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《 Infinity Pioneer Online 》~一般人の兄が妹にオタクに染められる話~  作者: いちにょん
第一章 鎖縛の姫に月下のメリークリスマス
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第七話 筋肉ときどきドMのち有田みかん


「じゃあ次は…」

「私達ですね」


 もうお腹いっぱいなんだが…と思っていると、次の自己紹介が始まる。

 後ろにいた仕事の出来そうな細身の男性と、ゴリラだ。

 正確にはゴリラのような大男なのだが、筋肉の量が人の領域を越えている。俺が愛用しているトレーニングDVDのトレーナーだってあんなに筋肉肥大化してないぞ。


「遥か昔、孔子は言いました」


 仕事の出来そうな細身の男性が徐にスーツに似た服を脱ぎ、上半身裸になる。

 何故?と思ったのもつかの間。俺は男性の上半身に釘付けになっていた。


 なんだあの筋肉…洗練された槍みたいな鍛え上げられたものだ…あれは一種の芸術品と呼んでもいいかもしれない。


「力こそ筋肉」


 そして筋肉をパンプアップさせてサイドチェストの構えを取る。


「そして、かつて諸葛孔明は言った」


 隣にいたゴリラのような男も服と呼べるか分からない大きな布を取っ払う。

 これも凄い筋肉だ。腕を振るうだけで木が折れそう…。


「筋肉こそパワー」


 そして細身の男性と同じく上腕三頭筋強調するサイドトライセップスの構えを取る。


 並ぶと凄まじい…。目の前が筋肉の壁で埋め尽くされている。


 それと、孔子も諸葛孔明も絶対そんなこと言ってない。


「「つまり、筋肉こそ筋肉…!!」」


 最も発達した筋肉の意を持つポージング、モストマスキュラーを取った二人は、ドヤ顔でこちらを見る。


「オーキ=ペンデレエークデス、ヨロシクオネガイシマス」

「オーキ兄、思考を停止させないで」

「オーキ、俺はジェノサイド『野性的な筋肉(ワイルド・マッスル)』担当のバルクだ」

「そして私がジェノサイド『知性的な筋肉インテリジェンス・マッスル』担当のディフィニションです。ディフィと呼んでください」


 あ、名前までボディビル用語なんだ。

 それよりもインテリジェンスな筋肉ってなんなんだろう。


 …。


 駄目だ、考えれば考えるほど分からない。


「適当に褒めておけば満足するから問題ないよ」

「仕上がってるでござるよ!」

「キレてます!キレてます!」

「その腹筋、おろし金でござる!大根おろしが捗るでごさる!」

「筋肉圧迫面接!」

「大胸筋サンドイッチでござる!」

「筋肉福袋ですよー!」

「筋肉スクランブル交差点でござるー!」

「僧帽筋がブレイクダンスしながらG線上のマリアを奏でてます!」


 おおっ、全蔵とマーサさんの掛け声に合わせて次々ポージングを。


 スポーツをやっている男で筋肉が気にならない男はいない。

 うーん、このゲームにもプロテイン的なアイテムはあるのだろうか。


 これでも日本一の高校生剛腕投手と世間から言われていただけあって、体つきには自信がある。筋トレもかなり取り組んでいた。

 体を壊す少し前に下半身強化に取り組んでいたので、あの大腿四頭筋は凄く羨ましい…。


「バルクは何も考えずに取り敢えず殴る脳筋で戦闘時に邪魔な事を除けば無害。ディフィは自分の筋肉全部に名前を付けるイカレ野郎(変態)だから深く関わないことをオススメするわ」

「ミサキさんは俺を一体どこへ入れようとしてるんですか…」

「あら、中々面白いわよ?外野から見ている分には」

「俺、内部に入れられるんですよね!?」

「オーキ兄、大丈夫大丈夫。戦闘になれば皆ジェノサイドだから」

「ジェノサイドってワードからどう頑張っても大丈夫を連想できない」


 これから俺もこんな風になってしまうのだろうか…。

 強い意志を持って頑張りたい。


「じゃあ最後なんだけど……」

「あぁ、あの美人な人」

「オーキ兄も分かってると思うけど、今紹介した順番はやばい人達の逆順なの」

「えっ」


 逆順…?やばい順じゃなくて?

 あの美人さんがあの忍者やオタク、貴婦人、筋肉ツートップよりもヤバい人なの?


「クレア…」


 存在を忘れていた台の上に乗った美人さんは名前だけ告げると、それ以上は何も言わず、じっとこっちを見つめて立っている。


 ミサキさんや、マーサさんとはまた違う整った顔立ち。良くいえばクールな感じだろうか?男性的な感じではなく、女性的な感じの、ドラマで悪女をやっていそうな…。

 黒色にも見えなく無い藍色の髪は腰の辺りまで伸び、同色の瞳は釣り上がり、クールな印象を引き立てる。

 腰に刺してあるのは細剣?バットよりも細い刀身を持った剣だ。


「今はドSモードですね」

「くぽぁっ!?我輩、クレア氏のゴミを見る目で見られるとこ、興奮してしまうで候…はぁ…はぁ!」

「拙者たちの業界ではご褒美でござる!」

「忍業界オワコン乙」

「筋肉とは世界!ジ・マッスル!!」

「ザよ」

「あぁ!ミルフレーユ!我が愛しの知性的(インテリジェンス)小円筋(しょうえんきん)!今日も美しいよ!!」


 混沌としてきた。


 ちなみに上からマーサさん、ヲタキング、全蔵、オーカ、バルク、ミサキさん、ディフィの順番だ。


 個性のミックスジュースみたいな人達だなぁ…。


 やっぱりクレアさんが一番まともなのでは?

 そう思ってクレアさんを見つめていると…


「あんまり見ないで…」

「あ、ごめんなさい」

「興奮しちゃう……」


 …。


「今日の性癖はドSときどきドMね」

「俺の知ってる性癖は天気予報風に紹介できないです」

「彼女の二つ名は【やべー性癖の(セクシャル)詰め合わせ(モンスター)】略してセクモンよ」

「絶対にゲットしたくない」

「クレア殿は493種の性癖を持っているでござる。某ゲットだぜゲームのダイヤ〇ンド・パ〇ルに登場するモンスターの数に相当するでござるな。にんにん」

「そんな図鑑コンプリートしても嬉しくない」

「カカッ、安心するでござる。ほとんどがドSなので普段は気にならないでござるよ」

「普段以外は?」

「……拙者、急用を思い出したのでドロンさせて頂くでござる」


 懐から煙玉らしきものを取り出した全蔵の腕を逃げないように掴む。

 この状況で全蔵がいなくなるのは駄目だ!よく分かった!全蔵、全蔵はまともな方なんだって!だから助けてくれ!!


「そんな捨て犬みたいな目をしなくてもボックスから逃がすことはしないでごさるよ…」

「イケメンヘタレ攻めの忍者の諦め受け…ぐふふっ…失礼…ぐふっ…しまし…でへへ…した」

「マーサ氏、隠せてないですぞ?」

「筋肉ー!マッスル!マッスル!」

「ああ、カトリーヌ…美しいよ…今すぐホテルに連れ込んでスクワットしたいくらいだ」

「……放置プレイ……あっ…」


 なんと言うか、この人達の発言をいちいち気にしたら駄目だということが分かった。

 妹の交友関係について後日父さんに報告しておこう。付き合いを考えて欲しい。


「ござる、この空気何とかして。このままだとオーキ兄以前に私がこのゲーム引退することになる」

「うぇぇ!?無茶振りが過ぎるでござるよ!」

「じゃあクレアさんを題材にラップをお願いします」

「そんなにじっと見つめられるとまた興奮してくる……」


 凄い無茶振りだな…。そしてクレアさんはブレないな。


 それにしてもラップか…チームメイトに好きな奴はいたけど、俺自身あんまり聞いた事無いからなぁ。

 試合前に聞いてテンション上げてるとは言っていたが、俺はいつも『天〇観測』と『サ〇スポー』と決めている。


「……視姦(しかん)敏感(びんかん)、イヤ~ン、ばか~んっ!」


 …ちょっとニヤっとしてしまった。

 俺も健全な男子高校生、これくらいの程度の低い下ネタは嫌いじゃない。だが、ここは兄としての威厳を守るためにポーカーフェイスを貫く。

 セルフコントロール。セルフコントロール。

 ぴくぴくと動く口角を沈めるんだ。

 二塁手の豊本が彼女の名前を痛々しく『春香LOVE』と坊主頭に剃りこんだ二日後に別れて、挨拶で帽子を取るたびに笑いそうになった時も必死に耐えたじゃないか。耐えろ俺の表情筋。


「っぅ~…!!…ちょっとニヤっとしたからデスペナさせる」

「オーカ殿!ご無体な!ご無体な!!」

「下ネタ嫌いのミサキさんも、ここでラップ一つどうぞ」


 マーサさんの無茶振りはまだ続くのか。

 ミサキさんも頬がぴくぴくしてるが、あれは笑ってるのではなく、怒るのを我慢してる時のあれだな。


「クソ忍者は鈍感、話聞かん、頭の中はすっからかん、いつも私はカンカン、晩酌に熱燗(あつかん)、私は違うぞオカン、これから続く説教時間、体感してるか圧巻の悪寒」


 これ程までに抑揚の無いラップを俺は人生で聞いた事があっただろうか。


 下ネタは人を選ぶと言うが、ミサキさんに下ネタは控えよう。

 やっぱり男同士でときどき言い合うくらいが丁度いいんだな。


「………」


 ん?ミサキさんの口が急に止まった。


「…えっと……えと……あ、…あ、有田みかん……」


 あっ……。

 勢いに任せてたけど、途中で思いつかなくなったのか。


 ミサキさんの頬がみるみるうちに赤く染まっていく。

 姉御って感じだったけど、可愛らしい一面もあるようだ。絶対に口に出したりしないけど。


「よ、よーし、私狩りに行ってこよっと!!」

「わ、わわわ我輩もおとももももももしますすすですぞっっっ!!」

「拙者もいくぅ!絶対いくでござるぅー!!」

「「筋肉神へ捧げる筋舞を踊ってくるので失礼する」」

「私はクレアちゃんとお出掛けしてきます~」

「羞恥プレイ…裏山」

「うぐっ…」

「…………トドメを刺したでござる。ではさらばっ!」


 えぇ……これどうするんだよ……。


 クレアさんのせいでミサキさん、(うずくま)っちゃってるし。


「…………」


 どうしよう。

 こういう時、なんて声掛けるのが正解なのだろうか。


「……有田みかん、俺も好きですよ」

「……くたばれ、バカぁ…!」


 …さぁ、俺もログアウトしよっと。

《後書きのコーナー》


[今話の感想]


オーカ「遂に全員揃ったZE☆」


オーキ「俺、上手くやれるかな…」


オーカ「クラマスも言ってたけど外から見る分には楽しい人ばっかりだから大丈夫だよ」


オーキ「一番内部で中心の人間がそれ言っちゃおしまいだ…」


[オタク化計画・アニメを見よう]


オーカ「そこの暇なオーキ兄!私のオススメアニメ見ないかい!?」


オーキ「アニメかぁ…久しく見てないな」


オーカ「最初は二次アニメの良さをわかって欲しいから作画が綺麗めな…それでいて比較的新しく、一般ピーポーのオーキ兄が見ても楽しめるようにギャグ要素があって……最初からラノベ系ではなく、ラノベよりでありつつ……話の深み、あーでも、最初は1クールでお手軽なのを、けど2クールあるのでゆっくり話を楽しんでもらうのもあり……」


オーキ「未だかつて無い程に悩んでるな」


オーカ「よし決めた!!最初にオーキ兄が見るアニメは……ノラ〇ミですっ!!」


オーキ「おー、おー?」


オーカ「BluRayそっちに送っていくから見ておいてね!感想は次話までによろ!」


※オーキに見て欲しいアニメがあれば感想にてお待ちしております。


[次回予告]


オーカ「大分後書きが長くなってきたね」


オーキ「収集つくのかこれ?」


オーカ「次回、ついに眠れる邪龍が目覚め…オーカを連れ去っていく。次々に命を落とす全蔵を前にオーキ兄は立ち上がる…!」


オーキ「普通に俺のビルドの最終決定しまーす。次回、『ピッチャーびびってる!へいへいへい!!』」


オーカ「ぶっちゃけ説明回というか、消化回だから、うん!読み飛ばしてもいいよ!」

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