっかり打ち解けていた。

「友君はエリカに聞きたいことはないの?」

「そうだな。じゃあ一つだけ」

 一階から見て回り南校舎三階にある図書室前の廊下で俺は振り返った。その視界にしっかりとエリカの姿を捉える。エリカをこうしてしっかり見るのは今日で二度目だ。案内中は一度も視線を向けていない。

「俺は他とは違うということだけ、覚えておいてほしい」

「……?」

 エリカは俺が何を言っているか分からないという表情を浮かべている。

「友君は少し頭のネジが外れてるから、普通の人と同じように接すると疲れるよってこと」

 優子からすかさずフォローが入った。言いたいことは間違っていないが、もう少しオブラートに包んでくれてもいいんじゃないだろうか。

 まあたしかに、俺のことを普通の人間と同じように接して離れていった人間は多くいる。なら初めから関わらない方がお互いのためでもある。もしエリカが能力者だった場合はその限りではないが。

「エリカ、お互い隠し事をしなくてもいい関係を築けたらいいな」

 この言葉に他意はない。

 だが、この時の俺はエリカが険しい表情で俺を見ていることに気づかなかった。俺は既にエリカから視線を外し校舎案内の仕事に戻ってしまっていたから。


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